AKI猪瀬コラム「MLBへの扉」〜大谷翔平の同僚たち〜

 ゴールドグラブ5度受賞の名外野手ジェイソン・ヘイワード。ブレーブス、カージナルス、カブス、ドジャース、MLB屈指の名門球団を渡り歩いてきた男ですが、彼ほどファンの評価とMLB球界関係者の評価が分かれている選手は珍しいと思います。

 ファンと関係者の意見が乖離(かいり)した最大の要因は、2015年12月15日にカブスと結んだ8年1億8400万ドルの大型契約です。ファンの間では「守備は一流、打撃は二流以下の選手にしては、もらいすぎの大型契約」と非難が集中しました。カブス1年目の2016年はファンの批判が的中して、2割3分、7本塁打と低迷。しかし、隠された秘話がシーズン終盤に明らかになるとファンの反応に変化が起こりました。

 16年シーズンで引退を表明していたベテラン捕手のデビット・ロス。そのロスに対してヘイワードは「ロスのキャリアと人柄に敬意を払うために」と自費で遠征先のホテルの部屋を一般の部屋からスイートルームに変更していたのです。

 ロスはワールドシリーズ第7戦で現役最後となる安打を本塁打でマーク。そして、カブスは108年ぶりとなる世界一に輝きました。ヘイワードのチームメートに対する接し方やチームに対する忠誠心は、成績や数字に表れないことですが、球界関係者からは絶大なる高評価を受けています。

 今春のスプリングトレーニングでは、ベテランになった現在でも「チームが勝つためなら、なんでもする」と断言。そして、新たにチームメートになった大谷については「大谷は、ドジャースの大谷ではなく、MLBの大谷。サッカー界ならメッシのような存在だ」と答えてくれました。(大リーグアナリスト)