東京都知事選に立候補した石丸伸二・前安芸高田市長の任期途中での辞職に伴う市長選は30日、告示される。いずれも新顔の4人が立候補に向けて準備を進めている。市議会と激しく対立した石丸市政の評価やまちづくりの施策などが問われる選挙は、7月7日に投開票される。

 元郵便局長の藤本悦志氏(51)は昨年11月にいち早く立候補を表明した。石丸氏との選挙戦を想定し、これまでに市内全地区を回り、ミニ集会を重ねてきた。

 藤本氏は、石丸氏の進めた行財政改革について一定の必要性を認めた上で、「市議会や市民との対話が少ない。ギスギスしたこの状況を何とかして欲しいという声が日増しに強くなっている」と批判している。

 石丸氏は、同市吉田町中心部にある計三つの保育所と幼稚園を統合し、別地区に認定こども園を整備する方針を発表。辞職前に園の基本構想策定費の予算を専決処分した。藤本氏は方針を変更する考えで、新しい園は「同じ地区に置くのが理想的だ」と述べている。

 今年5月に石丸氏が不出馬を表明し、選挙の構図は変わった。「誰が相手でも訴えることは変わらない」と話す。

 前市議の熊高昌三氏(70)は石丸氏の不出馬を受け、6月に立候補を決めた。立候補表明の会見では「石丸さんのめざす方向と私の方向はある意味同じ方向という気がした」と述べ、石丸市政を評価し、SNSでの情報発信など「政治の見える化」を継続するとした。

 石丸氏の施策にほとんどの議員が反対する中でも熊高氏は賛成してきた。石丸氏が削除した「議会だより」の発行費を加える修正予算案にも1人だけ反対。市議会が不承認とした認定こども園に関する専決処分も、他の2人の議員とともに承認に回った。

 道の駅に「無印良品」を出店させる計画は議会が予算を認めず頓挫したが、これも再挑戦する意向だ。

 また、石丸市政の「継続」を唱える一方、「改善」も掲げる。住民自治との連携が薄くなったとして「新しいあり方を再構築したい」と話す。

 川崎市でバスケットボールスクールを運営する赤津誠一郎氏(44)は5月に立候補を表明後、街頭演説を重ねるなど知名度アップを図っている。6月初めに住民票を安芸高田市に移したばかりだ。

 昨年8月にユーチューブで石丸氏の動画を見て「勇気をもらった」という。石丸市政の進めた公共施設の統廃合や事業見直しを評価しつつ、議会との確執は課題だと考えているという。「石丸氏は極端なことをして安芸高田市の知名度を高めた。その流れを踏襲しつつ、議会と対話をし関係を改善したい」

 元島根県浜田市議の森谷公昭氏(68)は28日、安芸高田市内で記者会見し、立候補を表明した。自身が代表を務める政治団体の公認を受けるという。「不正がどこの自治体でも起こることを伝えたい」などと述べ、立候補の目的として、自分の主張を広く伝えることを挙げた。

 市長選と同日程の市議補選(被選挙数2)には新顔2人、元職1人が立候補を予定している。

 6月1日現在の選挙人名簿登録者数は2万2319人。(柳川迅)