まもなく開幕

 3月29日の開幕を前にして阿部慎之助新監督率いる巨人に衝撃が走った。

 5番候補として獲得したルーグネッド・オドーア外野手が電撃退団した。オープン戦の成績が振るわず(打率1割7分6厘)阪神との開幕戦のメンバーから外してファーム調整を提案したが、本人は拒否して帰国を決めたという。

 何度も話し合ったが、オドーアは契約解除を申し入れたという。当たり前だ。

 これが公式戦で何試合か起用して結果を出せなかったら、その時はファームで調整して欲しい。状態をあげてほしい。こう本人に伝えるのならまだ分かる。だが公式戦で1試合も使わずにヨーイ、ドンで事実上、戦力外とも取れる扱いをした。本人にすればこう受け取る。

 この扱いはおかしい。

 昨年12月、巨人のフロント内から「いい外国人選手が獲得できました」と聞いた。相当期待していた。巨人が「来てください」と頭を下げて迎え入れた外国人選手だ。これでは担当部署も面目丸つぶれだ。

 オープン戦の成績は良くなかったが、日本の投手に慣れればかなりやれると見ていたし外野の守備も悪くなかった。

 今回の件、首を大きく傾げざるをえない。

 さて開幕戦の布陣である。オドーアの退団受けての予想だ。

 1番中堅・佐々木俊輔(日立製作所)、2番遊撃・門脇誠、3番左翼・丸佳浩、4番一塁・岡本和真、5番三塁・坂本勇人、6番捕手・大城卓三、7番右翼・梶谷隆幸、8番二塁・吉川尚輝、そして9番に投手の戸郷翔征だろう。

佐々木の打撃に懸念

 懸案だった1・2番コンビは佐々木・門脇になる。佐々木はオープン戦で規定打席にあと1打席足りず、結果的に度会隆輝(DeNA)に抜かれて首位打者を逃したが、打率4割をマークした。オープン戦とはいえ立派な数字だ。外す手はない。

 守備範囲が広い。足もある(50メートル6秒0)。私、福本豊、近本光司のような1番打者タイプではないが、開幕スタメンとなれば新人野手では2001年の阿部監督以来、23年ぶりだという。楽しみではある。

 2番の門脇は守備では欠かせない選手だし落ち着くところに落ち着いたと思う。

 心配なのは打撃だ。打ちたい、打ちたいという気持ちが先に立っている。結果として昨年に比べてボール球に手を出している。2番としてはちょっとどうかなあと思う。

 まあ、全部が全部パーフェクトとはいかない。阿部監督とすれば門脇・吉川の二遊間コンビはいじりたくないはずだ。

 おそらく開幕から10試合くらいはこの1・2番コンビでいって戦う。様子を見る。良ければそのままで悪ければ考え直す。それでいいと思う。

大勢は1点差で終わるイメージ

 いずれにせよ巨人は丸、岡本和、坂本の三人が中心になる。イキのいい若い選手が出てきたけど、イザとなればそうそう打てるものではない。実績ある選手が頼みだ。

 岡本和には注文がある。昨年41本塁打で2年ぶりにタイトルを奪取したが、打点は93だった。いかにソロ本塁打が多かったかということだ。110から120、最低でも110か。本塁打数の3倍くらいは欲しい。

 私は67年、1番・スイッチで18本塁打を放ち、打点50を挙げている。約3倍だ。もちろん、走者が出ていることが必要だが、100いかないのは寂しい。

 投手陣では右ふくらはぎを痛めて離脱していた大勢が間に合った。連投もこなして守護神が復帰した意味は大きい。

 だけど大勢のイメージは良くない。というのも2〜3点リードした場面で登板すると最終的に1点差で終わるケースが結構多かった。そんな印象が強い。

 防御率を1点台にすることが必要だ。大活躍したプロ1年目の22年の防御率は2.05、昨年は故障で離脱したこともあって4.50、通算では2.82だ。

 これでは使う方は怖い。球威はある。あとは制球力だ。四球絡みの失点はチームの士気を落とす。1点台を目指してもらいたい。

新人の泉口友汰に期待

 今年の巨人は先発陣がそろっている。現在、菅野智之が6番手の評価だ。中継ぎ陣も質量ともに充実している。

 西舘勇陽、中川皓太、馬場皐輔、堀田賢慎、アルベルト・バルドナード、カイル・ケラー、ロングでは赤星優志、松井颯。昨年の開幕時の顔ぶれが一新したようだ。

 書き忘れていたが、新人の泉口友汰(NTT西日本)もいい選手だと思う。堅実な守備に加えて打撃も確実性を備えている。守備固め、代打で起用されそうだ。開幕ベンチ入りは間違いないだろう。

 開幕戦の相手は昨年の日本一・阪神だ。143分の1ではあるが、開幕戦のイメージはあとあと付きまとう。

 勝って幸先のいいスタートを切ってほしいが、まずはこの3連戦3連敗だけは絶対にしないことだ。最低でも1勝2敗だ。3連敗をすると取り返すのが大変だ。

優勝予想は…

 さて今年の順位予想をしたい。

 〈セ・リーグ〉

(1)巨人(2)阪神(3)ヤクルト(4)広島(5)DeNA(6)中日

 優勝は巨人と阪神の争いになるだろう。ここは巨人OBとして推さないワケにはいかない。阿部新監督の下で投打ともに競争で戦力アップした。球団創設90周年を飾ると信じている。

 阪神は投打に安定している。だが昨年は出来過ぎの感があった。選手層の薄さが気になるところで連覇はどうか。

 ヤクルトは村上宗隆の復活なるかどうかがカギを握る。打線は悪くない。投手陣が奮起すれば3位に食い込めるとみた。

 広島は西川龍馬が抜けた穴が痛い。救援陣はともかく先発陣が弱い。若手のレギュラー争いに期待したい。

 DeNAは今永昇太、トレバー・バウアーの大駒2枚が抜けた。打線は良い。新戦力の台頭次第で上位進出もある。

 中日は昨季、総得点、打率、本塁打などがリーグワーストだった。巨人から中田翔が移籍してきたが今年35歳になるベテランに期待するのは苦しい証拠。投手陣は充実しているものの投打のバランスが悪い。

パ・リーグは混戦を予想

 〈パ・リーグ〉

 最下位は日本ハムとみているが、あとの5チームで混戦となろう。あえて順位をつけるとこうなるのではないか。

(1)オリックス(2)ソフトバンク(3)ロッテ(4)西武もしくは楽天

 オリックスはエースの山本由伸が抜けて大穴となりそうだが宮城大弥がその穴をかなり埋めてくれそうだ。打線は元々良いが、西川の加入で厚みが増した。リーグ3連覇中、勝ち方を知っているのが強みだ。

 ソフトバンクは先発陣の充実が大きなポイントとなりそうだ。救援陣はいい。山川穂高の加入が打線に勢いをもたらしそうだ。巨人から移籍したアダム・ウォーカーがどれだけやれるか。

 ロッテは昨年最終戦で2位に滑り込んだ。今年は佐々木朗希が1年間フルに投げられるかどうかで順位が変動しそうだ。打線は新加入のネフタリ・ソトの活躍に期待したいところだろう。

 西武の投手陣はリーグトップクラスだが、打線の充実が課題になる。メジャー通算114本塁打のヘスス・アギラーに大きな期待がかかる。

 楽天の先発陣は若返りを図り、メジャーに移籍した松井裕樹の穴を則本昂大が抑えに回って埋めた。打撃陣は実績のある選手たちの奮起次第だろう。今江敏晃新監督がどんなチーム操縦を見せてくれるか。

 日本ハムは投打にわたって戦力不足の感は否めない。就任3年目の新庄剛志監督、悲願のAクラス進出なるか。

 さあ、29日から東京ドームに阪神を迎えての開幕3連戦、次回の今コラムでは威勢のいいスカっとした記事を出したいところだ。(成績などは27日現在)

柴田 勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会理事を務める。

デイリー新潮編集部