プロ野球 最新情報

 

今シーズンのプロ野球はDAZNで生中継!
月額1270円お得に観るならDMM×DAZNホーダイ[PR]

 

 5月10日に大樹生命月間MVP賞が発表される。それに先立ちデータに主眼を置いた別角度からの評価で、3・4月に最も大きな貢献を果たしていた選手をチェックしたい。

 

 

打低環境でも圧巻の柳田悠岐。上位を占めるソフトバンク勢

 評価にはWAR(Wins Above Replacement)を使う。WARとは打撃、走塁、守備、投球を総合的に評価し、控えレベルの選手が同じだけ出場した場合に比べどれだけチームの勝利を積み上げたかを推測した指標だ。図中の打撃、走塁、守備のグラフは、それぞれどの分野で優れた働きを見せたかを表すWARの構成要素となっている。
 

 
 まずは野手から見ていこう。パ・リーグでは柳田悠岐(ソフトバンク)、セ・リーグでは岡本和真(巨人)が、それぞれ2.14、1.37とトップのWARを記録した。パ・リーグは上位4名をソフトバンク勢が占めており、序盤の好調を裏付けるかたちとなっている。
 

 
 各分野で優秀だった選手を見ていく。打撃では柳田が12球団トップの貢献を見せている。リーグの平均的な打者に比べ、打撃で11.3点チームの得点を増やしたという評価だ。3・4月は打率/出塁率/長打率が.323/.462/.484。今季はNPB全体が打低環境にあることもあり本塁打は3本と伸びなかったが、全打席の約5分の1で四球を獲得し、12球団トップの出塁率.462で貢献を高めた。
 
 セ・リーグの打撃トップは、やはり総合トップの岡本。岡本も本塁打は4本と特別多いわけではなかったが、二塁打が両リーグトップタイの8本と本塁打以外でも長打を連発している。守備・走塁での伸び悩みが響きランキングには入らなかったが、村上宗隆(ヤクルト)や細川成也(中日)も岡本に匹敵する打撃貢献をみせていたようだ。

打撃だけでなく守備でも復調を見せる今宮健太

 守備評価には同じイニングを守った平均的な同ポジション選手と比較してどれだけ失点を防いだかを表すUZR(Ultimate Zone Rating)を使用する。しかしUZRは同ポジションの選手との守備を比較する指標であるため、異なるポジションの選手を比較する際はポジション間の補正を行う必要がある。一般的に高い守備力、もしくは独自性のあるスキルを要するポジション(遊撃手や二塁手、捕手など)を守った選手はプラスに補正をかけ、その逆のポジション(一塁手や左翼手など)はマイナスの補正をかけるといった具合だ。この守備位置補正をUZRに加えたものが守備貢献となる。
 

 
 守備で優れた貢献を見せたのが、今宮健太(ソフトバンク)だ。3・4月はリーグの平均的な選手に比べ、守備で5.6点多く失点を防いだという評価が出た。今宮は現在32歳。ここ数年はその守備力に衰えが見られていたが、今季ここまではかつての名手・今宮の姿を取り戻している。また打撃も好調で柳田に次ぐWAR2.05を記録している。
 
 ほかのポジションでは中堅の塩見泰隆(ヤクルト)が好成績を残している。3・4月はリーグの平均的な選手に比べ、守備で4.9点分失点を防いだという評価だ。中堅で素晴らしい守備範囲を見せていたようだ。守備と走塁をあわせた貢献度は12球団2位。打撃が多少振るわなくても取り返せる総合力を塩見は持っている。

急成長の今井達也、北山亘基がランクイン。セではわずか1勝の戸郷翔征がトップ


 
 投手のWARは投球の質と量両面でどれだけ貢献したかから求める。質は「奪三振」、「与四死球」、「被本塁打」、量は「投球回」によって決まり、そこから平均的な投手と比較しどれだけ多くの失点を防いだかを算出。それが何勝分に値するのか換算したものが投手のWARとなる。
 

 
 投手部門でパ・リーグは今井達也(西武)、セ・リーグでは戸郷翔征(巨人)がそれぞれ1.12、0.79とトップのWARを記録した。
 
 圧巻の投球で3・4月を防御率0.77で終えた今井。セイバーメトリクスの観点から見てもその投球は圧倒的だ。平均が20%弱となる奪三振割合(奪三振/打者)で29.4%と三振を多く奪い、平均が8%ほどとなる与四球割合(与四球/打者)で5.9%と四球を少なく抑えた。今井といえば与四球の多い荒れ球投手として知られていたが、昨季から比べると与四球のペースが半減。それがこの好投を支えている。もともとポテンシャルが高く評価されていたが、いよいよ本格化してきたようだ。
 
 戸郷の3・4月は1勝1敗と勝敗の面ではそれほど振るわなかった。しかし投球内容は圧巻で、今井同様、奪三振割合25.0%、与四球割合3.2%。奪三振と与四球で素晴らしい貢献を見せた。勝敗にその貢献度が反映されていないのは、9イニングあたりの援護点がわずか2.25点と打線の援護がなかったことによるものだ。
 
 今季救援から先発に転向し素晴らしい投球を見せている北山亘基(日本ハム)もパ・リーグ4位に入った。救援からの転向は、全力投球ができなくなるために投球の質が悪化するのが普通だ。にもかかわらず北山は奪三振割合を昨季の21.2%から今季29.9%に劇的に向上させている。より長いイニングを投げるにもかかわらず、ストレート平均球速は昨季から約1km/h伸びており、投手として根本的な出力が向上した様子がうかがえる。この投球を維持できれば11月からの侍JAPAN選出も期待できるかもしれない。

 
DELTA(@Deltagraphs)http://deltagraphs.co.jp/
 2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1〜5』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(https://1point02.jp/)も運営する。

 

 

 
【了】