◇24日 阪神0―1巨人(甲子園)

 巨人の戸郷翔征投手が自身初のノーヒットノーランを達成した。レギュラーシーズンでは昨年9月9日にロッテ戦で達成した山本由伸(当時オリックス)以来、史上89人目(101度目)。巨人の投手によるレギュラーシーズンでのノーヒットノーランは、2018年7月27日に中日戦(東京ドーム)で達成した山口俊以来。ポストシーズンでは同年10月14日のクライマックスシリーズのヤクルト戦で菅野智之が記録している。戸郷は今季4勝目。

 123球目。9回2死二塁、カウント1―2で戸郷が決め球に選んだのは「僕の一番の持ち味」というフォークだった。外角低めへと鋭く落ちていく”伝家の宝刀”に中野のバットが空を切ると、背番号20はマウンド上で雄たけびを上げてガッツポーズ。「今までやってきたことは間違いじゃなかった」と力を込めた。

 最速152キロの直球でカウントを取り、追い込んでからは切れ味抜群のフォークやスライダーを低めに決めていく。お手本のような投球でアウトを重ねていった。ノーヒットノーランを意識し始めたのは「7回から。回を追うごとに(チームメートが)静まり返っていくから」と笑いを交えて振り返った。

 最終回は試練の連続だった。先頭は、昨季対戦で16打数9安打と打ち込まれた木浪。フルカウントからフォークを見極められ、この試合初めての四球を出したが、ロースコアだったことが幸いした。「1―0だったからこそ集中力が増した」とギアを入れ直した。

 次打者の小幡には3球目にバントで一塁のライン際に転がされるも、守備陣が見送った打球はぎりぎりラインを割ってファウル。小幡は4球目を投犠打とし、まず1死を取った。続く近本にはカウント2―1から高めに浮いたフォークを捉えられたが、痛烈な当たりは一塁の岡本和の正面に飛んでアウトに。運も味方に付けた。

 初の開幕投手を任された今季は好不調の波が大きく、前回登板した17日の広島戦(マツダ)は制球が安定せずに5回2失点で黒星。「中継ぎにたくさん迷惑をかけたんで、今日くらいは完封したい」と気合を入れた一戦で最高の結果を出した。「自主トレから思った通りにいかず、ここまで正直苦しかったけど、多少報われたかな」とほっとした表情を浮かべた。

 巨人の投手が甲子園でノーヒットノーランを達成したのは、史上第1号でもある1936年の沢村栄治以来、88年ぶり、2度目。

 「今日だけは余韻に浸りながら、たくさんお肉を食べたい」。純真さをのぞかせる24歳は、偉大なエースへの道を着実に歩んでいる。