メジャーからも大注目のロッテ・佐々木朗希

 ロッテ・佐々木朗希がメジャー挑戦となった場合、ドジャース移籍が既定路線と言われているが本当なのだろうか。多くのMLB球団が興味を示す中、かつて日本人選手も数多く在籍したチームも“本命”の1つとして浮上しているという。

 大谷翔平(ドジャース)をはじめMLB絡みの話題が世間を賑わせているが、「ロウキの行先は新金満球団・ドジャース」というのもその1つ。開幕早々の3月31日(日本時間1日)には、米『USA TODAY』紙が「世界最高の投手の1人であるロウキ・ササキはシーズン後にドジャースと契約するプランがあると複数のGMたちは考えている」と伝えた。

「タブロイド紙やネット媒体ではなく歴史と名声がある全国紙の記事。しかし内容に関しては複数球団GMの予想でしかない。ドジャースと日本球界のパイプの太さは知られているとはいえ、現状で可能性の1つにしか過ぎない」(在米スポーツライター)

「野球協約違反のタンパリング(事前接触)に当たる」と打ち出す米マスコミもあるなど、日米で大々的な話題となっている。

 佐々木自身にMLB挑戦の願望があるのは間違いない。昨年末には所属球団のロッテにポスティング制度を使用して早期の渡米を直訴したと報道された。契約交渉は1月末のキャンプ直前まで長引き、記者会見ではロッテの松本尚樹球団本部長が「(メジャー行きは)いきなり言い出したわけではない」と入団当初からメジャー挑戦への意欲があることを認めている。

「メジャーへの挑戦願望があることは知られていたが、公の場でそれを認めたことで獲得競争が加速するはず。年齢も若い金の卵なので、最低でも15球団前後は興味を持つだろう」(MLBアジア地区担当スカウト)

 今季初登板となった3月31日の日本ハム戦(ZOZOマリン)にはメジャー8球団のスカウトが集結。ドジャースをはじめ、各球団が本腰を入れて調査を始めたようだ。

 昨年オフには大谷と山本由伸が入団したドジャースが“大本命”と言われている中、「黙ってそれを見ているわけはない」と思われているメジャーの球団がある。

「ヤンキースは常に日本人選手に注目している。当然、佐々木への関心は高い。投手では井川慶の失敗はあったが、田中将大(現楽天)、黒田博樹らはチームへの貢献度が高かった。野手でも松井秀喜の活躍も記憶に残るものだった。契約には至らなかったが山本の獲得にも本気で動いていた」(MLBアジア地区担当スカウト)

 しかし地元では佐々木獲得に関して早くも賛否両論が出ている。ヤンキース専門サイト『Yanks Go Yard』は現地6日に「(ヤンキースは)ササキに対して時間を無駄に費やすべきではい」というタイトルの記事を掲載。ドジャース入りした山本を引き合いに出し「現状ドジャースと相思相愛と言われる選手」を追うのは時間の無駄であると論じている。

 またファン、関係者の多くは日本人として大きな期待を背負いながら、“大失敗”に終わった井川のことも忘れてはいない。2006年オフに5年2000万ドル(約30億6000万円)プラス出来高で契約を結んだ左腕は、実働わずか2年間で16試合の登板(うち13試合は先発)。2勝4敗、防御率6.66と期待外れに終わり、「FA補強の最大の失敗例の一つ」と言われ続けている。

「井川のような失敗もあったが、日本人選手が大きな貢献をしたのは事実。また大谷の活躍でエンゼルスやドジャースが潤ったのを見て、影響の大きさを再確認しているはず。戦力としてはもちろんマーケティングの観点からも佐々木は欲しい選手でしょう」(米国ヤンキース・ビートライター/担当記者)

 日本人でも知名度の高い佐々木の獲得はグラウンド内外でヤンキースに利益をもたらすと考えられているよう。大谷と山本が所属するドジャースを見ても明白だ。

「日本国内ではドジャース入団が既定路線のように言われるが今は何も決まっていない。大谷や山本と同じチームにいるのが見たいという日本人の願望が先行したニュースでしかない。ヤンキースが本気になれば、プレー環境や契約内容などで他球団を凌駕する破格条件を提示するはず」(在米スポーツライター)

 ヤンキースは昨オフにトレードで球界屈指の左打者フアン・ソト外野手を獲得してはいるが、近年の補強などに関しては他球団に遅れを取っている印象もある。しかし「悪の帝国」と言われる球団が本気になれば、金に糸目をつけずになりふり構わずやってくるはず。「義理人情」が重宝されるのは日本だけで米国では全てがビジネス(=お金)だ。

「ヤンキースは今季はここまで好調だが、昨シーズン33年ぶりに最下位の危機に陥るなど、名門らしからぬ戦いが目立っている。またこのオフの目玉であった大谷、山本の補強も逃した。ただ単に戦力アップに失敗しただけでなく、オフの話題をドジャースにさらわれたという認識も球団の関係者にはあるはず。かつてのオーナーであった故ジョージ・スタインブレナー氏は補強について“注目されてナンボ”という考えもあり、その信条は今も引き継がれているはず。佐々木が仮にメジャー挑戦となった時に最注目の目玉選手となっていれば、なんとしてもでも獲得しようと動くはず」(メジャーリーグに詳しいメディア関係者)

 佐々木獲得を巡る攻防はこれから本格化してくるはずだが、ドジャースだけではなく“元祖・金満球団”のヤンキースの動きも非常に気になるところだ。まだ佐々木が今季終了後に海を渡るかは分からないが、もしそうなった場合には来年の今頃、ドジャーブルーではなくピンストライプを身に纏っている可能性もありそうだ。