防災教育を通じ、東日本大震災の際、多くの子どもたちが津波から避難した「釜石の出来事」を導いたことで知られる片田敏孝・東大大学院特任教授(災害社会工学)が12日、高知県香南市の夜須公民館で講演した。約700人の市民らが詰めかけ、聴き入った。

 片田氏は、高知県黒潮町を全国最大の34・4メートルの津波が襲うと想定している国のデータを示し、「ただおびえ、漠然とした不安ばかり募る状態ではいけない」と指摘。家具固定や避難訓練などできる限りのことをして、「淡々と最善を尽くすことが重要」と呼びかけた。

 香南市など沿岸の町と海との関わりは、過去の大災害を経てもずっと続いてきたとし、「災いは50年や100年に一度。海の恵みをもらい続けるために、そのときだけきちんとした行動をする。防災はそのお作法ともいえる」と話した。

 豊後水道を震源とする4月17日の最大震度6弱の地震について、片田氏は「南海トラフ地震とは関係ないと気象庁は言うが、いつ何時、何が起こるか分からないのが災害の本質」と、専門家の判断や想定も絶対ではないことを強調した。

 東日本大震災のときの岩手県釜石市でも、子どもたちが想定にとらわれず、率先して住民に声をかけ、より安全な高台に避難したことが良い結果を生んだと紹介。「互いに思い合いながら、みんなで町を守るという姿勢が大切だ」と話した。(原篤司)