ドジャースの大谷翔平(ロイター/アフロ)

 まもなくメジャーリーグの新シーズンが幕を開けるが、日本で最も注目されるのは、ともにドジャースに加入した大谷翔平と山本由伸の2人だろう。

 大谷が10年総額7億ドル(約1043億3000万円)、山本は12年総額3億2500万ドル(約484億4000万円)という超大型契約だけにその期待は日本だけでなく、現地でもかなり大きい。

 大谷は2年連続、自身3度目となるシーズンMVP、山本は日本人初となるサイ・ヤング賞という偉業も“獲得圏内”ではあるが、果たしてタイトルへ向けては現状、何番手あたりにつけているのだろうか。現地で出ている情報などから探ってみたいと思う。

 まずは大谷。今季は昨年9月に受けた右肘の手術の影響で指名打者(DH)として試合に出場する見込みとなっている。これまで2度MVPを獲った時はいずれも“二刀流”として活躍しており、ある意味では初めて本格的な打者として迎えるシーズンとなる。

 これまで数々の名打者がDHとして活躍した。だが、ポール・モリター(ブルワーズなど)、フランク・トーマス(ホワイトソックスなど)、デビット・オルティス(レッドソックスなど)の3人がMVP投票で2位につけたことがあるが、DHとしてMVPに選出された選手はいない。そして、「その壁を破る可能性があるとしたら大谷だ」として今季のナ・リーグのMVP候補として3位に挙げているのが、メジャーリーグ公式サイトの『MLB.com』だ。

 しかし、その評価の一方で、今季は二刀流としてプレーできないことが成績に悪影響を与える可能性もあると『MLB.com』は指摘している。

 その『MLB.com』のMVP候補としては大谷の同僚で、今季は遊撃手にコンバートされる見込みのムーキー・ベッツが1位、続くのが昨シーズン打率.337、41本塁打、106打点、73盗塁と歴史的な記録を残したロナルド・アクーニャJr.外野手(ブレーブス)だ。

 他のMVPを予想する記事やベッティングサイトなどを見ても、順位が入れ替わるものはあるが1、2位はベッツとアクーニャの2人が占めている。選手の総合的な価値を示すWARという指標でも野手部門では昨年は1位がベッツ(8.3)、2位がアクーニャ(8.2)。年齢的にもベッツが31歳、アクーニャが26歳とキャリアハイを残す可能性もあり、彼らを“2強”と呼んでもよいだろう。

 大谷は2人に続く3番手という評価がほとんどだが、ベッツ、アクーニャ以外にもナ・リーグにはMVP候補となる能力を持つ選手が非常に多く、大谷のライバルは多いという印象だ。

 ブレーブス時代の2020年にMVPとなり、今季からドジャースで同僚となったフレディ・フリーマン一塁手はもちろん、アクーニャと同じく走攻守揃った外野手としてポテンシャルはメジャー屈指のフェルナンド・タティスJr.(パドレス)、昨シーズン史上14人目の満票で新人王となったコービン・キャロル(ダイヤモンドバックス)の2人は昨季のアクーニャに劣らぬ成績を残せる可能性のある逸材だ。

 また、昨シーズンにナ・リーグ本塁打王となったマット・オルソン(ブレーブス)、ピート・アロンソ(メッツ)、ブライス・ハーパー(フィリーズ)はMVP争いとともに2年連続の本塁打王としてのライバルにもなりそうだ。

 今シーズンはDHとしての出場となり、投手としての貢献がない分、大谷は相当な成績を残さなければMVPを獲ることはできないだろう。加えて、同じリーグにはライバルも多く稀に見る激戦になる可能性もある。仮に今シーズン3度のMVPになることができれば、誰もが認めるリーグの顔になるだろう。

 一方、山本のサイ・ヤング賞について現地はどう見ているのか。

『MLB.com』の予想では新人ながら5位の評価を受けている。昨年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)でのピッチングや、25歳という全盛期とも言える年齢など触れ、「サイ・ヤング賞の力量」はあるとしている。

 なお『MLB.com』の予想では、1位が昨シーズン最多勝と奪三振王となった剛腕スペンサー・ストライダー(ブレーブス)、2位がリーグ屈指の技巧派であるローガン・ウェブ(ジャイアンツ)、3位が2021年に奪三振王となり、同賞の投票で2位となったザック・ウィーラー(フィリーズ)、そして4位にルーキーイヤーだった昨年に“お化けフォーク”を全米にもとどろかせた千賀滉大(メッツ)が続いている。(千賀は右肩を痛め5月に復帰予定)

 ベッティングサイトなどで見ても、1位に推されているのは山本と同じ25歳のストライダーだ。『MLB.com』が触れていない投手では、ザック・ガレン(ダイヤモンドバックス)、マックス・フリード(ブレーブス)などがライバルとなりそうだが、抜けているのはストライダーのみといった感じ。千賀などNPBで結果を残した投手が即メジャーリーグで結果を残していることが多いこともあり、山本も5、6番手という評価が多い印象だ。

 山本がプレーするドジャースの本拠地ドジャー・スタジアムはパーク・ファクター(球場ごとの得点の入りやすさ)と呼ばれる指標ではメジャー全体で19位となっており、どちらかというと「投手有利」。気になるのはデーブ・ロバーツ監督の投手交代のタイミングが早いこと。初めて沢村賞に輝いた2021年に6完投を記録するなど、スタミナもある山本だが、ドジャースでは球数を少なくした“省エネ”投球も成績を伸ばすカギとなりそうだ。

 オープン戦ではメジャー7年目の大谷が8試合で打率.500(22打数11安打)、2本塁打、9打点と好調だった一方、ルーキーの山本は3試合に投げて防御率8.38と明暗が分かれた。2人ともに大きなインパクトを残せる力があるだけにシーズンでは果たしてどうなるか。まもなく韓国で開幕する試合から目が離せない日々が続きそうだ。