兵庫県立明石公園(明石市)にあり、今は閉鎖されている旧市立図書館について、同市が新たな施設の整備に乗り出した。今後、県の協力を得ながら、市民の意見を集約し、9月末までに利活用計画を策定する方針だ。

 旧市立図書館(3階建て、約5千平方メートル)は1974年、隣接する県立図書館と同時に開館した。公園内の落ち着いた環境にある図書館として、市民に親しまれてきた。

 市は2017年、JR明石駅前の再開発ビルに新たな図書館を整備した。旧市立図書館は郷土資料などを取り扱う「あかしふるさと図書館」として活用していたが、老朽化などの問題もあり、20年3月に閉鎖した。21年9月には建物の屋上でミイラ化した遺体が見つかり、管理上の問題が指摘されるようになった。

 同館の建物は県立公園内にあるため、県は21年10月、「設置許可の条件に適合していない」として、都市公園法に基づき、23年3月末までに土地を原状回復し、県に返還するよう市に文書で通知した。遺体が見つかった問題についても、日々の巡視や侵入防止策の徹底など適正に管理するよう求めた。

 しかし、旧市立図書館の解体費用は、20年度の市の試算で8億円にのぼった。今後の活用策がなく、解体のみに多額の費用を負担するのは市にとって課題の一つだった。

 昨年3月末、県の設置許可の期限を迎え、市議会から「違法状態」や「不法占拠」などと指摘されていた。

 市は多額の解体費用をかけて土地を原状回復するのではなく、国の補助金などを活用した新たな活用策を模索した。丸谷聡子市長は23年12月、斎藤元彦知事に対し、新たな施設を整備する方針などを示して、協力を求めた。斎藤知事は「懸案の解決に向けた大きな一歩」と市の対応を評価し、協力する意向を示した。今後、県と市で連携を図りながら、新たな設置許可を受けるための手続きを進めていく。

 市が想定する日程では、今年9月末までにワークショップなどを通して市民の意向を把握し、利活用計画を策定する。25年度から旧施設の撤去や新施設の建設工事に着手し、26年度から27年度にかけて新施設の供用を始める目算だ。

 ただ公園内に整備するため、どんな施設でも整備できるわけではない。都市公園法では運動や教養、遊戯などを目的とした施設に定められている。市は法の範囲内で公園利用者や市民のニーズを踏まえた施設の整備を目指す。

 市政策局の山口泰寛・プロジェクト部長は「明石公園自体、駅から歩いていくことができ、緑も豊かで魅力あふれる公園だ。その一部である旧市立図書館の跡地も価値が高い。さらに公園の魅力を向上させるためにも利活用を進めたい」と話している。(大久保直樹)