スルガ銀行(沼津市)の株主総会が26日、同市で開かれる。アパートやマンションなど投資用不動産の不正融資問題を巡り、債務者と被害弁護団は昨年に続いて20件の株主提案を行い、融資全件の再調査や「不正融資反省館」の設立などを求めている。さらに今年は、スルガ銀が資本業務提携を結ぶクレジットカード大手「クレディセゾン」(東京)の総会でも株主提案を実行した。スルガ銀は債務者に不動産の任意売却などを提案しているが、溝は埋まらず、全面解決の見通しは立っていない。
 19日に東京で開かれたセゾンの総会では、社外取締役を務める加藤広亮スルガ銀社長の解任案など10件を提案し、すべて否決された。出席者によると、これまでのスルガ銀の総会と同様に荒れ気味となり、従来と様相が一変したという。
 総会後、都内で記者会見を開いた弁護団の河合弘之団長は「スルガ銀行に対する金融庁の業務改善命令が解除されていないのに、クレディセゾンは提携を結んだ。贖罪(しょくざい)が終わっていないのにおかしいだろう、という警告」と訴えた。
 スルガ銀によると、弁護団などを通じて組織的に交渉している不動産融資物件は2月末時点で845。不動産市場が活況の中、任意売却を支援するなどし、2022年9月末以降に83物件が組織的交渉先から外れたという。
 今年3月には一定の家賃収入があり、収支黒字物件と推定される債務者に「任意売却による負担軽減策」を提案する書面を送った。ローン返済延滞中の利息と損害金の一部免除、債務が残った場合の返済相談などきめ細かな支援を通し、早期解決を呼びかけている。
 ただ、「類型による集団的な解決」を求める弁護団と、「すべての不正に銀行が関与した訳ではなく、一律解決は難しい」とするスルガ銀の主張は平行線をたどったまま。弁護団は約400人の交渉を受任し、東京地裁で調停を進めている。
 株主提案について、弁護団は「経営陣との話し合いを求めているが、応じないため、株主総会で直接交渉するしかない」と指摘。スルガ銀は「ほかの案件でも債務者と経営陣が直接会うことはなく、特例は認められない」(広報室)としている。
 スルガ銀の取締役会はすべての株主提案に反対している。

 スルガ銀行の不正融資 シェアハウスやアパート、マンションといった投資用不動産への融資を巡り、書類改ざんや非現実的な家賃設定などの偽装が長期間、組織的に横行していた問題。2018年に発覚し、金融庁はスルガ銀に対して業務改善命令を出した。シェアハウス問題は所有者が物件を第三者に譲渡すれば、ローン返済を免除する「代物弁済」で集団的な調停が成立した。