伊藤忠商事の人事・総務部 採用・人材マネジメント室 市川丈陽(いちかわ・じょうや)さん

 就職活動は年々早期化が進み、夏に行われるインターンシップの準備がはじまる大学3年(修士1年)の春が実質的な就職活動のスタートとなっている。自分のキャリアや就活についてあまり考えないままに就活をスタートさせると、壁につきあたってしまう可能性も高い。

 そんなときに活用してほしいのが、就活ナビや大学が企業をあつめて開催する合同説明会。コロナ禍を経て対面でのイベントが復活し、一気にたくさんの企業や社会人に接して生の情報を得られることが可能になった。

 新卒向け就活・就職サイト「あさがくナビ」が4月に開催する大型のイベント「キャリアデザインフォーラム」に参加する人気企業3社に、会社の魅力や採用にかける思い、学生へのメッセージを聞いた。1社目は「あさがくナビ」調査の就職人気企業ランキングで6年連続1位を獲得した伊藤忠商事が登場する。(あさがくナビ編集部・福井洋平)

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――6年連続でランキング1位を獲得されました。人気の理由は何だと思われますか。

人事・総務部採用・人材マネジメント室 市川丈陽(じょうや)さん(以下同) ひとつは、伊藤忠商事をはじめとする大手総合商社の業績が伸びているためだと思います。伊藤忠商事は2022年3月期に最高益を達成。2023年度も多分野で大きく収益を伸ばしています。

 業績好調な業種の中でも、商社という業種は可能性が制限されておらず、新しい挑戦ができる業界とみられています。私たち伊藤忠商事は江戸時代末期に伊藤忠兵衛が創業して以来、ゼロからビジネスをつくり上げてきたという会社のDNAがあります。社員一人ひとりが挑戦を続けてきた歴史や社風がある、ということを学生にも伝えています。

――SDGs推進にも積極的に取り組んでいますね。

 ファミリーマートの中食包装をバイオマスにしたり、フードロス削減に取り組んだりと、生活消費関連分野を通してSDGsに積極的に取り組んでいることが学生に伝わっていると感じます。いまは福利厚生や待遇面だけでなく、自分がどれだけ会社を通して社会貢献できるかを就職活動の軸にする学生が増えており、就活イベントの質疑応答でも「伊藤忠商事で代表的なSDGs関連の取り組みは何ですか」という質問をよく受けます。当社はそういう学生のニーズに訴求できているのではないでしょうか。

2023年11月に学情が発表した就職人気企業ランキング、トップ10。伊藤忠商事は6年連続の1位を獲得

――働き方改革にも取り組まれています。

 2013年に午後8時以降の残業を禁止し、仕事を朝型にシフトする「朝型勤務」を取り入れました。

 伊藤忠商事は10年かけて長時間労働をよしとする意識を変えてきました。伊藤忠商事は他商社に比べて社員数が少なく、成果が求められるため、一人ひとりが生産性を上げていかないといけません。「厳しくとも働きがいのある会社」というのが当社のフレーズですが、その中で無駄を省き、限られた時間で効率的に仕事をしていく文化が育っていたと思います。

――市川さんは2021年入社ですが、伊藤忠商事を選んだ決め手は何でしたか。

 シンプルかもしれませんが、社員の方から感じた社風や価値観が一番魅力的だったのが伊藤忠商事でした。最終面接を担当してくださった役員の方が、一番社会人として尊敬できると感じました。営業の経験が長い方で、とても話し方が柔和で心をつかまれました。

 その方からは、事前の対策では対応できない質問をされました。覚えているのが「なんでチューインガムは廃れたと思う?」という質問です。考えたことのない質問で、「健康志向が高まって、歯の詰め物がとれるのが嫌がられるようになったから」とよく分からない返事をしてしまいました。

 その方によると、因果関係はわからないけれどスマートフォンが普及するにつれてガムの売り上げが落ちているそうなんです。そこから、「自分の担当するビジネスがどういう外的要因に影響を受けるかわからないが、それに対応するのが地球規模でビジネスをしている商社パーソンだから、君がもし優秀な商社パーソンになりたいなら自分の担当しているものだけではなくこの世界全体を俯瞰しよう」という話をしていただきました。自分が入社を決めたきっかけになった言葉です。

――入社後はどのような仕事をしてきましたか。

 入社から新卒採用を担当し、2年目からはキャリア採用も少し担当しています。今は新卒採用チームのリーダーになっています。伊藤忠商事は私のような若手が新卒採用を担当する文化が醸成されています。

――配属は自分で希望できるのですか。

 採用時に希望できます。私は人事が第2希望でした。

【大学新2〜3年生など対象】Career Design Forum in 東京 https://www.gakujo.ne.jp/2026/events/evt_dtl.aspx?p1=evt1
【大学新2〜3年生など対象】Career Design Forum in 大阪 https://www.gakujo.ne.jp/2026/events/evt_dtl.aspx?p1=evt2

――どのような学生に入社してほしいですか。

 成長意欲が強い人というのは中心に据えています。

 伊藤忠商事は少数精鋭体制ですので、一人あたりが担当する業務が多い。担当者になれば営業、契約書の処理、入金の確認、様々な業務を一人で担うので、自分から情報をつかみにいき、成長しようという思いがなければ活躍できません。

 もうひとつは「目の前の課題を解決する能力」です。商社の仕事はトレーディングだけではなく、事業に投資したりなど、様々な要素があります。未知の分野に挑んだときに構造的に目の前の課題を解釈し、組織やビジネスの本質的な課題を特定できる能力を重視して選考しています。

――学生のどういうところに注目されますか。

 学生はよく、「私は全国大会に出るような経験をしていません」など、経験の優劣を考えてしまいがちです。当社はそういった経験の表層を評価しているわけではありません。

 どんな経験でもいいので、自分がこれまでの人生で力を入れてやってきたこと、そして課題に直面したときにどのように推察し、どう行動してきたかを見ています。仕事の中で課題に直面したときにどう行動するかを知りたいので、そこはよく見ています。

――伊藤忠商事を志望する学生にアドバイスはありますか。

 その場をうまく取り繕えるかといったテクニカルなスキルは必要としていません。学生には今自分が全力を尽くしていることに100%注力してほしいと思っています。

 面接では「あなた自身がどのような壁を乗り越えて今があるのか」とよく聞きます。自分自身が夢中になる中で様々な壁を乗り越えるという経験を、人生を通じて積んでもらいたい。今やっていることが就活で有利になるかとかはあまり考えずに、夢中になれることに全力を尽くしてほしいと思っています。

(インタビューの詳細はあさがくナビのニュースサイト「就活ニュースペーパー」に掲載