「ゆれるマナー」 [著]青山七恵ほか

 「考える」「楽しむ」「惚(ほ)れる」と続いてきた〝マナーシリーズ〟の新刊だ。このシリーズの魅力は、なんといっても執筆陣と構成にある。今回は7人の作家(松家仁之さんの肩書は小説家だが)、俳人、登山家からなる9人。
 マナーとはあるが、ここで語られているのは、行儀とか作法というよりは、書き手それぞれが思う立ち居振る舞いや、ちょっとしたひっかかり、こだわりだ。そこがいい。知り合いから「ね、ちょっと、ちょっと」と話しかけられているかのようで、思わず「え? なに、なに?」と耳を向けたくなる。
 14章100篇(ぺん)からなるエッセーは、全てが見開き2ページで読み切りになっていて、どこから読んでも、どう読んでも楽しい。夜寝る前に1〜2篇ずつ読むのも、旅のお供に持って行きぱらぱら読むのも、もちろん一気読みも、あり。
 どれも味のあるエッセーなのだが、「忘れ物のマナー」「鉢植えのマナー」「消しゴムのマナー」等々、一瞬、?と意表をつくタイトルのものが、とりわけお薦め。