「鬼」になったCMが話題の山田孝之

 4月3日より放映されている、JTの新CMに俳優の山田孝之(40)が出演し存在感を放っている。「心の豊かさを」をテーマにしたCMで、山田扮する心の豊かさの存在を知らない鬼がさまざまな人間に出会い、心の豊かさに気づいていくというストーリーだ。現在は第1弾「鬼のゆく道 登場」編が放映中で、半世紀以上もひとり山奥で暮らしてきた鬼が人里でおばあさんに出会い、心の豊かさに触れ、胸の内が微かに変化していく姿を山田が繊細に演じている。

 このCMについてSNS上では、「鬼が素敵だ、引き込まれる」「山田孝之演じる鬼がめちゃくちゃかっけ〜」など称賛されている。シリアスからコメディーまで作品ごとに全く別の顔を見せ、演じる役の幅広さで知られる山田。民放のドラマに出ずっぱりというわけでもない山田が、視聴者に対してずっと存在感を放ち続けられるのはなぜか。

「最近は民放連続ドラマの出演こそ少ないですが、NHK大河ドラマやネット配信ドラマで好演を見せています。昨年放送された大河ドラマ『どうする家康』では服部半蔵役で出演。他の作品にも登場することがある半蔵ですが、山田は自信なさげな雰囲気とユーモアを醸し出しながら演じ、新しい服部半蔵像を描き出しました。また、2月にNetflixで配信が開始された『忍びの家 House of Ninjas』では、日本を未曽有の脅威にさらそうとする新興宗教の教祖という悪役を好演。カリスマ性と不気味さとうさんくささも織り交ぜた演技は秀逸でした。もともと演技力には定評がありますが、最近では怪演ぶりが増していることもあり、視聴者の印象に残り続けているのでしょう」(テレビ情報誌の編集者)

2021年に映画イベントに出席した際の山田孝之(写真:Motoo Naka/アフロ)

■自給自足生活への憧れ

 どんな作品でもしっかりと演じる切る山田だが、役とはどのように向き合っているのだろうか。

「人志松本の酒のツマミになる話 2時間スペシャルin福岡」(フジテレビ系、2023年12月29日放送)では、撮影期間中は演じている役によって言葉や態度が変わってくると告白。また、役を維持するため、座り方に気をつけたり飲むものや食べるものを変えたりすることもあるという。また、同番組で共演者から「殺人者の役をやっていたら、家に帰っても殺人者でいるってこと?」と聞かれると、「ゼロには絶対しないです」とキッパリと話した。以前から憑依型の俳優と言われていた山田だが、私生活でも役に入り込んでいるようだ。

「最近では芸能以外の活動も話題です。例えば、21年に“原点回帰”というプロジェクトをスタートさせ、自給自足を目標に農業に取り組んでいます。10代の頃から自給自足生活への憧れがあり、現在は全国十数カ所に畑があると語っていました。プロジェクトのメンバーにはプロの生産者もおり、『この日なら行けます』と連絡を取り合いながら、野菜を育てるだけではなく、人間関係も学んでいるそうです。また、アートにも興味があり、アートヴィレッジにする島を探しているとインタビューで明かしていたことも。山田自身が気に入った無名アーティストに『1カ月ここに住みません?』と声を掛け、そこをアトリエにしてアート活動をしてもらい、出来上がった作品のうち1点でもいいから置いて帰ってもらう。そうやってアートがたまる拠点を実現したいとか。自身の理想をかなえるべく芸能以外の活動にしっかり取り組んでいるところも、俳優としての重みにつながっているのかもしれません」(同)

「闇金ウシジマくん」に出演していた頃の山田孝之

■番組でフジテレビを堂々批判

 一方で「忖度(そんたく)しない攻めた発言も人気の要因では」と話すのは週刊誌の芸能担当記者だ。

「昨年12月放送の『まつもtoなかい』に出演した際、『テレビというか、フジテレビが得意じゃないんですけど』とぶっちゃけて話題になりました。前回、同番組に菅田将暉と出演したとき、韓国ドラマや韓国映画などになぜ日本が追いつけないのかというトーク内容だったのですが、山田は『方向性が違う』という話をしたのに、放送では菅田と2人で韓国ドラマ全体を批判している構成になっていた。そんな意図的な編集に対して、『もう、俺は合わないんだな』と、心情を打ち明けていました。これにSNS上では『フジテレビの編集がおかしいって発言した山田孝之かっこいい』などの声が数多く見受けられました。民放ドラマに出演するかもしれないのに、こうした発言を堂々とできる俳優はなかなかいません。山田が唯一無二のポジションを築いているという証でしょう」

「全裸監督」に出演していた頃の山田孝之(写真:Everett Collection/アフロ)

 芸能評論家の三杉武氏は山田についてこう述べる。

「山田さんといえば、クール系からコミカルな役まで幅広い役柄を巧みに演じてドラマや映画、CMなどさまざまな作品で存在感を放っています。主演作だけでも『闇金ウシジマくん』シリーズや『勇者ヨシヒコ』シリーズ、近年ではNetflix配信の『全裸監督』などヒットに導いた作品は数多くあり、脇役としても作品に厚みをもたらす好演が目立ちます。一方で、監督やプロデューサーとしても映画を手掛けたり、会社を設立したりするなどマルチな才能を発揮しています。以前から、取材を受けたインタビューの原稿に関してはマネジャーやスタッフ任せにするのではなく、多忙な中でもできる限り自分でチェックすると言われており、そのあたりにも仕事に対する真摯な姿勢やプロ意識の高さを感じさせられます」

 怪演俳優の枠を超え、今後も唯一無二の存在として芸能界を引っ張っていきそうだ。

(丸山ひろし)