石川県は19日、防災会議震災対策部会を開き、新たな地震の被害想定について、元日の能登半島地震の断層評価を踏まえ、今年度に見直し作業を終え、来年度の地域防災計画に反映させることを決めた。

 今回の地震では、死者245人(19日現在)に対し、県の被害想定は、今回の震源に最も近い地震の被害で7人。1997年度から四半世紀、見直されていなかった。

 被害想定は、自治体が地震対策を進めるうえでの大前提。県は地域防災計画(地震対策編)の中で、能登半島北方沖地震の被害想定として、避難者2781人、建物全壊120棟などとしていた。

 しかし、今回の地震では、避難者がピーク時で3万4千人、住宅の全壊は8千棟を超え、準備の甘さが問われた。

 県は「早く見直したかったが、想定の前提となる国の断層評価をずっと待っていた」と説明。一昨年から能登で続く群発地震を受け、昨年8月から想定の見直しに着手した矢先、今回の地震が起きていたとしている。

 この日の部会には、県危機管理監や名古屋大の専門家、医療や消防などの関係者でつくる委員14人が会に出席。冒頭、部会長の宮島昌克・金沢大名誉教授(防災工学)が今回の地震について、「被害想定で1個の断層で進めていたが、いくつかの断層が連動して地震となり、被害が発生した」と説明した。

 会では、被害想定の調査方針が話し合われ、対象断層に、従来の断層帯に加え、今回の地震を引き起こした能登半島北岸沖の断層を加えることを決めた。この断層の評価は、国が今夏の公表をめどに調査を進めており、結果を待って作業に入る。

 さらに今回、元日に発災したことを受け、冬の午前5時や秋の正午、冬の午後6時などの発生時間帯の想定条件に、「正月の午後6時」「ゴールデンウイークの正午」を追加することを確認した。

 被害を想定する項目は建物や物的、人的など40あるが、新たに、宅地の液状化被害▽介護・福祉機能への支障▽海岸施設被害の3項目を加えた。

 委員からは「今回は半島のインフラが壊滅し、物資を送りたくてもできなかった。交通面の被害も想定を」「コロナ禍だったらどうなっていたか。感染症対策も考慮して」などの声が出た。

 また、震度計を増やすことや、市町の防災行政無線のバッテリー切れが相次いだことを踏まえ、長期間電源が持つバッテリーを求める声も出た。

 被害想定の見直しをめぐっては、委員から今回の地震の前から「早く見直さないと手遅れになる」との声が出ていた。県災害危機管理アドバイザーを長年務めた室崎益輝(よしてる)・神戸大名誉教授も「国の調査ができていなかったが、石川県が待っていたのも良くなかった」と朝日新聞に語っている

 宮島部会長は会合後の取材に「想定(の見直し)が長い間行われなかったのは、新しい断層の発見とか、地震学的な新しい発見がなかったからだ。想定さえやったら災害が減るというもんではない。想定が出て、県で防災計画を作り、それを周知し、耐震性が上がるまでには長い年月が必要。」と説明した。(土井良典)