全国の書店員がいちばん売りたい本を投票で選ぶ「2024年本屋大賞」(第21回)が4月10日、発表され、大賞に宮島未奈さんの『成瀬は天下を取りにいく』(新潮社)が選ばれました。(文:吉野太一郎 写真:斎藤大輔)

【好書好日の記事から】

 『成瀬は天下を取りにいく』は、滋賀県大津市を舞台に、「他人の目を気にすることなくマイペースに生きている」主人公・成瀬あかりが、中学2年から高校生にかけて繰り広げる一見変わった、しかしぶれない挑戦の数々を描いた作品です。続編となる『成瀬は信じた道をいく』も今年1月に発売されています。

大賞の喜びを語る宮島未奈さん

 作中で主人公・成瀬が結成してM-1グランプリに臨む漫才コンビ「ゼゼカラ」のユニホームを着て登場し「膳所から来ました宮島未奈です。滋賀の皆さん見てますか!」と手を振った宮島さん。「本屋大賞を受賞したことで、ますます多くの皆さんが成瀬と出会っていただけることが楽しみです。たくさんの人にこうしてお祝いしてもらえる未来があったのだなととても驚いています。成瀬は作中で『先のことはわからない』とよく言うのですけど、以前の私もこんなふうになるとは思っていなかった。これから1年間も、今の私には想像できないことがたくさん起こるんじゃないかと思っています。でも成瀬と一緒なら大丈夫です」と喜びを語りました。

宮島さんに花束を渡す凪良ゆうさん

 プレゼンターとして昨年『汝、星のごとく』で本屋大賞を受賞した凪良ゆうさんが登場し、宮島さんに花束を渡しました。「本屋大賞が動き出した20年前、2万軒を越す本屋さんがあった。それがこの20年でほぼ半減。応援してくださった本屋さんからもいくつか閉店の連絡を頂き、そのたびに言葉にならないやるせない気持ちになりました。私が今あるのは本屋さんのおかげ。この1年間、版元の講談社さんとともに、その本屋さんにできることは何かないかと考えてきた。それが大賞を頂いた作家の責任だと思っています。そのバトンを宮島さんと成瀬に渡したいと思います」とスピーチしました。

翻訳部門は「ヒュナム洞書店」

 また、翻訳小説部門の大賞は、ファン・ボルムさんの『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』(講談社)に決まりました。

発表会に出席した『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』翻訳者の牧野美加さん(左)と著者ファン・ボルムさん(中央)

 韓国・ソウルの小さな個人経営の書店・ヒュナム洞書店を舞台に、そこに集う人々のかかわりあいを描いた物語。著者のファンさんが発表会に合わせて来日。「日本で出版されるときいて、どんなふうに読んでくださるのか気になった。楽しんで読んでくださった方がいらっしゃることだと思うので、とてもうれしく思います。いくら努力しても人生がよくならないように思えて不安に思ったり、自分を責めたりします。そうした感情がこの小説を通して薄まってほしい。つらい世の中だからこそ、自分を応援して、他人と応援し合うような時間になればいい。この賞も私にとって大きな応援になりました」と謝辞を述べました。

超発掘本は「プラスティック」

 ジャンルや新旧を問わず書店員が「売りたい」と思う本を選ぶ2024年の「超発掘本!」には、井上夢人さんの『プラスティック』(講談社文庫)が選ばれました。

スピーチする井上夢人さん

 井上さんは「1993年に雑誌連載して書籍化した本。びっくりしています。これから読んでいただく方の中には生まれてないという方もいらっしゃると思います。おっそろしいことです。作家は長く読み継がれてほしいと考えているけど、なかなかそうはならない。せっかく本にしていただいたのに1、2カ月たつとすーっと消えていく。作者には何の断りもなく消えていってしまいます。それが今回、こういう形で掘り返していただいて、日に当てていただくチャンスを頂けたのは作者としてこの上ない喜びです。作家冥利に尽きるということなのかとつくづく感じております」とユーモアを交えて語りました。

2位以下のノミネート作品

 2024年本屋大賞は、一次投票を昨年12月1日から1月8日まで実施し、全国530書店、書店員736人が投票。上位10作品がノミネートされ、二次投票を経て、大賞が決まりました。

2. 

3. 塩田武士「存在のすべてを」(朝日新聞出版)

4. 夏川草介「スピノザの診察室」(水鈴社)

5.

6. 

7.

8. 凪良ゆう「星を編む」(講談社)

9.

10.