5月1日にリリースとなる伊藤美来の12thシングル「Now On Air」。表題曲は、放送中のテレビアニメ『声優ラジオのウラオモテ』のオープニング主題歌にもなっており、本作ではデビュー当時からグループやユニット活動を共にしてきた豊田萌絵とダブル主演を務めている。今回、楽曲に込めた想いのほか、改めて2人の“リアルな関係性”について語ってもらった。
■「みんなと一緒に進んでいきたい」という気持ちとシンクロした一曲
――表題曲「Now On Air」は伊藤さんが主演を務めるテレビアニメ『声優ラジオのウラオモテ』のタイアップ曲にもなっていますが、楽曲の第一印象は?
伊藤:予想以上にメロディーラインがしっかりしていて、爽やかだけど少し切なく、夢に向かう中の辛さや怖さも含めたメッセージ性を感じました。キャラクターの芯の強さを表現しつつ、「一人では難しいことも、みんなと一緒なら乗り越えられる」という想いが込められていて、『声優ラジオのウラオモテ』の主題歌としてぴったりなだけではなく、私自身のアーティスト活動の根幹にある「みんなと一緒に進んでいきたい」という気持ちともシンクロしていたので、このタイミングでこの楽曲を歌えることはとても嬉しかったです。
――とくにお気に入りのフレーズは?
伊藤:「そんなに遠く行くな、夢 どんなに遠くもたどり着くよ」というDメロのフレーズがメロディーラインも含めてすごく好きなんです。夢って、時に遠く感じたり、突然近く感じたりするもので、その夢に向かってもがきながら手を伸ばす強い意志がこのフレーズから感じられて、とくに心に響きました。
――アニメで伊藤さん演じる由美子は高校生ながらも声優としての夢を追っていますが、伊藤さんご自身のキャリアとも重なる部分がありますよね。
伊藤:そうですね。事務所のオーディションに合格して初めて現場に行ったとき、すべてが希望に満ちていたところから、由美子のように厳しい現実を突きつけられ、自分が思い描いていた夢がすごく遠くに感じることがあったり。だからこそ必死にもがくんですけど、「遠くに行くな」と思えば思うほど、その道のりがより険しいものに感じられて。
――そんな夢の途中で心が折れそうなときに寄り添ってくれる応援歌のようにも感じました。
伊藤:歌詞の中に困難を乗り越えて前へ進むための力強いフレーズが散りばめられているので、「もう無理なんじゃないか」と夢を諦めかけている方にも、共感しながら聴いていただけたら嬉しいです。
――また、本楽曲は3月30日に開催された「ANIMAX MUSIX 2024 SPRING」がライブ初披露となりましたが、歌う際に意識されていたことはありますか?
伊藤:いつもながらフェスでの突然の初披露でしたが(笑)、歌詞のメッセージ性が非常に強い楽曲なので、その一言一言を大切に観客のみなさんへ届けたいという想いでステージに臨みました。歌うときも私のリアルな感情を込めながら、歌詞がしっかりと伝わるように、口を少し大きく開けることで言葉がはっきりと出るように心掛けています。
■声優としてのリアルな姿を映したMV
――作詞のつむぎしゃちさん、作曲の夢見クジラさんとは何かお話されましたか?
伊藤:レコーディングが雨の日だったのですが、お2人ともビシャビシャになりながら駆けつけてくださって。勝手に申し訳ない気持ちになりながら「すみません!」って言った記憶があります(笑)。
――雨女ぶりを発揮してしまいましたか……(笑)。
伊藤:はい……(笑)。でも、お2人とも本当に優しくて、曲作りの過程でも原作の内容を勉強されたうえで「美来さんに歌ってもらうことを意識して作りました」と言ってくださり、とても嬉しかったです。あとは「お寿司の好きなネタ」について雑談してました。しゃちさんもクジラさんも海の生き物のお名前なのに……と思いながらも(笑)、楽しい時間でした。
――たしかに(笑)。また、今回のMVはアフレコや撮影現場、ライブの裏側など、伊藤さんが実際にお仕事をされている様子を覗き見るような映像になっていますが、コンセプトについて詳しく教えてください。
伊藤:『声優ラジオのウラオモテ』が声優のお仕事に焦点を当てた作品ということもあり、
今回初めての試みで、ドキュメンタリー風の映像に挑戦しました。声優としての日常から、作中の由美子たちのように歌ったり踊ったりするライブシーンも含め、私のリアルな姿に密着していただいたので、私としては「撮影した」という実感はまったくなく、「いつの間にかMVができていた」という感覚でしたね(笑)。
――声優さんのお仕事現場は表に出る機会が少ないので、ファンのみなさんにも興味深く見ていただけそうですよね。
伊藤:そうですね。本当にリアルな声優としての私を映し出したMVになっているので、みなさんがどのように受け止めてくれるかすごくドキドキしながらも、「みんなに作品を届けるまでにはこんな過程があるんだよ」という裏側を新鮮な気持ちで楽しんでいただけたらいいなと思いますし、「これが今の私だよ」というメッセージもこのMVを通じて感じていただけたら嬉しいです。
――また、カップリング曲の「らびちゅ」は、リズミカルで口ずさみたくなるような一曲となっていますね。
伊藤:「らびちゅ」は、最初にディレクターさんが「ちょっと痒いような、可愛くて恥ずかしい曲って、今さらだけどいける?」という提案をしてくださって、私も二つ返事で「歌いたいです!」と始まった楽曲で、作詞作曲の佐野仁美さんがオシャレで可愛くてキャッチーな一曲に仕上げてくださって。今の私が青春全開のこの曲を歌ってみなさんにキュンとしてもらえるだろうか……というドキドキはありますが(笑)、やっぱり恋をしているときの甘酸っぱさや、妄想が妄想を呼んで盛り上がっちゃう感じというのはいつの時代にも必要だろうと、思いきって挑戦した楽曲です。
――日常の恋模様から将来に飛躍した妄想まで、「THE 女の子の世界観」というか(笑)。
伊藤:私と佐野さんは年齢が近いので「こういうの少女漫画であるよね!」みたいに共感し合える部分が多かったんですけど、ディレクターさんや男性スタッフの方は「コンビニのアイス半分こしよ」みたいなシチュエーションにあまりピンときていなかったのも面白かったです(笑)。
■小さい頃から知っていて何でも言える“幼馴染”のような感覚
――『声優ラジオのウラオモテ』では豊田萌絵さんとダブル主演ということで、改めて2人のリアルな関係性についても伺いたいのですが、初対面のとき、たしか豊田さんがすごい帽子をかぶってきたんですよね?
伊藤:事務所の研修生の顔合わせの場に、萌絵さんが真っ白のワンピースに“大麦わら帽
子”をかぶって登場するという衝撃の出会いからここまで一緒にやってきました(笑)。
――喧嘩することはないのですか?
伊藤:喧嘩らしい喧嘩はないですね。グループやユニット活動の中でぶつかることもありそうなものなんですけど、お互いの意見を尊重したり、得意分野がわかっているので「ここは萌絵さんにお任せしても安心だな」とか、逆に「ここは美来が得意だから任せよう」みたいなコミュニケーションが自然とできているからこそ、あまり衝突することがないのかもしれません。
――『声優ラジオのウラオモテ』のインタビューでアフレコ現場の様子について伺った際、柚日咲めくる役の東山奈央さんも「タイプの違ういい座長が2人いた」と仰っていましたが、本当に相性のいいコンビというか。
伊藤:そうですね。萌絵さんは場の雰囲気を作るのがとても上手で、先輩たちとも分け隔てなく会話をすることで、リラックスした空気感にしてくれるんです。とくに私の場合は、セリフ量が多いときやシリアスなシーンがある現場では集中して台本と向き合っていることが多いので、萌絵さんが和らげてくれた雰囲気の中で「うんうん」と反応できるところで会話にまぜてもらったり。だから萌絵さんには本当にいつも感謝していますし、東山さんが「現場で多くは語らずとも台本と向き合っていて、この人の背中を応援しようと周りが支え、内側からみんなのやる気を引き出してくれる座長」と、私のことも見てくださっていたのはすごく嬉しかったですね。
――素敵な関係性ですよね。感覚としては姉妹、もしくは、親友のような感じなのですか?
伊藤:小さい頃から知っていて何でも言える“幼馴染”のような感覚かもしれません。お仕事で会ったり、同じ番組もやっているので、友達みたいに「ご飯行こう」とか「遊ぼう」と誘うことも全然なくて。それでも当たり前のように喋っていられる、すごく安心感のある存在です。
――豊田さんのとくに好きなところは?
伊藤:萌絵さんは何でも褒めてくれるんですよ。「美来の今日の私服可愛い」とか「めっちゃいいバッグだね」とか。見た目の部分以外でも「そのツッコミ欲しかった!」とか。そういうことをちゃんと言葉にしてくれるので、すごく嬉しいんです。しかも私だけではなく、周りの人のこともしっかり見て同じように褒めたりしているので、「みんなが友達になりたい人ってこういう人なんだろうな」って思いながらいつも見ています。『声優ラジオのウラオモテ』で萌絵さんが演じている千佳とは性格が真逆なんです(笑)。
――逆にちょっと直してほしいところは?
伊藤:あまりないんですけど、強いて言うならば、占いや都市伝説が好きなところですかね。私は将来起こるかもしれない危機とかを心配し過ぎずに生きていきたいタイプなので、萌絵さんからの助言を聞くと、逆にヒヤヒヤしてしまうんです。本人は善意の塊なんですけどね(笑)。
――Pyxisとしてのユニット活動の中で、一緒に乗り越えたことは?
伊藤:たくさんありますが、とくにライブに関しては一緒に乗り越えてきたと思います。Pyxisとしてユニット活動を始め、1stシングルをリリースしてから少ししたタイミングで「アニサマ」に出演させていただいたのですが、その頃は知名度もほとんどなく、2人ともすごく緊張していて。リハーサルも震えながらやっていたのですが、そのときに歌ったのが「FLAWLESS」という楽曲で、振り付けが背中合わせになっていることが多い曲なんです。本番でリフターから登場してさいたまスーパーアリーナの景色が見えた瞬間、またびくってなりつつも、「後ろに萌絵さんがいるから大丈夫だ」と思えて、パフォーマンスをすることができました。
――その後ソロアーティストとして初めて「アニサマ」の舞台に立ったとき、心細く感じることもあったり?
伊藤:そうですね。一度立ったことのある舞台のはずなのに、全然違うもののように感じられて「うわ、一人で立つところじゃないな」って思いました(笑)。やはりあのとき乗り越えられたのは萌絵さんがいたからだったんだと実感しました。
――この記事の中だから伝えられる豊田さんへのメッセージはありますか?
伊藤:萌絵さんがいつも本当に楽しそうに日々を生きているからこそ、同じ現場で会ったときに私もすごく楽しい気分でお喋りして安心させてもらっています。おばあちゃんになるまでどうかずっと幸せに、自分らしく、やりたいことを追い求めて生きてください。
――最後に『声優ラジオのウラオモテ』にちなんで、ツンツンVer・可愛くVerの2パターンでファンのみなさんへメッセージをお願いします。
伊藤:ツンツンVer「あんたたちが好きそうな曲を私たちが一生懸命作ったんだから、まあ、聴かなくてもいいけど、聴いたほうがいいと思うよ。本当に聴いてくれなかったらどうしよう……ぜってぇ聴いてくれよな!」
――あれ、悟◯?(笑)。続いて、可愛くVerを。
伊藤:可愛くVer「みんなと一緒に夢を叶えたいから、この曲を作ったの。これからもずっと一緒にいてね。君と365日、笑って過ごしたいな……キュピン!」
――ありがとうございます(笑)。
伊藤:歌詞の中にヒントがあって助かりました(笑)。
――ちなみに、最後の「キュピン!」はどこから?
伊藤:「キュピン!」は私のオリジナルです(笑)。みなさん、ぜひ聴いてくださいね!
取材・文・撮影:吉野庫之介
ヘアメイク:大久保沙菜
スタイリスト:川端マイ子
衣装:Jewelobe
伊藤美来12thシングル「Now On Air」は、5月1日発売。
伊藤美来が語る、豊田萌絵との“リアルな関係性” 「小さい頃から知っていて何でも言える“幼馴染”のような感覚」
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