ミドシップに3リッター V6ツインターボの「ネットゥーノ」エンジンを搭載する「空」の名を与えられたオープン・ボディのマセラティMC20チェロ乗った藤原よしおさん、島崎七生人さんの本音やいかに? 今年もやりました「エンジン・ガイシャ大試乗会」。2024年、大磯大駐車場に集めた注目の輸入車36台にモータージャーナリスト36人が試乗! 


「ちょっと荒っぽい感じが好き」藤原よしお

「本来ならチェロじゃなくチエロね」とはイタリア語ペラペラの武田公実さん。おかげで乗る前から1つ賢くなってスタート。

カーボン・モノコックのミドシップ・スポーツとしてはサイドシルも低めで乗りやすく、内装の仕立ても派手さはなくシックで好ましい。



乗り味も見た目とは裏腹に快適だし、開放的なオープン・トップがラグジー感を増してくれる。

ところがひとたび背後の3リッターV6ツインターボに鞭を入れると世界は一変。まるで重力から解放されたかのように軽くなり、ただただ猛烈に加速する。

トップを開けていると加速感はさらに倍増。それでいてシャシーはミシリとも音を立てず頑強そのもので「さすがはカーボン・モノコック、さすがはダラーラの仕事!」と叫びたくなる。

ただその高いパフォーマンスを思うと、もっと路面に食いつくダウンフォースや、ガツッとさらにダイレクトに効くブレーキが欲しい……と、どんどん欲深くなってしまうのも事実。

この軽さやシャシーの余裕っぷりをみると、この後出てくるBEVこそ本命なんだろうな。でもこのちょっと荒っぽい感じも悪くない。むしろ好き。




「普段使いもできる」島崎七生人

おそらく僕と同世代と思われるEPC会員の方とトップを開けたMC20チェロを海沿いの自動車専用道に繰り出し、思わずオジサン2人で「ウワーッ!」と歓声を上げた。聞けばエンジン誌読者らしく、ご自身ではポルシェ・ケイマン等にお乗りとのこと。その氏をして山道に入るなり「ハナの入りがいいですねぇ!」と言わしめたMC20チェロは、やはり紛れもないスーパースポーツカーである。

だが、だからといってスパルタンかといえば、決してそんなことはない。時代は違うが、往年のビトルボ系やそれより新しいケン奥山氏のクワトロポルテなどのサルーン系で、もっとヴィヴィッドな振る舞いのクルマはあった。

が、MC20チェロときたら、明日から買い物に使ってもいいとさえ思わせられるほど快適で運転しやすく、少なくとも日常領域で気難しさはない。乗り心地も実にコンフォートだ。

けれどひとたび右足に力を込めると、2992ccのV6DOHCツインターボは雑味がなく少し渋めの胸のすく快音を発し加速に移る。クーペ+65kgに仕上げられたというカーボン・モノコックボディの剛性も十二分だ。

マセラティMC20チェロは、クローズド・ボディのMC20同様、ミドシップに3リッター V6ツインターボの「ネットゥーノ」エンジンを搭載し、最高出力=630ps/7500rpm、最大トルク=730Nm/3000-5750rpmを発生する。トランスミッションは8段AT。全長×全幅×全高=4670×1965×1215mm、ホイールベース=2700mm、車重=1750kg。車両価格=4438万円(プリマセリエ・ローンチ・エディション)。

写真=小林俊樹(メイン)/茂呂幸正(サブ)

(ENGINE2024年4月号)