12日に現職の小池百合子氏が出馬表明した東京都知事選(7月7日投開票)。自民党東京都連が小池氏を支援する方針を決めたことで、「反自民政治、非小池都政」を掲げる立憲民主党・蓮舫氏との全面対決は避けられない情勢だ。ところが「無所属」での立候補を表明した蓮舫氏への共産党による“異例の囲い込み”戦術が早くも波紋を広げているという。

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 共産党がフライング気味に作成した蓮舫氏の「応援ビラ」が話題となっているが、さる立民関係者は苦虫を噛みつぶした表情でこう話す。

「蓮舫氏が『無所属』での出馬を表明したのは“オール東京”で戦うため、政党色をできるだけ排除したかったから。しかし“応援ビラ”に注目が集まり、共産党へのアレルギー反応が都民に広がることが懸念され始めている。これでは『立憲共産党』と揶揄されても抗弁しづらい」

 問題のビラは、正確には日本共産党東京都委員会の機関紙「東京民報」の号外を指す。紙面の裏表に〈蓮舫参院議員 都政に挑戦!〉〈日本共産党も蓮舫さんを全力で応援します〉〈蓮舫さんを都政に押しあげ〉などの勇ましい言葉が躍る。また同じ紙面で紹介された「子どもの国民健康保険料をゼロに」や「若い世代への月2万円の家賃補助」といった共産党の施策が、まるで蓮舫氏の「公約」と見紛うレイアウトにもなっている。

 立憲民主党本部にビラ作成の経緯や感想を訊ねると、こう答えた。

「(ビラ作成に関して)党としては承知しておりません。また他党の作成したビラについて見解を述べる立場にはありません」(報道担当)

「6月4日」にビラ完成

 蓮舫事務所にも同じ質問をしたが、「(ビラの存在は)事後的に承知しました」との答えだった。蓮舫氏が出馬表明したのは5月27日だが、すでに同ビラを6月6日に目にしていた永田町関係者がこう話す。

「蓮舫氏の出馬表明を受け、すぐに作成に取りかからないとこんな短期間ではつくれない。蓮舫氏は今回、“完全無党派”を謳って離党を想定しているため、立憲民主党として蓮舫氏の選挙ポスターやビラは作成しない方針を採っている。だから共産党としては“良かれ”と思って党本部の頭越しにビラをつくったと伝えられるが、永田町では『立民もナメられたもんだ』との声が上がっている」

 共産党東京都委員会に事実関係を訊ねると、まずビラの作成については「(党本部でなく)東京都委員会の判断で作成」したものだと説明。ビラの完成は「6月4日」だったといい、作成枚数や配布対象については「全ての都民を主要な対象とし、それに必要な枚数を作成」したと答えた。

 作成の意図について訊くと、「日本共産党東京都委員会は今年2月から市民と野党の共闘で都知事選挙をたたかう『候補者選定委員会』に参加し、議論を重ね、選定委員会は蓮舫さんに立候補要請を行ってきました」(広報担当)と、これまでの経緯を説明。

 候補者選定委員会とは、国政選挙での野党連携を支援する「市民連合」とともに立民と共産党が都知事選の候補者選びを協議するために設けた場をいう。出馬表明と同じ27日、同委員会は蓮舫氏の支援を確認し、翌28日の「しんぶん赤旗」に小池晃書記局長と蓮舫氏が仲良く並んだツーショット写真が掲載された。

 さらに立民との“連携”について、共産党側はこう話した。

立民都連から「写真提供」

「(ビラの)発行については事前に立憲民主党都連にはお知らせしてあります。(蓮舫氏の)写真は同都連に提供いただいたものです」(日本共産党東京都委員会・広報担当)

 立民関係者が補足するには「都連としてというより、都連幹事長の手塚仁雄氏の判断で“協力”したと聞いている。蓮舫氏の出馬会見を仕切ったのも、彼女を直接的にサポートしているのも手塚氏で、党本部は追認した格好だった」という。

 前出・永田町関係者の話。

「ビラ作成で立民に恩を売り、知名度のある蓮舫氏を前面に打ち出すことで、結果的に“共産党の勢力拡大に資する”との指摘がある。立民も共産党の集票力に頼らざるを得ない部分があり、強く言えない厄介な力関係に陥っているのでは。ただ共産党が出しゃばってきたことで、国民民主党が蓮舫支援を取りやめるなど、すでに弊害も出てきている。小池さんや自民党が『非共産』を合言葉に“保守VS革新”の対決構図に持ち込めば、蓮舫陣営の勢いも削がれるのでは」

 都知事選が迫るなか、現場レベルでは「立憲共産党」がより深化していくのか。

デイリー新潮編集部