民間の有識者らでつくる「人口戦略会議」が24日公表した地方自治体の「持続可能性」の分析結果によると、東北6県の「消滅可能性自治体」は165に上り、地域ブロック別で最多だった。東北全体では77%で消滅可能性があるとされた。

 地域ブロックは北海道、東北、関東、中部、近畿、中四国、九州。東北の消滅可能性自治体は数も割合も全国最多だった。東北では、死亡が出生を上回る「自然減」に加え、転出が転入を上回る「社会減」が深刻になっている。

 前回の2014年の分析では、原発事故の影響で試算の対象外となった福島を除き、東北の137市町村で消滅可能性があるとされた。今回は福島(浜通り地域の13市町村はひとまとめで推計)も対象とし、215のうち165で消滅可能性があるとされた。

 消滅可能性自治体数を県別にみると、青森35(市町村数は40)、岩手26(同33)、宮城19(同35)、秋田24(同25)、山形28(同35)、福島33(同47)だった。各県内の消滅可能性自治体数は宮城を除きいずれも70%以上で、特に秋田は秋田市以外すべてが該当し、96%に上った。

 14年の分析では消滅可能性があるとされたものの、今回は該当しなかったのは岩手県矢巾町や宮城県塩釜市など11あった。一方、新たに該当したのは福島の33を除くと、青森県六ケ所村や秋田県大潟村など6あった。

 一方、企業誘致が進んでいる宮城県大衡村が東北6県で唯一「自立持続可能性自治体」に分類された。(中島嘉克)

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 宮城県内では、6市13町に「消滅可能性」があると指摘された。いずれの市町も前回10年前の発表でリストアップされており、2回目の指摘だ。一方、塩釜市、山元町、美里町、大衡村の4市町村は今回、選定から外れ、明暗が分かれた。

 指摘を受けたうち、最も深刻だったのは川崎町だ。出生より死亡が上回る「自然減」や、他の自治体への移動による「社会減」で、県内で唯一、ともに減少率が50%を上回っており、若年女性の人口は30年後、半減すると予測された。

 朝日新聞の取材に応じた小山修作町長は「人口減は分かっていたが、若い女性がここまでいなくなるとはショック」と驚きを隠さない。

 町は18歳までの医療費や小中学校の給食費の無償化に力を入れてきた。町に戻る人材をつなぎとめようと、町職員の採用上限年齢も29歳から40歳に引き上げた。

 ただ、若い女性への引き留め策は「まだできておらず力不足だった。これから手を打っていきたい」と言う。一方で「いくら地方で支援策を頑張っても、若年層の非正規の多さなど、正直どうにもならない部分がある」とも指摘。「安心して結婚と子育てをできる環境を、国が主導して作るべきだ」と訴えた。

 一方、東北唯一となる「自立持続可能性自治体」に選ばれたのが大衡村。100年後も若年女性が5割近く残るとされた。自動車や半導体関連企業が村に進出し、子育て支援の財源確保に成功した。

 今後は、台湾大手が参画する半導体製造工場建設も予定される。小川ひろみ村長は「企業誘致に力を入れ、福祉や子育ての充実を図りたい」と話した。(福留庸友、中島嘉克)

◆宮城県内の消滅可能性自治体

 【6市】石巻、気仙沼、白石、角田、登米、栗原

 【13町】蔵王、七ケ宿、村田、川崎、丸森、松島、七ケ浜、大郷、色麻、加美、涌谷、女川、南三陸