ドラマ「不適切にもほどがある!」のロケ地となった情報経営イノベーション専門職大学

 話題になったドラマ「不適切にもほどがある!」(TBS、以下「ふてほど」)を見ていた大学生が驚いた。

「この建物を見たことがある。もしかしたら、うちの大学ではないのか」

 情報経営イノベーション専門職大のことである。

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 同校広報担当の奥絵里香さんをたずねた。

「最終回で仲里依紗さんが演じる渚が元夫に子どもを預けて、ほかの男性とデートに向かったシーンで、キャンパスが使われています。ドラマの制作スタッフが撮影地を探していたところ、わたしたちの大学を見つけてくださったようで、撮影に協力しました。まだ開校5年目で、新しい校舎の間からは東京スカイツリーが見えます。眺めがよく地域の方の憩いの場ともなっています。これを機に多くの方に大学を知っていただけるとうれしいですね」

「ふてほど」の撮影は東京都墨田区で行われることが多く、同区内にある情報経営イノベーション専門職大が選ばれたようだ。

 これまで同校は、「石子と羽男―そんなコトで訴えます?―」(TBS、2022年)、「全力!クリーナーズ」(朝日放送、2022年)の撮影にも使われている。

  情報経営イノベーション専門職大は2020年に開校したまだ新しい大学だ。“国際社会と地域社会でイノベーションを起こす人材の育成”を掲げている。同校は墨田区初の大学であり、アサヒビールなど区内に本拠地がある企業との産学連携にも力を入れている。

「ふてほど」の撮影は、東京情報デザイン専門職大(東京都江戸川区)でも行われた。第2話「 一人で抱えちゃダメですか?」である。

 同校入試広報部の小宮幸太郎さんが話す。

「渚が、託児所との間を何回も往復していたシーンで、大学の渡り廊下が使われました。わたしどもは昨年開校したばかりの大学で、校舎はピカピカです。注目されたドラマに使われて多くの人に見てもらえるのはありがたいです。いま、コマーシャル、ドラマ、PV撮影依頼が多数寄せられています」

 情報経営イノベーション専門職大、東京情報デザイン専門職大の校舎がドラマの撮影に使われたのは、新しい建物であり、デザイン面でも最新で見栄えが良いからといえる。

テレビドラマ、映画のロケ地に使われた大学ランキング/朝日新聞出版「大学ランキング2025」より。◎2024年1月/ウェブサイト「全国ロケ地ガイド:ドラマ・映画・特撮の撮影場所案内」から集計

■ロケ地に使われることが多い大学ランキング

「大学ランキング」(朝日新聞出版)では、毎年、「テレビドラマ、映画のロケ地ランキング」を掲載している。ここ数年、トップは埼玉県立大だ。なぜドラマ制作者に人気があるのか。キャンパスの見栄えの良さで、他大学を圧倒するからだ。

それもそのはず、埼玉県立大のキャンパスを建築設計したのは、山本理顕氏である。今年、建築界のノーベル賞といわれる「プリツカー賞」を受賞したほどの、日本を代表する建築家だ。

 2023年には、「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」「Dr.チョコレート」(以上、日本テレビ)、「ラストマン―全盲の捜査官―」(TBS)の撮影に使われている。「相棒」(テレビ朝日)とは相性がとても良く、少なくとも4回以上、ロケ地となった。

  なお、埼玉県立大の大学ホームページによると、撮影による施設使用の許可がおりるのは、学内行事のない土日祝日、授業期間外の夏季、春季休業期間中となっている。撮影使用料(1時間あたり)は、ムービー撮影(映画、ドラマなど)で、4万9500円(税込み)だ。

ドラマのロケ地に選ばれることが多い埼玉県立大学

 ランキング7位の創価大も撮影協力に積極的だ。2023年には「それってパクリじゃないですか?」「ブラッシュアップライフ」(以上、日本テレビ)、「あたりのキッチン!」(東海テレビ)、「特捜9 season 6」(テレビ朝日)、2024年には「Eye Love You」(TBS)、「うちの弁護士は手がかかる」(フジテレビ)のロケ地に使われている。

 創価大出身の市議会議員が喜んでいる。

  「創価大学が、放送中のドラマ『Eye Love You(アイラブユー)」のロケ地になっています。多治見市議会議員の片山たつみです。多治見愛の次は母校愛です。前回は『あたりのキッチン』で紹介しましたが、今回もまた、ドラマで使われています。韓国の俳優のチェ・ジョンヒョプさんが演じるテオが通う創智大学です。『創』の字が使ってあり、なんだかうれしいです。ドラマを観ていると、チェさんだけでなく、中川大志さんや二階堂ふみさん、山下美月さんもここに来ているようです。また、エキストラとして、大学生役の方も多く出演してるので、おそらく創大生も多く含まれているかと思われます。全くうらやましい限りです」(片山氏のウェブサイト 2024年 2月 26日)

 コロナが明けてから、多くの大学がキャンパスをテレビドラマ、映画のロケ地に貸し出すようになった。しかし、ドラマ、映画ならば何でもOKというわけではない。その内容に厳しい制約を課す大学がある。

 一橋大は「本学のイメージを損なう撮影は許可できない」として、具体的に「構内でナイフ・包丁等を振り回すような暴力的なシーンや、殺人が起きるシーン」を許可していない。また、「制服警官を演じる撮影は許可できない」とある(大学ウェブサイト)。とはいっても事件ものがすべてNGというわけではない。かつて東野圭吾原作の映画、ドラマ「ガリレオⅡ」「容疑者Xの献身」の撮影に使われた。

 立教大がドラマ制作者と交わす「撮影ルール」には次の一文がある。「本学学生や職員による撮影風景の見物を拒否しないこと(許可なく見物者を排除しないこと)」。人気俳優が登場するドラマは野外ロケでも見学は制限される。大学にすれば、学生や教職員は大学関係者として撮影見学を認めてほしい、という思いなのだろう。

 ドラマ、映画で大学キャンパスと思しきシーンを見かけて、それに魅了されたならば、エンドロール(最後の出演者、協力などの字幕)の「撮影」をチェックしてみよう。大学選びのきっかけになるかもしれない。

(文/教育ジャーナリスト・小林哲夫)