【リスボン=ルイス・バスコンセロス】フェラーリF1から今季限りで放出されるカルロス・サインツ(29)=スペイン=が、来季のメルセデス入りへ傾いているようだ。アウディ(現在はステーク名義)の複数年契約オファーへの返答を保留し、「勝てるチーム」を切望するものの、レッドブル移籍の道はほぼ絶望的に。残るはかつての王者チーム、メルセデスで、2年契約を結びたいところ。だが今は、たとえ単年契約でも受け入れ、ドライバー人生を賭けた勝負に打って出る可能性もある。

 サインツの最優先事項は、はっきりしている。最近も「今後数年間はレースに勝ち、チャンピオンを争うために、できるだけ競争力の高いクルマに乗りたい」と明言。寄り道をして、キャリアの最盛期を無駄にする暇はない。

 その言葉を行動でも示している。ステークF1を運営するザウバーを完全買収し、2026年からF1に新規参入するドイツの自動車メーカー「アウディ」から複数年契約をオファーされ、4月中の回答を求められたものの保留。26日にハースからの来季加入が発表されたニコ・ヒュルケンベルグとは対照的だ。

 サインツのターゲットは、ともに1枠の空きがあるレッドブルとメルセデス。両チームの代表とは会談を繰り返してきたが「チームの意向と判断を待たないといけない。自分で決められる立場じゃないんだ」と認めるように、決して立場は強くない。

 まずレッドブルの門戸は閉ざされつつある。昨季は不振に陥ったセルジオ・ペレスが、今季は開幕から安定感を発揮。王者マックス・フェルスタッペンに従う「ナンバー2」の地位をついに受け入れ、契約更新をほぼ手中に収めた。残されたチャンスは、28年まで契約を残すフェルスタッペンが早期離脱を決断するという、非常に可能性の低いシナリオぐらいだ。

 ただ、一方のメルセデスも状況は芳しくない。トト・ウルフ代表は、最も欲しいフェルスタッペンの動向をにらみつつ、秘蔵っ子のF2ドライバー、アンドレア・キミ・アントネッリを26年から抜てきする余地を残しておきたいからだ。

 こうなると、サインツは希望する2年契約を断念し、単年契約のオファーを受け入れざるを得ないかもしれない。その場合、現レギュラーのジョージ・ラッセルとの生き残りを懸けたチーム内バトルが待ち受ける。それでも、現状の「勝てるチーム」の空席を考えれば選択の余地はなさそう。中団チームへ移るよりは前向きとみられる。