開幕二軍スタートからはい上がって



一軍でシュアなバッティングを見せている蛭間

 投打がかみ合わず、最下位に低迷する西武。苦しい戦いが続く中、流れを変えるカンフル剤が求められている。その有力候補として期待が大きいのが、プロ2年目の蛭間拓哉だ。

 春季キャンプはA班(一軍)スタートだったが、開幕は二軍スタートに。結果を残してはい上がるしかない。イースタン・リーグで29試合出場し、打率.287、1本塁打、5打点をマークし、5月10日に一軍昇格した。10試合のスタメン出場で無安打に終わったのは1試合のみ。広角に安打を放ち、打率.324をマークしている。真骨頂と言える打撃は19日のソフトバンク戦(みずほPayPay)だ。初回二死一、三塁で2ストライクと追い込まれたが、左腕・大関友久の146キロ直球を逆方向の左翼線へライナーではじき返す先制の適時二塁打。試合はサヨナラ逆転負けを喫したが、打線全体の4安打のうち蛭間が2安打と奮闘した。

 西武は身近であこがれの球団だった。小学6年時にライオンズジュニアに選出され、浦和学院高に進学。早大で大学球界を代表する強打者に成長し、ドラフト1位で入団した。将来の首位打者候補として期待されたが、プロの世界は厳しい。走攻守でレベルアップの必要があり、1年目は開幕二2軍スタートに。鍛錬の日々を積み、6月下旬に一軍昇格した。56試合出場で打率.232、2本塁打、20打点。数字だけを見れば物足りなく映るが、一軍で経験した内容は濃かった。8月は月間打率.294、1本塁打、8打点をマーク。一番、三番、五番と重要な打順を任された。

「課題は走攻守すべて」


 蛭間は週刊ベースボールの取材で今年の抱負を聞かれ、「課題は走攻守すべてです」と即答した上で続けた。

「走塁は、去年が0個だったので、盗塁を決めることが一番のテーマです。盗塁は、走り方や足の速さというのもありますが、サインや相手投手の球種などの読み、投手のクセなどの条件がそろわないとなかなかスタートを切れないと思うので、盗塁の上手な人にいろいろ聞いて、自分の感覚に落とし込んで取り組んでいます」

「守備は、僕がチームで一番下手くそだと思っているので、とにかく数をこなしてうまくなるしかないと思います。去年よりはマシにはなっているとは思いますが、送球も、チャージも、フライ捕球も、打球判断も、本当にまだまだなので、必死に練習しなければいけません」

「バッティングに関しても、自分の納得いく『あ、これだ』というのをまだ探している感じです。より良くなるためにはさらに打ち込んでいかないと、打撃フォームは固まらないと思うので、まずは打ち込んで、自分のフォームをしっかりと確立することが大切かなと思っています」

若手には大きなチャンス


 向上心旺盛な若武者は、通算2000安打を達成した球団のレジェンド・栗山巧に自主トレ参加を志願。打撃練習を熱心に見つめて分析した。練習後はその日の気づき、栗山から受けた助言をノートに細かく綴った。自主トレ中は「マシンで1日5箱」(約500球)のノルマを毎日敢行。打撃の質と量の両方を追い求めた。

 かつて、「山賊打線」と形容された破壊力抜群の打線で2018、19年とリーグ連覇を飾ったが、近年は打線の得点力不足がネックになっている。外野の3枠を固定できないシーズンが続き、今季は中軸として期待されたヘスス・アギラー、フランチー・コルデロの両助っ人が打撃不振でファームに降格した。戦力的には苦しい状況だが、チャンスを与えられる若手は大きなチャンスだ。

 西武は中村剛也、栗山を筆頭に、秋山翔吾(広島)、浅村栄斗(楽天)、山川穂高(ソフトバンク)、森友哉(オリックス)と球界を代表する強打者を輩出してきた歴史がある。秋山は大卒2年目の12年に自身初の規定打席に到達し、打率.293、4本塁打、37打点、10盗塁をマークしている。大卒で同期入団の森下翔太(阪神)、萩尾匡也(巨人)が存在感を示している中、蛭間も負けられない。外野のレギュラーで一本立ちし、チームに不可欠な存在になれるか。

写真=BBM