ロボット開発企業「テムザック」(京都市)が、宮崎県延岡市で始めたロボット農業が2年目に入った。1年目は雑草防除や水管理をロボ化。今年は種まきから収穫までこなせるようにする。最終的には、勤め先の机の上からスマホでロボたちを操作し、自分の畑を管理、誰もが農家――そんな未来図を描く。

 同社は4月、新たに2機種を投入した。まず、自動田おこしロボ「雷鳥2号」。全長1.63メートル、幅1.23メートル、高さ1.17メートルで、重さは本体が約300キロ。バッテリーで動き、部品を取り換えると収穫にも使える。

 延岡市北浦町古江の町農業公社で4日、発表会があった。本来は水田で実演する予定だったが、前日が大雨のため、公社駐車場で動かした。スタッフの操作で前後や真横への移動、その場での回転などの動きを披露した。

 テムザック創始者の高本陽一議長(68)は「1台で何役もこなせる。小さくて小回りが利くので、棚田や四角くない畑にもってこい」とPR。改良を重ね、今年の収穫までには、人がいちいち指示を出さなくても動くようにしたいという。

 さらに17日、自動種まきロボ「新型雷鳥1号」もお披露目。前年の2023年に開発した雑草防除用の「雷鳥1号」を改良し、種まきでも使えるようにした。

 全長70センチ、幅46センチ、高さ38センチ、重さ約8キロ。バッテリー駆動で太陽電池も装備する。後部にもみを積み、水を張った田に浮かべると、まきながら動く。AI(人工知能)でまいた場所を記憶して、まんべんなくまけるという。

 作業能力は10アールあたり5台で約30分。前年はドローンでまいたが、より省力化した。種まきと雑草取りは「2号」同様、部品を付け替えるだけだ。

 これらの機体の価格は未定。テムザック側は「農家が自己所有するのではなく、レンタルにより経費を抑えたい」とする。3年目の来年度で、一連の稲作にかかる費用を見極めるつもりだ。

 「食糧安保の観点からも、耕作放棄地の活用は重要。農業未経験者や他に勤めを持っている人でも、楽にコメ作りができるようにしたい」(高本議長)

 同社は前年度、市内30アールの水田でロボット農業を開始。雑草防除用「1号」▽収穫用「2号」▽獣害対策用「3号」の雷鳥シリーズを次々投入し、約800キロを収穫した。「雷粉」というブランドで米粉になり、全国の飲食店でケーキやピザに使われた。

 今年度は倍の60アールに増やし、米粉の6次産業化にも取り組む。世界的に小麦の供給が不安定な中、延岡をモデルに今後も人口減の中でも安定した農業生産ができるシステムづくりを目指す。(星乃勇介)