超高齢化社会となっている日本。そんな中、今月8日にある調査結果が発表された。

【映像】「離れて暮らす家族や友人との交流頻度」で脳の容積に変化が…?

 厚生労働省が2022年から2023年にかけ、全国4つの地域で65歳以上の全ての住民を対象に実施した調査によると、団塊ジュニア世代が65歳以上になる2040年には高齢者の584万人、6.7人に1人が認知症患者になると推計された。

 今回、認知症の前段階である軽度認知障害の将来推計も初めて発表された。2040年に軽度認知障害の人は613万人(15.5%)にのぼると推計されている。

  調査に携わった九州大学大学院・二宮利治教授は早期発見の大切さを強調する。

 「初期であれば軽度の認知障害の2〜3割程度は様々な生活の介入などによって、正常化することがある。そういった時期だということを考えて頂きたいこともあり、数字を出した」

 5年以内に2割から3割の人が認知症に移行するという軽度認知障害。どのような「兆候」に気を付ければよいのか?

 「基本的に物忘れが多く、会話の中で『分かった』と言っていても実はあまりよく分かっていなかったり、話したり歩くスピードも落ちてくる」(二宮教授)

 社会的な孤立と認知症に関する研究も行っている二宮教授。認知症ではない65歳以上の高齢者8896人のMRI 検査や健診データを集め、「同居していない親族や友人と会話など交流がどの程度あるか?」を質問。「毎日」「週に数回」「月に数回」「ほとんどなし」に分類した。

 すると、交流頻度が低くなるにつれて、脳全体の容積や認知機能に関連する脳容積が低下し、脳卒中や認知症を起こしやすくする白質病変の容積が上昇していた。

 「社会的な交流が少ない方は脳に変化が起きていて、将来的に認知症になりやすい方だろうと思っている。また他人のために尽くしたり、おせっかいを焼いたりする人に比べて、その機会がない方は脳の容積が低いという調査データもある」

 2024年1月、認知症の予防や認知症の人が尊重される社会の実現に向けて、国や自治体の取り組みを定めた「認知症基本法」が施行された。国が目指している認知症患者との共生社会はそう遠くない未来ともいえる。

 こうした中、二宮教授は自身の研究結果から社会全体のサポートや交流が認知症を予防したり、発症を遅らせることに繋がるのではないかと期待を寄せている。

 「高齢者の一人暮らしの方が増えていく本当に難しい時代が来ると思うのでサポート制度は大事だ。1人1人性格も違うので、画一的な対応になってはいけないが、周囲が認知症のことを理解して、例えば『手芸しましょう』『将棋をしましょう』など、家の外に連れだして、地域とつなげていくということは必要だ」

 今回の調査結果によると、2040年には65歳以上の3.3人に1人が認知症もしくは認知症の予備軍であると推計されている。

 この推計についてThe HEADLINE編集長の石田健氏は「3.3人に1人というとインパクトが大きく感じるが、2012年の調査と比べると生活習慣や介入の仕方が変わったためか数値は減っている。さらに、がんなどと同様、治療薬に関する研究は著しいスピードで進んでおり、日本でもアルツハイマーなどの治療薬開発や実用化のニュースもよく耳にするはずだ。そのため、期待ができる創薬にどれだけ投資できるが大事なポイントだろう」と話す。

 さらに、二宮教授が指摘するように、日々の認知症予防には食事や運動なども大切だが、社会的な交流も重要だ。

 高齢者や認知症患者を地域で支援するための取り組みとして「認知症サポーター」がある。これは正しい知識と理解を持ち、認知症の人やその家族をできる範囲で手助けするもので、自治体または企業・職域団体が実施する養成講座(90分)の受講で誰でもなれる。実態としては、地域住民、店舗等の従業員、小・中・高等学校生徒らが受講しており、2024年3月末時点で1534万8496人が認知症サポーターとなっている。うち10代以下が29%、60代以上が34%を占める(NPO法人 地域共生政策自治体連携機構のデータから)。

 石田氏は「認知症サポーターに60代が多いと聞くと『30代から50代の人が増えてくれれば』と感じるかもしれないが、今の60代、70代は若く元気がある。こういう方たちがいかに社会の中で“仕事”として積極的に参加できるかが重要だ。ボランティアやサポートと聞くと“時間のある人が善意で”行なっているという印象を持つかもしれないが、そうではなく、『我々の社会を支えている重要な仕事』という意識を持つべき。そこにどうやって報酬を発生させるかという点にはおそらく今までとは別の見方が必要になってくるだろうが、『大事な仕事をしている』という自尊心に訴えかけることも必要だ」と指摘した。
(『ABEMAヒルズ』より)