2024年に発売された注目の投資本のうち、ゴールデンウイークに読んでおきたいものを紹介する本シリーズ。4作目は、日本の独立系投信会社の草分け的存在である、さわかみ投信の創業者・澤上篤人氏による新刊『暴落ドミノ 今すぐ資産はこう守れ!』。本書は表紙の帯からして「新NISAにも手を出してはいけない!」とあるなど、なかなか刺激的な内容だ。

■「暴落はもう、秒読み段階だ」

『暴落ドミノ 今すぐ資産はこう守れ!』(澤上篤人、明日香出版社、1705円)

長らく投資をしている個人投資家なら、誰もが知っているであろう澤上氏は、スイス・キャピタル・インターナショナル、ピクテ・ジャパン代表を経て1996年にさわかみ投資顧問(現さわかみ投信)を設立。販売会社を介さない直販にこだわり、長期投資の志を共にできる顧客を対象に、長期保有型の本格派投信「さわかみファンド」を99年に設定した。同社の投信はこの1本のみで、純資産は約3900億円、顧客数は11万8000人にのぼるという。

本書の「はじめに」で澤上氏はいきなり「金融緩和バブル、そう言っていい展開だが、もういつ大崩れをはじめてもいい。その先では、あらゆる金融商品で大暴落の連鎖は免れない」とあおる。

経済では勢いが強まって、ひとつの方向へ行き過ぎるのはよくあることだが、氏は「その間にも反動エネルギーは着々と蓄積されていっている」とした上で、どこかのタイミングで「拮抗し、逆に反動エネルギーが勝りだす。そこで勢いの方向が反転」すると指摘、「ゴムが伸び切って、プチンと切れてしまったら、どうなるのか? それが、歴史に残る『なんとかショック』とされるバブル崩壊である」などと述べ、大きな暴落が近いことを示唆する。

第1章の「暴落はもう、秒読み段階だ」から、「ひずみが次々に顕在化する世界経済」「どこから崩れだしてもおかしくない」などと状況を説明した後、そうした中で具体的に資産をつくる方法を第7章「これが本物の長期の資産形成だ」で説明する。

これだけ見ても分かるとおり、かなり悲観的な見立てといえる。しかし現状を見て「たしかに好調すぎはしないか?」「これがいつまで続くのか?」と不安に思っている人も少なくないだろう。50年以上にもおよぶ投資経験に裏打ちされた氏の論理展開に、同意する人もまた少なくなさそうだ。

澤上氏は現在、さわかみホールディングスの代表ではあるものの、グループに日本株に投資するファンドを運用する投信会社があることは踏まえつつ、悲観的なシナリオを確かめておくのも役に立つのではないだろうか。

文/編集・dメニューマネー編集部