テレビ朝日系連続ドラマ「Destiny」で主演を務める女優の石原さとみ(37)。メインの俳優陣がアラフォーにもかかわらず大学生役を演じていることについて、SNSなどで違和感を表明する視聴者が続出。果たして石原さとみはドラマ選びを間違えたのか……。【冨士海ネコ/ライター】

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 石原さとみさんはかわいいけれど、恋愛ドラマよりもお仕事ドラマで映える人だ。「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」(日本テレビ系)に「アンナチュラル」(TBS系)、「アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋」(フジテレビ系)など、当たり役も多く持っている。でも、手に職があればいいというわけではない。「高嶺の花」(日本テレビ系)や映画「シン・ゴジラ」など、甲高い声でまくしたてる女性役は不評だった。さて、先週始まった「Destiny」(テレビ朝日系)で演じるのは心に傷を負った謎多き検事役。産後の復帰作として注目を浴びているが、初回を見た限りでは不安が残った。

 石原さんの演技以外に、引っかかる箇所が多すぎるのである。最も指摘が多かったのは、メインの俳優陣がアラフォーながら大学生を演じることへの違和感だろう。石原さんと亀梨和也さん、田中みな実さんは1986年生まれ。宮澤エマさんがその二つ下、矢本悠馬さんが最年少の33歳である。亀梨さんも田中さんも宮澤さんも、同世代の一般人よりはとても若く見えるのは確かだ。が、皆さんしっかりしている人ということもあって、年相応の世慣れた感じはぬぐえない。時間経過のあるドラマゆえの設定、あえての話題作りなど、キャスティングに関する報道は続いているが、バーベキューをしながら水鉄砲ではしゃいだりするシーンは、古くさい「陽キャ」演出に見え、見ている方が恥ずかしくなってしまうほどだった。

 また、過去のヒット作のいいとこどりをしようとして取っ散らかっている印象も受けた。「20年の時をかけるサスペンス×ラブストーリー」、被疑者として現れるかつての思い人、家族や友人の不審な死、終盤に差し込まれる人気女性歌手の書き下ろし曲。どれもどこか見覚えがある。そう、ドラマ「最愛」(TBS系)を想起しない視聴者はいないのではないだろうか。

 一方で、亀梨さんや田中さんの役柄は、当て書きしたのかと思うほど現在のタレントイメージをなぞっている。

 亀梨さんは、女性との距離感がやけに近いが、どこか陰がある男。田中さんは、家柄や美貌にも恵まれているが「一番欲しいものが手に入らない」と、金切り声で男性に詰め寄るメンヘラ。思い詰めがちなヤバい女は田中さんの十八番だが、思い出すのは彼女を怪演女優として一躍有名にした「M〜愛すべき人がいて〜」(テレビ朝日系)である。あのドラマもSNSで話題になればなるほど、田中さんのオーバーな演技が増えていった。

 バラエティーでの姿から、田中さんに「重たい」「正論で追い詰める」というイメージを持つ人は多い。さらに今回は事前に亀梨さんと熱愛報道が出ていたこともあり、虚実が分からないような役柄には注目が集まっている。

「M」だけでなく「離婚しない男」も……テレ朝の勝ち筋となったSNS映えする“炎上”演出

「最愛」の見た目なのに、ふたを開けると「M〜愛すべき人がいて〜」が出てくるドラマ。少なくとも初回は、石原さんより亀梨さんと田中さんの関係性に注目がいってしまう構成になっていた。

 それでも、というか、おかげで、というべきか、滑り出しは上々だったようだ。第1話の平均世帯視聴率は7.9%と前クールの「マルス-ゼロの革命-」の初回平均世帯視聴率5.7%超え。Tverでも再生回数ランキングではフジテレビの「366日」に次ぐ2位につけた。放送後Xでは出演者の名前とともにドラマタイトルがトレンド入りした。

 テレビ朝日といえば、1月期ドラマ「離婚しない男」も、篠田麻里子さんの不倫騒動を逆手に取った脚本で反響を呼んでいた。タレントのスキャンダルと地続きの役柄でSNSを沸かせれば勝ち、というセオリーが局内で定着しているのかもしれない。「Destiny」では亀梨さんが見せつけるように服を脱ぐサービスショットもあり、正直なところ「なんだかな」と脱力してしまったのだが。

 サービスといえば、ベタすぎる恋愛演出も気になった。眼鏡をはずすと美人なヒロイン、偶然目の前に広がった星空に感動からのキス、キャンパスを泣きながら突っ切る恋敵。ひと昔前の少女マンガのような展開は、あまりに堂々と出されると恥ずかしい。

 視聴者は好きでしょ、芸能人のうわさとかマンガみたいな恋愛とか――それは否定しないが、振りかざされてはへきえきする。謎解きやストーリーよりも話題性という姿勢が透けて見えると、ちょっとモヤっとするのは私だけではないはずだ。

アラフォーの今もかわいらしい容姿だが……ラブコメよりドライな役柄が似合うという意外な強み

 一方で、石原さんが話題性に全く貢献しないかというとそうでもない。1児の母には見えない美貌に、SNSでは絶賛する
声が集まっている。顔も声も甘口だが、実はラブコメよりもドライな役柄を演じる方がハマるというのも強みではないだろうか。

 彼女を人気女優に押し上げた「失恋ショコラティエ」(フジテレビ系)のあざと女子・紗絵子の小悪魔ぶりは評価が高かった。あれも一種の「職人」技である。目標達成のために冷静に行動し、コミュニケーションの溝を埋めていくというのは、お仕事ドラマのヒロインに近い。

 恋愛において不器用さはかわいげになりうるが、仕事ではそうはいかない。不器用さを開き直られては話にならない。石原さんの演じてきたヒロインは、コミュニケーションで失敗しても、行動できちんとリカバーすることで愛されてきた。虚勢を張りがちで口が先行するヒロインは、ドラマ内では「できる女」という設定でも、視聴者からは「小賢しい」とそっぽを向かれていたように思う。

 第1話では、まだ検事としての仕事ぶりはお披露目されなかった。彼女を取り巻く男性たちとの関係性は、ひと波乱ありそうだ。今後の展開は、ラブとサスペンス、どちらの割合が多いのか。そのバランスに、石原さん、いや「Destiny」の成功は懸かっているのではないだろうか。

冨士海ネコ(ライター)

デイリー新潮編集部