メジャーリーグ 最新情報

 

今シーズンの大谷翔平はSPOTV NOWで全試合生中継!
U-NEXTから加入で無料トライアル実施中![PR]

 

 MLB通算176号本塁打を放ち、松井秀喜氏を超えるMLBの日本人本塁打記録を達成した大谷翔平選手。この2人の本塁打や打撃内容を比較すると、1点明確な違いが現れた。これが大谷選手の本塁打量産のスピードの一因になっている。背後では、2人が経験するMLBの野球環境も大きく変わっていたのだ。

 

 

日本人スラッガー2人の打撃傾向の違い


 
 現地時間4月21日に、ニューヨーク・ヤンキースなどで活躍した松井秀喜氏を超える日本人MLB通算176号本塁打を打ったロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手。今回は、本塁打や打撃成績の特徴を中心に、大谷翔平選手と松井秀喜氏との比較に焦点を当てたい。なお、大谷選手の数字は現地時間4月21日終了時点を前提としている。
 
まとめると以下のようになる。
・大谷選手は松井氏に比べセンター〜レフト方向の本塁打が多い
・松井氏の時代に比べ厳しい投球に対する科学的対応で大谷選手は数字を残している

 

 

 松井秀喜氏についても簡単に触れたい。NPB時代は読売ジャイアンツで活躍した松井氏は、MLBでは2003年から10年間、ニューヨーク・ヤンキースなどで外野手やDHとしてプレーし、2009年にはワールドシリーズMVPを獲得している。

 
 松井氏が通算175号本塁打を打ったのは出場1,205試合目である。対して大谷選手は、打者としての出場試合717試合目に通算175号を、725試合目に通算176号を打った。大谷選手の達成期間は松井氏の約6割となる。
 
 松井氏がMLB初本塁打を打ったのはおよそ28歳10か月の時点で、大谷選手のMLB通算本塁打数は130本台に達していた。

 
 次に、両バッターが放った本塁打の詳細を見ていこう。
 
 大谷選手は右投手からの割合が高い一方、Late&Close(※1)の本塁打数は松井氏の方が多い。走者の状況での比較でみると大差はない。
(※1)7回以降で1点リードか同点、もしくは連続本塁打が出れば同点になる状況
 
【左右別】
・松井:右119、左56 ・大谷:右131、左45
【得点圏】
・松井46 ・大谷45
【走者なし】
・松井93 ・大谷95
【Late&Close】
・松井31 ・大谷20
 
 MLB分析サイト『Baseball Savant』から引用した以下の図を比較してわかるとおり、両選手の本塁打で違いが一目瞭然なのは打球方向だ。
 

 (※2)松井氏の2003〜2004年の本塁打は図に反映されていないとみられる。

 

 

 
 MLB分析サイト『Baseball reference』のデータをもとに、両選手の3方向別の本塁打数を比較すると以下になる。
 
 松井:ライト111(63.4%)、センター59(33.7%)、レフト5(2.9%)
 大谷:ライト50(28.4%)、センター110(62.5%)、レフト16(9.1%)

 
 しかし、松井氏がレフト方向の長打を打てなかったわけではない。二塁打になるとセンター方向やレフト方向の割合が増え、大谷選手と打球方向が変わらなくなっている。
 
 松井:ライト84(33.7%)、センター101(40.6%)、レフト64(25.7%)
 大谷:ライト48(34.3%)、センター57(40.7%)、レフト35(25.0%)
 
 ほぼ同数の本塁打を打った時点で、二塁打の数は松井氏の方がずっと多くなっている。在籍期間の違いだけではない。松井氏は4.84試合に1本の二塁打を打っているが、この数字は大谷選手(5.18試合に1本)よりも小さい。
 
 松井氏がセンター〜レフト方向への二塁打としていたような打球の多くを大谷選手は本塁打にしていたことになる。ここが本塁打のペースの差として考えられる。

 
 ここで、両選手がプレーした時期でMLBの野球の質自体が変化している点に留意せねばならない。松井氏の在籍時に比べ、大谷選手の在籍時は、MLBでのフォーシームの平均球速は約2マイル(約3キロ)上昇、スライダーの平均球速も上昇した。一方、平均打率は最大で2分台の低下を示した。

 
 こうした中、平均長打率は、打率の低下傾向に反し2014〜2019年に大きく上昇している。この推移は、フライねらいの打撃が増加した「フライボール革命」や、投手の対抗策としての回転数の多い高めフォーシームの増加を反映している。
 

 
 松井氏の時代にはバットの芯を外すツーシームが流行し、オークランド・アスレチックスを題材にした映画『マネーボール』のように出塁率の重視傾向が高まっていた。
 
 データ解析ツール『スタットキャスト』の導入をはじめとするデータ分析の深化や科学的トレーニングは、大谷選手の時代に大きく進歩したものだ。ピッチクロックの導入、守備シフトの拡大やこれに対する規制など、大谷選手の時代での変化は他にも数多い。
 
 同じ170本台の本塁打でも、背後のプレー環境はそれぞれの時代の中で変化している。こうした中、大谷選手はより厳しい球に立ち向かう一方で、対応するトレーニング環境や分析技術も進化している。
 
 両選手のMLB在籍時期が入れ替わっていたら、それぞれの打撃成績はどのように変わったのか、別の意味で興味深い。
 
 私自身、松井氏の引退直後は、同選手の本塁打記録を抜く日本人は当分現れないと思っていた。しかし大谷選手はこの私の見方をあっさり覆した。
 
 一方、松井氏も日本人初のスラッガーとして移籍し、重圧の中数々のハードルをクリアし成果を出した。両選手に共通するのは、経験したMLBの野球環境の変化に対応し、歴史に残る素晴らしい成果を挙げた点だ。
 
 そして、大谷選手はこれからも新たな歴史を作っていく。打者としてだけでなく、来年以降は、再び投手としても。

 
【関連記事】
ドジャース、高額年俸ランキングトップ10
【打者部門】大谷翔平は何位? MLBナリーグ打撃成績ランキング
日本人メジャーリーガーの歴代最高年俸ランキング

 

 

 
【了】