現在巨人が本拠地として使用する東京ドーム

 東京都は4月19日、旧築地市場の跡地を再開発する事業社が、三井不動産を中心とした11社のグループ企業体に決まったことを発表した。
 
 再開発の目玉として約5万人を収容可能な新スタジアムが建設予定であることも明かされ、事業予定者に巨人の親会社・読売新聞社が入っていることから、球団の新本拠地になるのではないかと話題となった。

 しかし、5月1日には巨人の山口寿一オーナーが「巨人軍の本拠地移転を前提にしてきたものではございません」とコメントし、様々な憶測がなされている。新スタジアムは野球以外の競技に加え、他エンタメも開催できる施設となるようだが、現在本拠地として使用する東京ドームの老朽化が指摘される中で、築地の新スタジアムと巨人との“関係”に注目が集まっている。

「巨人が築地にできる新球場を使用するのは既定路線のようには思う。東京ドームの老朽化は深刻で近年は改修も行っているが付け焼き刃的でしかない。エスコンフィールド北海道(以下エスコン)など各地に素晴らしい球場もできており、時代の流れを無視できないでしょう」(巨人担当記者)

 1988年開場の東京ドームは当時「最新式で日本一の球場」とも言われた。しかし今では人工芝の無機質な印象が強くなり、座席の間隔も狭いという問題も指摘されている。「興行を行うだけの箱」になってしまった感も否めず、実際にプレーする選手からの評判も良いと言えないのが現状だろう。

 ここ数年は巨人の新本拠地が築地にできるのではないかと度々噂にはなっていたが、気になるのは立地だ。現在の東京ドーム“最高な場所”にあるだけに築地に建設されるスタジアムへの懸念もあるという。

 開場から早36年の時が経ち、近頃は時代遅れと言われ続けた東京ドームに巨人がこだわってきた理由は、外国にある世界的なスポーツ施設と比べてもトップクラスのアクセスを誇る立地だから。築地新球場が施設として素晴らしいものとなったとしても、東京ドームの方が比較にならないほど便利な場所にあるのは変わらないはずだ。

「巨人が2032年開業予定の築地新球場を使用するのは間違いないでしょう。その間に現在の東京ドームを建て替え、完成後に戻るのではとも言われている」(在京テレビ局スポーツ担当)

「東京ドームがある水道橋・後楽園はまさに東京のど真ん中。平日の仕事終わりに多少の残業をしても早いイニングから試合を観戦できるような場所にある。JR、地下鉄などの公共交通機関の駅も徒歩圏内に複数あるのは大きい」(大手広告代理店関係者)

 東京ドームはJRの水道橋、飯田橋、御茶ノ水、地下鉄の後楽園、水道橋、春日、飯田橋、神保町などが徒歩圏内。築地新球場のベイエリアという環境は素晴らしく、交通インフラもこれから整備される予定だというが、アクセスという面では現在の東京ドームにはかなわないだろう。また、後楽園、東京ドームという日本球界の歴史を彩ってきた“聖地”のある場所から離れたくないというのもあるはずだ。

「プロ野球は興行なのでお金を生み出すことが重要。毎試合完売を目指すとともにVIPなど高額席での収入が求められる。近年は海外からのインバウンド客も重要な存在になっている。アクセス面の良さは必要な条件で、東京ドームがある場所は手放したくないはずです。築地新球場を使用したとしても将来的に戻ってもおかしくない」(大手広告代理店関係者)

 以前から巨人の新球場には「天然芝の開閉式球場」を希望する声が多かった。しかし築地新球場は「屋根に関しては閉じたまま。開閉型ではない。芝は人工芝を考えます」と山口オーナーが説明したように天然芝のスタジアムにはならないようだ。

「選手の体やファンのことを考えれば天然芝が良い。しかし東京都内に本拠地を置く限り人工芝になるのは仕方ないでしょう。他イベントを含め使用頻度を増やさないと採算は取れない。神宮球場でさえ野球での使用回数を増やすため人工芝を採用している。人工芝になるというのであれば現在の東京ドームがある場所が良いに決まっている」(巨人OB)

 エスコンのような天然芝のボールパークは理想だが、球場のある北海道・北広島市には広大な土地があったからこそ建設できた。アクセス問題も球場に隣接駅を準備できるからこそ改善の見込みも立っている。大都市東京で同様のことを行うのはかなり多くのハードルがあり、そう簡単にはいかないだろう。

 将来的に巨人は築地の新球場を使用することになるのは間違いなさそう。だが、新たな本拠地になるのかは微妙なところ。

 2034年に巨人は創設100周年を迎える。築地新球場を2年間使用している間に、野球専用の“新東京ドーム”が完成、球団の大きな節目となるシーズンから新たな本拠地を使うことも不可能ではない。その時に松井秀喜氏が監督就任となれば最高の形とも言われている。まだまだ先のことで不確定な部分が非常に多いが、球界の盟主の未来を大きく左右する事案だけに目が離せない。