イタリア南部・ソンマベズビアーナにある古代ローマ時代の遺跡で、ローマ帝国の初代皇帝アウグストゥス(紀元前63〜後14年)の別荘だった可能性がある建物の一部が見つかった。東大の研究グループ(代表・村松真理子教授)が17日発表した。

 ローマの歴史書に、アウグストゥスはベズビオ山北東の別荘で亡くなり、その後は顕彰のための施設になったとの記述があるが、場所は未特定だった。

 確認されたのは、倉庫などに使われたと考えられる建物の一部。壁にはアンフォラという大型土器が十数個立てかけられたままの状態で出土した。浴場のかまとみられる遺構もあった。壁の一部は倒壊し、内部には屋根瓦の一部も散乱していた。

 遺構の一部を覆っていた軽石の化学組成などを調べた結果、79年にポンペイを埋没させたベズビオ山の噴火による火砕流などで埋もれた可能性が高いことが判明。かまの炭化物などを年代測定したところ、年代が1世紀前半に集中し、その後は使用痕跡が確認できないことなどから、アウグストゥスの死後に施設が使われなくなったと判断した。

 発掘調査を2002年から手がけ、研究グループの初代代表も務めた青柳正規・東大名誉教授(西洋古典考古学)は「開始から20年以上かけて、ようやくここまできた。この地域ではローマ時代の大規模な別荘とみられるものはここ以外にみつかっていない。確実な証拠は今後を待ちたいが、現段階ではアウグストゥスの別荘である可能性はここが一番高い。ベズビオ山北側の被災状況もわかり、79年の噴火の全容を知るうえでも大きな進展だ」と話す。

 研究グループ代表の村松教授は「建物は広がりを見せており、今年度以降も調査を継続していく予定だが、資金が足りない。発掘はこれからが本番なので、ぜひ皆様のご支援をお願いしたい」と訴える。寄付の申し込みは東京大学基金(https://utf.u-tokyo.ac.jp/project/pjt07)へ。(編集委員・宮代栄一)