フジテレビの人気番組「ザ・ノンフィクション」の“婚活回”が大いに反響を呼んだ。「令和の婚活漂流記」というサブタイトルからもお分かりのように、昨今の婚活市場は大きな過渡期にある。そんな状況下で自分自身の、あるいは我が子・我が孫の結婚を成就させたいと願うなら、何をどうすればうまくいくのか。この出会いの季節、番組でも注目された婚活アドバイザーに「コスパで見る婚活戦略」について訊いた。

 ***

高まる“結婚難易度”

「晩婚化」が指摘されて久しい。2021年に行われた人口動態調査の報告によれば、1995年の平均初婚年齢が男性28.5歳、女性26.3歳だったのが、21年にはそれぞれ31.0歳、29.5歳にまで上昇している。女性の社会進出が進んだり、若年層の価値観が多様化したりしたこと自体はポジティブな変化と言えようが、

「そのような社会背景によって、結婚がかなり難しい時代になっていると思います」

 そう指摘するのは、婚活アドバイザーで、結婚相談所マリーミー代表を務める植草美幸さん。この2月の「ザ・ノンフィクション 令和の婚活漂流記2024」で大きな話題を呼んだ“あの人”である。15年以上にわたって婚活支援に従事し、成婚率80%以上を誇るというプロは、現状をどう見るか。

「人生設計の立て方や価値観が多様化したことで、結婚相手に求める“条件”がより厳しくなってきました。さらに若い人たちが『今はそんなに早く結婚しない時代だから』と仕事に打ち込んでいるうちに、出会いの機会も減っていく……。こうして“結婚難易度”が高まっているのが昨今の婚活市場ではないでしょうか」

 それに拍車をかけるのが、若年層の「コミュニケーション能力の低下」だという。

「スマホの普及によって個々人と簡単にやりとりができるようになったことで、『後でいつでも連絡できる』『ラインの方が楽』という状況が生まれ、かえって異性に対する積極性や、そもそも向き合って話す機会が減ってしまった。昔は何とか自宅の電話番号を聞き出し、いざかけてみたら親御さんが出て……だけど仲を深めるにはそれしか手段がない、なんて状況でしたからね。それに比べて、今は状況が恵まれたがゆえにコミュニケーション能力が低下し、恋愛に苦手意識を持つ人が増えてしまったような気がします」

 多かれ少なかれ、自分自身に、あるいは我が子・我が孫に心当たりのある向きも多いのではないだろうか。

“スタートライン”に立つために

 しかし、「結婚したい」という気持ち自体が失われているわけではあるまい。では、ハードルが高くなるばかりの婚活市場を、どのように攻略していけばいいのだろうか。日頃から「自己投資」の重要性を説く植草さんに、効果的なお金のかけ方、つまりは「コスパの良い婚活戦略」について尋ねてみた。

「まずは一番の課題である“コミュニケーション能力”をつけるために……と言いたいところですが、実は婚活において第一に重要になるのは、“外見”です。あまりにも太っていたり、身だしなみがだらしなかったりしたら、どんなに人柄が良くても、そこを見られる前にアウト。スタートラインにさえ立てないのが現実なんです。逆に、当会の会員さんで成婚に至った方の外見は、入会時に比べ良い意味で別人。もちろん価値観が合う人を探すこともすごく重要なのですが、それはその先の話です。『中身を見てほしい』と思う人こそ、まずは外見を磨くべきだと思います」

 植草さんといえば、「ザ・ノンフィクション」の中で会員に向けた「顔見て決めないでね。顔はついてればいいからね」という“名言”がネットで大きな話題を呼んでいたが、

「ちょっと強い発言が注目されてしまいましたね……(苦笑い)。あくまでも外見にとらわれすぎず、相手の中身を見る努力をしましょうということです。とはいえ、最低限の清潔感や身だしなみがない人とは会おうとは思えないでしょうし、むしろ“高望み”してしまうのが人間の性。だからこそ、まずは自分自身が“選ばれる側にある”という意識を持つことが重要です」

男性の色気は「手首、喉ぼとけ、眉毛」に

 その上で、外見を整えるためのお金のかけ方については、こうアドバイスを送るのだ。

「男性の場合、清潔感に対する自己投資は惜しんではいけません。髪型を整えるのは言うまでもありませんが、肌をお手入れしたり、人によっては脱毛に通ったりするのも当たり前の時代です。鼻毛が出ている男性は本当に多いんですけど、これは論外ですからね!その上で、体に合ったスーツを持っていない方は、必ずそろえておきましょう。相手に誠意を伝えられる正装であり、また清潔でおしゃれにも見えやすいので、初対面の女性に良い第一印象を与えるために絶対に必要です。なにも高いものである必要はありません。サイズ感が合っていて、キレイに着られてさえいればいいのですが、意外にできていない人は多いと思います」

 そしてこんな視点からの話も。

「特に男性の色気が出るのは、手首、喉ぼとけ、眉毛の3点。ここが綺麗になっていると印象は格段に良くなりますし、その逆もまた然りです。手首という意味では、時計も重要ですね。高いものでなくてもいいので、SEIKOの定番品など、カジュアルすぎず、ある程度高級感のあるものにしましょう。それから意外に大事なのは、『手』です。初対面でも案外目につく部分であるものの、きちんと手入れをする男性は少ないですし、爪が伸びきっていたりすると途端に不潔感が出てしまいますから、注意が必要です」

女性の自己投資ポイントは

 では女性の場合はどうか。

「男性よりも身だしなみに気を配っている方が多いですが、鏡をよく見ないでメイクをしている方は、産毛や鼻毛、伸び切った眉毛などに気づいていない方も意外に少なくないので、要注意です。そして女性が投資すべきといえば、メイクですね。やり方次第で何歳も若く見えるなど、印象を格段に変えられる手段ですから、自然に明るく見せられるメイク術などは、お金を払ってでも学んでおくと良いと思います。やはり人柄を見てもらうためにはまずは外見。何も努力をしないで『本来の自分の姿を見てほしい』などと言っていると取り残されてしまいます」

 外見への投資という意味では、こんな意外な方法もオススメできるという。

「いわゆる“プチ整形”なら問題ない時代だと思います。例えば、ヒアルロン酸の注射でほうれい線を消したり、切らずに二重にしたりするのは、今は多くの方がやられている美容法です。逆に言うと、それくらい外見を意識することが重要だということですし、コンプレックスがあって自信が持てないくらいだったら、チャレンジしてみるのも全然アリだと思います」

 内面を理解してもらうには、まずはスタートラインに立ってから。それだけ外見への投資が重要であると説くのだ。

「外見上の改善点は、なかなか自分では気づけないことも多い。その意味で、我々のようなアドバイザーに相談するのも一つの手ではあるでしょう」

 そうした前提の上で、「出会いの機会を増やすための投資」の価値についても、注意点を交えながらこう話す。

「飲食店やイベントの場にできるだけ顔を出したり、オンラインで出会えるサービスを試してみたりするのも良いことではあるでしょう。ただ、そこで積極的にコミュニケーションがとれるかというのはハードルになりますし、一見効率が良さそうなマッチングアプリも、結婚を目的とするなら難易度が高いかと思われます。アプリ上では年収や経歴、家族構成などの証明がない中で相手を見極めなければならない上、その中で『結婚観が合う人と出会いたい』となると、かなりのコミュニケーション能力が必要になってきます。“婚活”としての色を打ち出すところも出てきているとはいえ、あくまでも“恋愛ツール”である点は、当会のような結婚相談所とは異なる点だと思います」

 婚活におけるお金の使い方も、見極めが必要な時代のようだ――。

デイリー新潮編集部