日本初の北極域研究船「みらいII」(全長128メートル、乗員97人)の建造が、横浜市磯子区で進んでいる。厚さ1・2メートルの氷を砕く機能を備え、ドローンも活用して北極域で空中・海中双方から観測を実施する。

 運用するのは、国立研究開発法人「海洋研究開発機構(JAMSTEC)」(本部・神奈川県横須賀市)。現在の海洋地球研究船「みらい」から調査・観測を引き継ぎ、北極域で氷の厚さや形状、海氷下の環境や生物などの把握といった調査を進める。

 総建造費は339億円。国の南極観測船として海上自衛隊が運用する砕氷艦「しらせ」の建造ノウハウを生かし、一年中、氷で覆われた海域を運航するのに十分な砕氷機能を持つ。

 報道陣に19日に公開された造船大手「ジャパンマリンユナイテッド(JMU)」の横浜事業所磯子工場の建造現場では、船の耐氷能力を高めるため、鉄板の上に厚さ2ミリのステンレス製の板が貼られていた。JMUの担当者によると、「氷の摩擦が抑えられ、塗装がはがれてもさびにくい」。こうした機能により、現在の「みらい」よりも活動範囲が広がり、北極点付近も観測できるようになるという。

 JAMSTECによると、北極域は、海氷の減少など環境が急激に変化し、経済活動が活発化。地球全体の気候・気象にも大きく影響しており、その課題はグローバルな視点でとらえる必要があるという。担当者は「ゆくゆくは太平洋側から大西洋側に横断し、海水温などを観測することもめざしたい」。JMUの灘信之社長も「保有する建造エンジニアリング技術の粋を結集し完成させようとの決意でみなぎっている」と意気込む。

 進水は2025年3月と見込まれ、完成は26年11月の予定。(具志堅直)