長期逃亡の末に

 この4月、6代目山口組と対立する絆會の幹部が逮捕された。殺人未遂容疑などで指名手配されていた同会の若頭が逃走中であることを知りながらかくまっていたという犯人蔵匿の容疑である。この若頭はもともと殺人未遂容疑がかけられて逃亡していたが、今年2月に逮捕されている。そして逃亡中に別の殺人事件に関与したともみられており、殺人容疑でも逮捕された。組織にとって重要な面子が次々と逮捕される事態は、絆会にとって大きなダメージとなりそうだ。

 そもそもの発端は2020年、長野・宮田村で組織を去った弟分を銃撃して重傷を負わせたというもの。この事件で、殺人未遂容疑などで指名手配されたのが絆會の金澤成樹(本名:金成行)若頭だった。

 そして先月、この若頭をかくまった容疑で逮捕されたのは絆會(織田絆誠会長)組織委員長で、2次団体・2代目絆奥会(本部:宮城県仙台市)の橘宗貴(本名:立花宗貴)会長である。

「銃撃事件後の去年5月上旬から今年2月上旬、橘会長が金澤若頭を仙台市内の集合住宅にかくまった疑いがあります。部屋は橘会長の親族が法人名義で借りていたようです」
と、担当記者。

長期の社会不在は不可避だ

「橘会長は2月の金澤若頭の逮捕後、行方をくらましていましたが、身柄の拘束は時間の問題と言われていました。金澤若頭は織田会長の忠実な“家臣”と言われ、その逃走には絆會の組織的関与があるとされています。捜査当局はその点も捜査で解明し、あわよくば組織の解体に持ち込みたいとの思惑もあるようですが、織田会長の具体的な指示など、これを証明する物証が得られる見通しは立っていないようで、捜査の手をのばすことは難しいようです」(同)

 つまり、今回の犯人蔵匿事件は、橘会長の独断で進められたということで幕引きがされそうな気配だ。

 一方、金澤若頭には逃走中、水戸市内の6代目山口組系の事務所で同組系幹部を銃撃して殺害した容疑でも逮捕状が出ていたが、茨城県警は4月30日付で殺人容疑で逮捕した。起訴されて裁判となれば無期懲役あるいは死刑もあり得るとの指摘があり、いずれにせよ長期の社会不在は不可避だ。

解散するか否か

 ナンバー2である若頭は一家の柱で組織の要の中の要。機能しなければ組織運営は立ち往生を余儀なくされる。金澤若頭の逃走中、絆會の勢いがそがれ続けたことは否定できないだろう。そういう状況下、絆會の解散情報が駆け巡ったこともあった。

「実際そのように織田会長が考えたことがあったようですね。看板を下ろしてカタギになって焼肉屋をやろうというような話を聞きましたね。が、その後に翻意したということでしょう。解散を思いとどまったのは、池田組の池田孝志組長が金銭的な支援は惜しまないと織田会長に伝えたことが理由だと聞きました」

 と、竹垣悟氏(元山口組系義竜会会長で、現在はNPO法人「五仁會」を主宰)。

 絆會の行く末を憂慮した若頭が、抜けようとする仲間を何とか残るように説得しようとした末に起きたのが、最初の殺人未遂事件だという見方も出来る。その長い不在が組織に与える影響は小さくないだろう。

デイリー新潮編集部