◇新企画「FOCUS」

 スポーツ界でウワサされる事柄や謎に着目する企画「FOCUS」を不定期連載でスタートします。第1回は開幕から約3週間が経過したプロ野球界でささやかれている「今季は打球が飛ばないってホント?」を深掘り。各球団とも対戦が一回りし、結果を見てもロースコアの試合が多数。本塁打は減り、防御率が向上して、例年以上に「投高打低」の印象はぬぐえない。実際、プレーする選手も「飛ばない」と実感しているようだ。

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 シーズンが開幕してもうすぐで1カ月。球界でささやかれているのが「昨年よりもボールが飛ばないのではないか?」という話題だ。野球の華とも言われるホームラン数は、今季開幕から一回りの5カード終えた時点でセ、パ両リーグ合わせて66本(セ=32本、パ=34本)。昨年の98本(セ=51本、パ=47本)と比べて3割以上減少している。中日の立浪和義監督も11日の取材で「日曜(7日)も12球団で6試合やってホームランは1本。どう考えても飛ばないでしょ」と私見を述べている。

 実際にグラウンドでプレーしている選手はどう感じているのか。一昨年の三冠王であるヤクルト・村上は「僕も(飛ばないと)感じていますね」と率直な感想を口にする。「打感とか打球速度と飛距離がちょっと比例していないところがある」。今季は第1号を放つまでに開幕から13試合、54打席を要した。ただ球界随一のホームランバッターはここ4試合で3本塁打。「その(飛ばない)中でも打球に角度がついてしっかり当たればスタンドに入る。そこにフォーカスしてやっていきたい」と対応している。

 選手が“違和感”を感じるのは打席の中だけではないようだ。DeNA・牧は「味方の打球にしても、守っていても『その打球が定位置なのか』というのは何回かあります」と話せば、日本ハム・万波も「外野を守っていて、特にレフトへの打球は『これはいったかな』っていうのが外野フライということはある」。ただ、もちろん明確な数値的な裏付けがあるわけではない。「本当にどうなのかは分からない」(牧)、「全然断定できるほどの根拠はない」(万波)と口をそろえる。

 NPB公式戦で使用される「統一球」は2011年に導入され、当初は極端に“飛ばない”状況が続いた。13年にはボールの飛距離の指標となる「反発係数」が規定値の上限を超えて飛ぶ状態だった「違反球問題」が浮上した。15年にセ、パ両リーグのアグリーメントで反発係数の上限、下限は撤廃。「『0・4134』を目標値とする」と改正され、納品前の規格検査も明記された。

 NPBは今季使用している統一球の規格について「セ・リーグ、パ・リーグのアグリーメントに記載の通りであり、昨シーズンからの変更点はありません」とコメント。製造するミズノ社の広報担当者も「昨年と比べて製造方法、品質管理方法が変わったということはありません」と規格の変更を否定する。

 もっとも“投高打低”の状態は今季から始まった話ではない。昨季までの5年間の本塁打数の推移をみると、19年シーズンの両リーグ計1688本と比べて昨季は1250本と438本も減少。2020年はコロナ禍の影響で120試合制だったことを考慮すると、5年のスパンで見れば本塁打数は減少傾向にある。

 試合前に外野へノックを打つ中日の大西外野守備走塁コーチは「飛ばない気もするけど毎年この時期はこんなもの。また夏には打ち始めるよ」と打者の状態が上がり、乾燥してボールが飛びやすくなる季節的要因にも言及する。今後の試合でホームラン数がどうなっていくのかにも注目が集まりそうだ。