日米の球界で活躍した松井秀喜さん(49)=ヤンキースGM付特別アドバイザー=が5日、故郷の石川県能美市で開かれた野球教室に参加した。元日に発生した能登半島地震で被災した子どもたちに大きなホームランを披露し、勇気づけた。

 現役時代、日米通算507本の本塁打を放った松井さん。「今日はやはりどうしてもホームランを見て帰ってほしかった」。恒例となっている打撃のデモンストレーション。昨年11月の東京・八王子、2月の宮崎で行われた教室では柵越えゼロ。この日、本塁打にこだわった理由は、復興への一歩を後押しするためでもあった。

 未就学児の教室では26スイング目、小学1〜4年生の野球・ソフトボール経験者の教室では10スイング目にそれぞれアーチ。両翼92メートルの右翼フェンスを越えると、子どもたちは「おぉーっ」と大喜び。「今日は出るまで打とうと。やっぱり目の前でホームランを見るって、少しはテンション上がると思うんですよね」。明日へのエネルギーに。松井さんから子どもたちへ、野球を通した何よりのエールとなった。

 小学生のころ、たびたび訪れた自身の記憶に残る能登の風景が変わってしまい「初めはショックだった」と松井さん。「私は皆さんの頑張る姿を応援するしかできないけど、一歩ずつでも前に進み、皆さんにとって将来が良い形になっていってほしいなと願ってますし、その姿を応援したいと思う」と語った。

 津波でグラウンドや練習道具が流され、3カ月間練習ができなかったという能登町小木小学校の河崎太一君(9)は「本塁打が見られて良かった。松井さんが投げたボールもしっかり打ち返せた」と満足げ。地震で野球をすることをあきらめる瞬間もあったというが、「これからも頑張りたい」と意気込んだ。

 MLBジャパンの主催する未就学児向けの教室「PLAY BALL」は石川県内では初開催。また午後からは、松井さんが設立したNPO法人「松井55ベースボールファウンデーション」が県内で2022年秋以来となる教室を開いた。能登地方の子どもたちを中心に合わせて約150人が参加し、「こどもの日」に夢のひとときとなった。

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【松井さん一問一答】

―教室を振り返って

「まず子どもたちが大変元気だったのが一番うれしい。今日来られた子どもたちの中には被災された方もいる。そういう子どもたちに明日からの新たなエネルギーができたのであれば一番うれしい」

―子どもたちの笑顔から何を感じたか

「子どもたちのエネルギーがひしひしと伝わってきたし、今日来た子どもたちにとって特別な1日になったのであれば、それが一番自分の喜びでもある」

―打撃も披露した

「今日はやはり、どうしてもホームランを見て、帰ってほしかった。普段だったら、もう止めてるスイング数なんですけど…。今日は出るまで打とうと思った」

―故郷の石川県が被災してどう感じたか

「初めは、能登の自分の記憶に残ってる町並みが、かなりひどい状態になってましたんでショックだった。野球に興味がある子にはもちろん、今後も続けていってほしいなと思う。まだ前向きになれない子どももたくさんいると思いますが、自分の好きなことに没頭することは、どういうことでも大切なことだと思う」。

―子どもたちや県民にメッセージを

「今まだ大変な生活を強いられている子どもたちもたくさんいると思うけど、一歩ずつでも前に進んで。私はその姿を応援するしかできない。皆さんにとって将来が良い形になっていってほしいなと願っているし、その姿を応援したい」

―今後も石川で教室は

「もちろんもちろんチャンスがあればやりたいなと思う」