自身3度目の母国グランプリとなった今年の日本GPの予選で、角田裕毅(RB)が昨年に続いてQ3進出を果たした。角田のQ3進出は第2戦サウジアラビアGP以来、3戦連続。これはデビューイヤーの2021年終盤のカタールGPから最終戦アブダビGPまでの3戦連続以来、自身最長タイとなった。

 ただし、この日の角田は低速コーナーで苦しんでいた。

「低速コーナーでバランスに苦しんでいて、そちらに気を取られていました」

 鈴鹿にはふたつしか低速コーナーがない。ヘアピンとシケインだ。そのふたつのコーナーで角田はバランスに苦しんでいた。

「旋回性がかなり悪かったので、出口で遅れをとっていた部分があって、アタックしながら自分でも感じていたのですが、予選中に改善させるのは難しかったです」

 Q2の1回目を終わった段階で11番手だったのも、ヘアピンをうまく攻略できなかったからだった。だから、そこでのロスを最小限にとどめられればQ3へ進出できると、角田は諦めてはいなかった。それは、自分のためだけでなく、日本GPにアップデートを投入してくれたチームの開発陣、そしてこの日、サーキットに駆けつけた7万2000人の観客のためでもあった。

「2回目のアタックで行けると思っていましたが、今までの日本GPの予選のなかで、今回が一番プレッシャーを感じたことは確かです。責任感というか、そんな感じです。でも、大勢の観客の前で声援を受けながら走ることができて、本当にエネルギーをいただき、最高の予選でした」

 Q2の2回目のアタックでは、角田はセクター1を30.2秒の自己ベストで通過して行った。

「そうですね、鈴鹿は走っていて本当に楽しいと感じました。ただ、今回は低速コーナーでバランスに苦しんでいて、そちらに気を取られていました。あともう1セッションあれば、もう少しクルマからポテンシャルを引き出せたと思います。ただ限られた時間のなかで、最大限のパフォーマンスは見せられたと思います」

 苦しんでいたヘアピンとシケインもうまくまとめた角田は1分29秒417を叩き出して、10番手でQ3進出を決めた。

 マシンの総合力が問われる鈴鹿では、上位勢と角田が所属するRBの差はほかのサーキット以上に大きく、Q3で角田は10番手に終わった。しかし、角田が悔しかったのは、ポジションではなかった。

「最後、ちょっとまとめきれなかったんです。シケインで少しミスをしました。もしうまく行っていたとしても、9番手とコンマ4秒もあるので逆転は難しかったと思いますが、それでもクルマの力を最大限引き出したかったことは、ドライバーとして悔しい」

 だから、日曜日のレースも角田はベストを尽くすことだけに集中している。

「もちろん、最低でもポイント争いに加わりたいですが、まずはいまあるクルマの力を最大限引き出して、レースをまとめきりたい。ダニエル(・リカルド)も近いところからスタートするので、後続勢への対策もチームとして何かしらできると思います。もちろん、2台そろって入賞できたら、最高です」

 日本人ドライバーが母国グランプリで最後にポイントを獲得したのは、2012年の小林可夢偉(ザウバー/3位)。マシンの戦闘力は当時のザウバーほど高くはないが、ドライバーとしての成熟度は当時の可夢偉に決して劣っていないレベルまで上がってきている角田なら、12年ぶりのポイント獲得も不可能ではない。