1974年にポピー(現バンダイ)から発売され、今年2月で誕生から50周年を迎えた大ヒット玩具「超合金」シリーズ。国内でも屈指の超合金コレクターが、その魅力を語った。

骨董品の域

 超合金の魅力に取りつかれ、大人になってからその収集を始めたというのが、コレクターで「超合金鑑定士」を名乗る小材直由さんだ。

「1974年から80年までに『マジンガーZ』だけでも4種類のバリエーションで発売されました。そのバリエーションの多さは人気の証明。第1期のものは完品なら200万円いじょうのプレミア値が付くほどでコレクター泣かせです」

 第1期のものは肩正面のボタンを押すと、ロケットパンチが飛び出す装備となっており、それも魅力だが、完品が少ないのも、この装備のせいという。

「ロケットパンチを飛ばすとけっこう飛んで行ってしまって。遊んでいるときに、パンチがどこに飛んだかわからなくなったまま、片付けられて。そういったものは、本体が残っていても、手の部分がないまま、というケースがよくある」

 さらに「1期と2期の間には、背中のボタン(胸部ミサイル発射ギミック)をシールで隠したという、1・5期と呼ばれるものもあって。そうしたバージョン違いを揃えるのは難しく、コレクター泣かせたるゆえんとなっていて。私にとってはもはや骨董品の域ですね」とも付け加える。

危険だった?超合金

 日本玩具協会は1971年、国内で販売される玩具の安全性を高めるため、玩具安全基準を策定し、それを満たしたものの印として「STマーク」制度を創設した。

 当然74年以降に発売された「超合金」シリーズにもこの「STマーク」はついているが、「現在に比べると、まだ基準が甘い面もあったんでしょうかね」と小材さん。

「とがった部品もまだ多いし、合体する『コンバトラーV』などは、相当な重さになるんです。小さなものでも、子供の手に取ればずっしり。これを持って振り回したりして遊んでいたら、危なかったかもしれませんね」と小材さんは苦笑する。

超合金?ウルトラ合金?

 だが、超合金は強烈な人気を誇った。となれば、発売したポピー(当時)以外も指をくわえてみているわけにはいかない。

 だが、一般には普通名詞と勘違いしている向きもあるが、「超合金」はポピー(当時)の、現在はバンダイが引き継いだ登録商標だ。

 亜鉛ダイカスト合金を使った玩具に、他メーカーは「超合金」の名は使えない。

 そこで出てきたのが「強合金」「ウルトラ合金」「重合金」といったブランド。

 さらには「ダイカスト」といったそのままのブランド名もある。数多くのブランドが生まれ、淘汰されていった中で、こうした「超合金」以外のブランドに心くすぐられるマニアもいる。

 もちろん、小材さんもそうしたブランドの合金玩具を収集しており、特に95年以降、玩具の生産現場が海外に移った現状の中、「それ以前のメイド・イン・ジャパンの玩具は文化遺産だと思っている」と話す。

おばあちゃんのデッドストック

 1969年生まれの小材さんが超合金を集め始めたのは20歳ごろ。時は昭和から平成に移り変わっていた頃だ。

 「それ以前は、ガンプラなどプラモデルに熱中していたんです」

 それがなぜ、超合金に?

「当時、埼玉県の鶴ヶ島市 に古い模型屋さんがありまして。そこで見つけた超合金を手に取ってみて、プラモデルに比べると、ずっしりと来る重さで、その魅力を再認識したんです」

 それがきっかけで、この模型店に通うようになり、店主のおばあさんとも親しくなった。あるとき、模型店の倉庫の掃除をすることになり、埃だらけの倉庫に入ると…。

「出てくるわ出てくるわ、箱も美品のままの超合金の『マジンガーZ』などお宝がたくさん。『おばあちゃん、すごいよ』というと、掃除をしたお礼からか、『いいよ、持って行って』と言われて。コレクター人生の始まりでした」

 まだこうしたかつての超合金がヴィンテージものと認識される夜明け前だったという。

3,000体以上…

 子育て期間中に、収集の空白期間はあったものの、30代以降は、超合金を扱ったテレビ番組に出たり、「開運!なんでも鑑定団」にしばしば登場するなど、「超合金鑑定士」としての活動が広く知れ渡ってきた。

 埼玉県富士見市 には3,000体超の超合金などがガラスケース内に所狭しと並ぶ「コレクションルーム」を設置。ルーム内では、自身が集めてきた超合金に囲まれ、至福の時を過ごしている。

 「発売当時のST基準をすり抜けたとがった部品なんかも含め、本当に芸術品的な魅力がある」という小材さん。

 「超合金」のブランドを継いでいるバンダイにも、資料提供などの協力を行いながら、収集家・鑑定士として、今後も超合金に深く携わっていく。

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記事【「超合金」50周年 マジンガーZからドラえもんまで…バンダイの担当者が明かす“知られざる歴史”】では、超合金のこれまでの歩みについて詳しく紹介している。

デイリー新潮編集部