DeNAのオースティン(左)と中日のビシエド(右)(写真提供・横浜DeNAベイスターズ/中日ドラゴンズ)

 今シーズン3年契約の3年目を迎えているDeNAのタイラー・オースティンと中日のダヤン・ビシエド。ともにチームの上位進出に欠かせない助っ人になれるだけの力を持っているが、オースティンは怪我で長期離脱が濃厚となり、ビシエドも開幕から二軍での調整が続いている状態だ。

 オースティンは今シーズン開幕から2番で起用されていたが、4月10日の中日戦(横浜)で二塁打を放った際に右太もも肉離れを起こした。「まだ無理させる時期ではないですし、先は長いので一回抹消します」と三浦大輔監督は語り、早々と離脱となってしまった。

「(今シーズンは)2022年からの推定総額8億5000万円の3年契約最終年だけに、キャンプから積極的な動きを見せ表情も明るかった。体がキレていて打球の飛距離も出ており絶好調時に戻ったと思えた。開幕から2番に定着して打線に厚みが増していたのですが……」(DeNA球団関係者)

 2020年に来日したオースティンは来日1年目から怪我で離脱することは多かったが、メジャーリーグでもプロスペクトと期待された実力の片鱗は見せてきた。1年目に65試合の出場で20本塁打を放つと、2年目には107試合の出場ながら打率.303、28本塁打、74打点の好成績をマーク。近年はどの球団も野手の助っ人補強に苦しむ中で“優良選手”になれる雰囲気を漂わせていた。

 だが、3年目以降はさらに負傷で離脱することが増え、3年目の2022年から昨年までの2年間の出場は計60試合にとどまっている。「怪我さえなければ……」とファンも毎シーズン期待を寄せているが、今年も例年通り早くも一軍から姿を消した。

「打撃は長打力だけでなく、状況に応じた打ち方ができる柔軟性もある。またチームへの献身性が高く走攻守で全力プレーを心掛けている。チームに溶け込んでムードメーカーにもなっていたので、故障は大きな戦力ダウン」( DeNA担当記者)

 オースティンはチームプレイヤーであることもよく知られている。怪我が多かったにも関わらず、チームが3年契約を提示したのも、グラウンド外での振る舞いを評価した部分もあるのだろう。10代の頃に癌を患い「人生観に影響があった」と語るように周囲への思いやりを欠かさない。DeNAではチームの調子が上がらない時、自身で用意したTシャツを選手や関係者に配って士気を高めようとしたこともあった。

「怪我が成績低下に直結している。シーズンを通じて試合出場できればある程度の結果は残せるはず。仮に調子を崩していても存在自体が戦力とも言える。常に手を抜かない全力プレーがケガの原因だけに残念で仕方がない」( DeNA球団OB)

 4月25日には実戦形式の打撃練習も再開したが、守備や走塁を行うのはまだ先だ。昨年のオフには「1年間フルで戦ってもらいたい」と三浦監督は語っていたが、今季も“オースティン抜き”の戦いがこのまま続く可能性もあるだろう。

 一方のビシエドは来日9年目で初めて開幕一軍から外れた。オープン戦7試合の出場時点で打率.133と調子が上がらず二軍調整となり、加えて3月23日には家庭の事情で一時米国に帰国していたことも影響したようだ。

「二軍スタートへの心配は無用だった。若手に混じっても手を抜かずに精力的に練習を行っている。日本語も少し話せるので周囲には常に明るい雰囲気が漂っている。チームワークを大事にする大人の野球選手だと感じさせる」(中日関係者)

 中日在籍8年間で943試合出場、1003安打、138本塁打、547打点という成績を残し、2018年には首位打者と最多安打のタイトルを獲得した。昨年は国内FA権を取得、今季からは日本人選手と同じ扱いとなっている。

「スイングスピードの速さとコンタクトの巧さに長けている。勝負強さも持ちわせて、タイトル獲得当時は最強外国人と言われた。しかし年齢とともに肉体面の衰えが目立つ。視力低下もあるようで以前のようにはプレーできなくなっている」(在京球団編成担当者)

 昨季は91試合の出場にとどまり、打率.244(315打数77安打)、6本塁打、23打点と来日8年目にしてワーストの数字となってしまった。今季は2021年オフに総額1000万ドル(約15億7000万円、金額は推定)で結んだ3年契約の最終年となる。

「立浪和義監督も常時起用することは考えていないようだ。外国人枠を考えなくても良いので、調子が上がり(一軍で)使えると思った時点で呼ぶはず。年俸は高くても、ある意味で割り切った起用方法になるだろう」(中日担当記者)

 開幕から二軍では19試合出場、打率.322(59打数19安打)、2本塁打、4打点(4月28日終了時点)とレベルの違いを見せつけている。一軍への合流待望論とともに、他球団とのトレードが噂されるなど評価は下がっていない。

「一時期のような爆発的な打撃は期待できないが、経験値が高く怖い打者なのは間違いない。DH制のあるパ・リーグや勝負所での代打なら戦力になれる。またチームのためにプレーができる選手というのも高評価の要因となっている」(在京球団編成担当者)

 高年俸はネックだが日本人扱いというのは大きい。また子供を日本にあるインターナショナルスクールに通わせるなど親日家であり、2019年には外国人としては珍しい球団の納会とファンフェスタに出席したこともあるほど。「助っ人」の枠を超えチームリーダーにもなれる選手だ。

「オースティンには常にケガの心配がある。ビシエドは年齢による衰えから計算しにくい。三浦、立浪の両監督は起用法に頭を悩ませているはず」(在京球団編成担当者)

 とはいえ、一軍に常時いることができれば存在感を発揮できるのは間違いない2人。加えて、長年在籍していることからもファンに愛されていることも共通している。今季が契約最終年ということを考えると、このままでは退団の2文字も頭をよぎるが、シーズンは始まったばかり。ともにチームの上位進出に貢献するような活躍を見せて欲しいとも思う。