W主演には理由がある

 俳優の篠原涼子(50)が、お笑いタレントのバカリズム(48)とW主演を務めるドラマ「イップス」(フジテレビ系)が4月12日から始まった。初回の世帯平均視聴率は5.8%。同局の金曜午後9時のこの枠がドラマになって3作目となるが、第1作の「うちの弁護士は手がかかる」(ムロツヨシ主演)の初回視聴率(同)は6.9%、2作目の「院内警察」(桐谷健太主演)は7.1%だった。

「かつては、主演ドラマが軒並み高視聴率を叩き出した篠原さんからすれば、苦しいスタートになりました。最近の篠原さんにかつての勢いはなく、このドラマは今後の俳優生命に関わることになる作品になるかもしれません」(放送担当記者)

 ドラマのタイトルでもある「イップス」とは、心の葛藤が、筋肉や神経細胞、脳細胞にまで影響を及ぼし、「できていたことができなくなってしまう」心理的症状。野球、ゴルフ、テニスなのスポーツ選手が、突如自分の思い通りのプレー(動き)ができなくなる症状がよく知られている。

 同ドラマは、イップスに陥って書けなくなったミステリー作家(篠原)と、事件の謎を解けなくなったエリート刑事(バカリズム)がサウナ施設で偶然出会って殺人事件に遭遇。その後、バディを組んで事件を解決していく、ミステリーコメディーのオリジナル作品だ。

 バカリズムはゴールデン・プライム帯(午後7時〜11時)の連続ドラマ初主演。篠原はバカリズムが脚本を手掛けた22年公開の映画「ウェディング・ハイ」で主演を務めており、フジでの連ドラ主演は、同局の看板である月9枠の17年10月期「民衆の敵〜世の中、おかしくないですか!?〜」以来、6年半ぶりとなる。

 バカリズムといえば、最近では脚本・出演を担当した昨年1月期の日本テレビ系ドラマ「ブラッシュアップライフ」(日本テレビ)が第39回ATP賞テレビグランプリなど国内外で様々な賞を受賞し、クリエイターとして高い評価を受けている。

「フジは大会チェアマンを務めていたダウンタウン・松本人志の活動休止に伴い、2月3日に放送された『IPPONグランプリ』で、松本さんの代役にバカリズムさんを起用しました。日テレは、さらにバカリズムさんの脚本作品をオファーしていましたが、フジからのオファーに、『それならおもしろそう!』と、ノリノリでオファーを快諾したそうです。一方で、『ウェディング・ハイ』は当たらなかったのですが、篠原の事務所は業界内での影響力もあり、フジとの関係でいえば、谷原章介さんが『めざまし8』でMCを務め“朝の顔”になっています。事務所に篠原をプッシュされ、主演が決まったそうです」(民放テレビ制作関係者)

もとは苦労人の篠原

 主演ドラマの多い篠原だが、もともとは苦労人だ。16歳の時にアイドルグループ「東京パフォーマンスドール(TPD)」のメンバーとしてデビューするが、なかなかパッとせず。94年、小室哲哉(65)プロデュースにより、4枚目のシングル「恋しさと せつなさと 心強さと」がようやくヒット。売り上げ200万枚を突破し、「第45回NHK紅白歌合戦」に初出場を果たした。しかし、その後はやはりパッとせず…。

 そして俳優に転身。連ドラ初主演作となった「光とともに…〜自閉症児を抱えて〜」(2004年、日本テレビ)で自閉症児の母親役を好演し、05年の単発の主演ドラマ「溺れる人」(日本テレビ)でアルコール依存症の女性役を演じ、その演技が高く評価され「第31回放送文化基金賞演技賞」を受賞したが、このあたりから、俳優業としての快進撃がスタートすることになる。

「05年4月期の日テレ系ドラマ『anego[アネゴ]』で、「アネゴ」と呼ばれる頼れるOL・野田奈央子役を好演。相手役の赤西仁は当時、KAT-TUNのメンバーとして人気だったこともあり、全10話の平均世帯視聴率は15.7%を記録しました。翌06年1月期のフジ系『アンフェア』ではバツイチ子持ちの敏腕刑事役が見事にハマり、全11話で平均視聴率15.4%を記録。その後、10年にわたってシリーズ化。劇場映画版も公開されヒットしましたが、主演作を立て続けに当てた事で、すっかり俳優としての地位を確立しました。07年には特Aランクのスーパー派遣社員・大前春子役を演じた日テレ系『ハケンの品格』が全話平均20.1%、最高視聴率は最終回26.0%を叩き出し、“視聴率女王”の座をゲットします」(テレビ専門誌記者)

 映像作品と並行して舞台でも演技力を磨き、本人のイメージに合った作品選びであまり間を開けずに主演ドラマをこなす――事務所の戦略は見事に当たり、俳優業が軌道に乗ると、01年に舞台「ハムレット」で共演した俳優の市村正親(75)と05年に結婚。08年に俳優として活動する長男の市村優汰(15)、12年に次男を出産する。

 仕事の面でも主演作を重ね、彼氏いない歴10年の恋に不器用な39歳独身の「おやじ女子」を演じた13年4月期の系「ラスト シンデレラ」(フジ系)は全11話平均15.2%と当たったが――勢いはここまで。このあたりから“落ち込み“が目立ち始めるのである。

「いずれも主演作だが、15年10月期のフジ系『オトナ女子』の全10話平均が8.7%、そして、17年10月期のフジの月9枠『民衆の敵〜世の中、おかしくないですか!?〜』は全10話平均で6.7%。特に最終回の4.6%は、現在までの月9史上のワースト記録です。

 主演映画『SUNNY 強い気持ち・強い愛』(18年)、『人魚の眠る家』(同)の興行収入はヒットの基準である10億円ほどだったのでまずまず。20年6月から日テレで『ハケンの品格』の続編が放送され、全8話で12.7%。悪くはない数字ですが、前作に比べると物足りない数字でした」(先のテレビ専門誌記者)

ここでコケるわけにはいかない

 この“凋落”の原因は何か?

「もともと、それほど演技に深みがあるわけではなかったので、年々、篠原さんの演技が飽きられてしまったのだと思います。本人はシリアスでもコメディーでもイケると思っているようですが、もともと、演技のトレーニングを受けていたわけでもないので、そこまで演技の幅は広くないのが徐々に露呈してしまいました。若いころは『かっこいい大人女子』的な役がズバリとハマりましたが、年齢を重ねるにつれ、その路線も難しくなってきました。『民衆の敵』では、普通の主婦から市議会議員になる役を演じましたが、どうもリアリティーに欠けていました。篠原さんに合っていない役の作品ばかりを選んでしまっているような感じがしてなりません」(同)

 大ブレイクしてからは主演作ばかりだったが、今後の女優としてのキャリアを考えての“保身”からか、20年度後期のNHK連続テレビ小説「おちょやん」、社会現象を巻き起こしたフジ系の連続ドラマ「silent」では、脇役でのオファーを受けている。そして、21年7月、篠原のイメージを決定的に覆してしまう“大事件”が巻き起こった。

「市村との離婚を発表しましたが、2人の息子の親権は市村が持つことになりました。その原因として、複数のメディアが、K-POPグループのメンバーら複数の男性と篠原の不倫疑惑を報じ、これによりイメージはさらに急落しました。離婚後にトーク番組に出演した際は、子どもたちの食事を作っていることなど、良好な家族関係をアピールしていましたが後の祭。タイミングが悪いことに、22年2月から不倫に溺れる人妻役を演じた主演作『金魚妻』がNetflixで配信されましたが、まったく話題にならなかった」(先の芸能記者)

 昨年10月期、テレビ東京系で山崎育三郎(38)とW主演したドラマ「ハイエナ」で、勝利のためなら手段を選ばないことから「ハイエナ」と呼ばれるアウトロー弁護士を演じたものの、ゴールデン帯(午後7時〜10時)の放送にもかかわらず、視聴率が2%台を記録するなど、民放キー局の同クールの連ドラでダントツの最下位に沈んだ。

「篠原さんの所属事務所は、今や後輩の芳根京子さんを猛プッシュしています。もし、『イップス』が当たらなければ、今後、主演のオファーがまた来るのか、脇に回らざるを得ないのか。これまで何度も窮地から這い上がってきた彼女にとって、俳優人生での大きな分岐点になりそうです」(先のテレビ局関係者)

デイリー新潮編集部