大相撲で110年ぶりの新入幕優勝を成し遂げた尊富士(たけるふじ)関(25)=本名・石岡弥輝也(みきや)=の凱旋(がいせん)パレードが1日、ふるさとの青森県五所川原市であり、同市の人口より多い約5万5千人のファンが沿道に詰めかけた。県褒賞を授与され、五所川原市役所で初の市民栄誉賞も受賞。故郷に錦を飾った。(野田佑介、渡部耕平、江湖良二、伊藤恵里奈)

 パレードは津軽三味線の演奏で幕開け。尊富士関が「みなさんの応援で、この小さなまちを盛り上げてほしい」と話すと大きな拍手が沸いた。

 尊富士関は師匠の伊勢ケ浜親方とオープンカーに乗り、市内2カ所を巡った。作家太宰治の生家を保存した「斜陽館」近くの農業、田中正さん(67)は「この金木町にこれほど人が来るとは。最高だ!」と興奮。頭にかぶったサンバイザーに「感動だよ」と書いた色画用紙をつけた青森県藤崎町の会社員、斉藤江美子さん(54)は「メッセージを見てもらえてうれしい」。

 「立佞武多の館」前では、近くでスーパーを営む木村ユキ子さん(72)は尊富士関の顔写真と「祝優勝 尊富士」の文字をあしらったうちわを振りながら「おめでとう」と声を振り絞った。3月の大相撲春場所で、足のけがをおして土俵に上がり賜杯(しはい)を手にした尊富士関の大ファンに。従業員と2人で3週間がかりで10枚を用意し、沿道の人たちに貸し出した。「けがをしても、津軽のじょっぱり(頑固者)根性で最後まで戦い続けた。勇気をもらったし、大したもんだ。五所川原を盛り上げてくれたし、地元の誇りだよ」。初めて生で見た尊富士関は「ダンディーで素敵。感動で言葉が出なかった」と目を潤ませた。

 春場所の優勝インタビューで語った「記録も大事ですけど、みなさんの記憶に一つでも残りたくて」という言葉が、木村さんの印象に強く残った。「まだまだ若い。道のりは険しいかもしれないけど、てっぺん(横綱)目指してがんばってほしい。けがしないように、けっぱれ(がんばれ)!」