憲法記念日に合わせて広島市で上演されてきた「憲法ミュージカル」が、30回目を迎えた今年で幕を下ろした。広島市中区の県民文化センターで3日にあったラスト公演では、公募で集まった市民約40人が熱演し、観客約500人から大きな拍手が送られた。

 ミュージカルが始まったのは1994年。広島弁護士会の有志が、市民に憲法を身近に感じてもらおうと企画した。「黒い雨訴訟」の弁護団長だった広島敦隆弁護士が2018年まで脚本を担当。高齢者の人権や現代の貧困など時事問題をテーマにしてきた。

 だが、広島弁護士が22年に77歳で亡くなり、実行委員会のメンバーも年齢を重ねたことから、30回で区切りとした。

 今回の題は「シン・主権者って言われても―覚醒のときはいつ?―」。広島弁護士の16年の脚本をアレンジした。「新しい戦前」といったキーワードを入れ、ロシアのウクライナ侵攻などの出来事を反映。原爆ドーム前での反戦スタンディングや高校の授業の場面などを通して、主権者とは何かを考える内容とした。

 実行委員長の石口俊一弁護士(72)は「来年以降も憲法をわかりやすく伝える取り組みを続けたい」と話している。(柳川迅)