免疫異常などで血糖値を調整するインスリンが作れなくなる「1型糖尿病」を発症したのに、障害基礎年金の支給を止められたのは不当として、患者8人が国に処分の取り消しを求めた訴訟の控訴審判決が19日、大阪高裁(本多久美子裁判長)であった。高裁は原告敗訴とした一審・大阪地裁判決を取り消し、8人全員が支給対象に当たると認め、国の処分を取り消した。

 8人は未成年の時に1型糖尿病を発症。成人後に障害基礎年金を申請し、支給対象となる障害等級2級と認定されたが、国は2016年までに8人の等級を3級と見直し、支給を止めた。

 控訴審で原告側は、症状が改善していないのに等級を変えることは許されないと主張。厚生労働省の認定基準も最新の医学的知見を反映しておらず、「ほかの障害と比べて厳しすぎる」などと訴えていた。

 この訴訟をめぐっては、大阪地裁が19年に「重大な不利益処分なのに理由を示していない」と国の処分を取り消し、判決が確定。当初原告は9人で、国は理由を補足したうえで支給停止の処分をしたため、9人は再び提訴した。地裁は病態を個別に検討し、1人の処分は取り消したが、8人の処分は適法だったとして請求を退けていた。

 この日の判決について、国は「詳細は承知していないが、8人全員の支給が認められたと聞いている。関係省庁で判決内容を精査した上で対応していきたい」とコメントした。(山本逸生)