ベイスターズにはすんなりとは戻れない?

 ペナントレース開幕直前、横浜DeNAベイスターズに「決断の時」が来た。

 サンフランシスコジャイアンツのスプリングキャンプに招待選手として参加していた筒香嘉智(32)が自由契約になった。筒香の米球界生活は、「挑戦」と「しくじり」の繰り返しだった。とくに22年シーズン途中にパイレーツを解雇されてからはブルージェイズ、レンジャーズとマイナー契約を結び、メジャー復帰のチャンスを目指してきた。途中、米独立リーグ行きの屈辱も味わった。その度に日本球界復帰も囁かれたが、筒香はメジャーリーグにこだわってきた。しかし、今回は違う。自ら、

「日本球界も(移籍先として)視野に入れて」

 と、こぼしたのである。

 これに、敏感に対応したのはもちろん、古巣・DeNAだ。スポーツ紙各社が共同でコメントを求めると、萩原龍大チーム統括本部長(46)が声明を出した。

「我々が彼を送り出す際、三原一晃元球団代表から『日本でプレーすることになったらベイスターズに戻ってきてほしい』と伝えており、その気持ちは今に至るまで変わっておりません」

 さらに、「彼がNPBに戻ると決めた時には、あらためて我々の意思を伝え、コミュニケーションを取りたいと考えております」とも。

「筒香がメジャーリーグに挑戦した当時の球団代表名を出したということは、DeNAが獲得に動くのは間違いないと見るべきでしょう。筒香自身も、萩原部長の声明をどこかで見ているはず。この声明は筒香に向けてのメッセージです」(ベテラン記者)

 だが、スンナリと「DeNA復帰」とはいかないようだ。メジャーの壁に苦しんだとはいえ、“元侍ジャパンの4番”である。サードがまだ固定できていない福岡ソフトバンク、得点力アップを目指す中日、選手層の薄い東北楽天はもちろん、開幕直前で4番・大山悠輔(29)が下半身の違和感を訴えた阪神も放っておかないだろう。

「DeNAは、間違いなく元キャプテンでもある筒香に帰ってきて欲しいと思っているはず。でも、今のDeNAのメンバーを見ていると、筒香の守るポジションがないのです。外野には佐野恵太(29)、桑原将志(30)、売り出し中の新人・度会隆輝(21)、梶原昂希(24)がいて、三塁には宮崎敏郎(35)がいます。オープン戦ではオースティン(32)が一塁を守っているので、ペナントレースもそのまま行くと思われます」(前出・同)

あの投手にも誠意を示す?

 本格的に交渉を進める際の条件提示は、レギュラーを保障しないものとなりそうだ。とはいえ、米球界側ではこんな情報が流れていた。筒香のオープン戦での成績は6試合に出場して打率1割、本塁打ゼロ、打点2。メジャー通算成績も182試合、打率1割9分7厘、本塁打18、打点75と芳しくない。もしや「腰痛が治っていないのではないか」と指摘されていたのだ。

「22年、パイレーツを解雇された際も腰痛が不振の原因と言われました。以後、筒香の成績不振が指摘される際、速球に対応できない技術面と共に、腰痛が絡んでいると指摘されていました。今春キャンプでも腰痛で一度、チームを離れています。再合流後、2試合に出場し、マイナー降格が通達されて自由契約へと流れていきましたが、『招待選手』とは言わば、日本球界の言葉で言うならば『テスト生』です。生き残りを賭けた、もう後のない選手が故障でチームを離脱するとは、相当な痛みだったのだと思います。マイナー行きを通達されたのも、腰は治っていないと判断したからでしょう」(米国人ライター)

 仮にそうだとしても、DeNAには筒香を復帰させたい事情がある。

「DeNAは球団買収後、ベイスターズ時代のチーム運営についても見直しをしました。かつてはフリーエージェント権を取得した選手が次々と出て行ってしまい、残ってくれたのは三浦大輔監督(50)でした。生え抜き、チーム功労者を大事にすべきとの方針を固め、権利行使して退団してしまったOBにもコーチ帰還の話を持っていくようになりました。筒香に対しても、“誠意”を示すのではないでしょうか」(球団関係者)

 しかももう一人、契約したい大物がいる。メキシカンリーグのメキシコシティ・レッドデビルズと5試合の限定契約を交わしたトレバー・バウアー(33)だ。バウアーがメジャー復帰を目指してアピールを続けているのは既報通り。「限定契約」としたのは、結果を出して契約してくれたチームに即合流するプランであり、バウアーのメジャー復帰に掛ける思いの強さを感じさせる選択だが、米国内では悲観的な声のほうが多い。

「DV疑惑は晴れました。過去に過ちを犯してカムバックした選手もいないわけではありません。でも、気の毒なことにバウアーはメジャーリーグを代表するスター選手であり、疑惑の段階で報じられたニュースがあまりにも多過ぎました。ファンの反感を買う言動もあり、彼を獲得した球団の関係企業、本拠地球場に広告を出しているスポンサーのイメージにも影響してきます。仮に獲得したとして、ロッカールームの雰囲気が変わります。米球界の懸念は相当なものです」(前出・米国人ライター)

 また、今回のメキシカンリーグ行きだが、NPBともパイプを持つ仲介者が関わっているとの情報も交錯している。試合現地時間3月24日、ヤンキース傘下のマイナーチームとの親善試合に先発し、3回4失点と好投したのは既報通りだが、MLB各球団の見方は変わっていないそうだ。

今季のDeNAは阪神よりもコワい

「レッドデビルズというと、楽天を退団した安楽智大(27)が在籍していることばかりが報じられていますが、21年オフにDeNAから戦力外通達を受けた乙坂智(30=現米独立リーグ)も22年に在籍しています。乙坂はレッドデビルズで打率3割3分3厘、盗塁王のタイトルも獲得しました。かつて、DeNA、オリックスなどが若手選手をメキシコのウインターリーグに参加させた経緯もあり、今も現地とネットワークを持つNPB関係者は少なくありません」(前出・関係者)

 DeNAがバウアーのメキシカンリーグ行きのために「ひと肌脱いだ」との情報は今のところない。しかし、1月のコーチ会議で「バウアーがいる状況」と「いない状況」の2パターンの投手編成が話し合われた。そのため、レッドデビルズでの5試合登板が終了してもMLB側からのアクションが何もなかった場合、DeNAは改めてバウアー側にアポイントを取る段取りになっているという。

「DeNAに再入団してくれるかどうかは、バウアー次第です。ただ、DeNAがバウアーにこだわるのは今シーズンだけでしょう。新加入のジャクソン(27)、ケイ(29)、ウィック(31)の3投手が物凄く良いんです。とくにジャクソンはエース級の働きをしそうで、三浦大輔監督 もオープン戦終盤、隠して登板させませんでした。2位ルーキーの松本凌人(22)も一軍戦力です。今永昇太(30)、バウアーの抜けた穴は埋まっている。その意味でも今季のDeNAは要注意ですよ。セ・リーグでは『阪神よりも怖い』と警戒する向きもあります」(ライバル球団スタッフ)

 バウアーが再入団した場合、昨季33ホールドを挙げたウェンデルケン(31)、オースティンを含めた外国人選手の「試合出場登録4人まで」の問題が生じるが、前出の関係者はこうも言う。「筒香はチームを変える力があり、バウアーには順位を変える力がある」。2人が復帰したら、セ・リーグの順位予想も大幅に変わってくる。

デイリー新潮編集部