もはや「退職金と年金があれば悠々自適な老後生活が待っている」時代ではないといっても過言ではありません。それでも、実際「定年まで働いたら退職金はいくらもらえるのか」気になる人は多いのではないでしょうか。   本記事では、現在45歳会社員で、勤続年数が20年以上ある場合、もし65歳時点で退職一時金として1000万円出ることになったら手取り分はいくらになるのか、退職金の平均相場も紹介しながら解説します。

退職金の平均相場は2000万円程度?

会社員が定年などで仕事を辞めると退職金が支給されるケースが少なくありませんが、「実際に周りはいくらもらっているのか」気になる人も多いでしょう。厚生労働省が公表している「令和5年就労条件総合調査」によると、定年退職者のうち大卒以上の平均退職金は1896万円、高卒は1682万円となっています。
 
退職時点の所定内賃金に対して大卒以上は36ヶ月分、高卒は38.6ヶ月分となっています。それぞれ月収約52万円と43万円程度もらっていて、勤続25年以上かつ45歳以上の退職者の場合は平均1600万円から2000万円近くの退職金を受け取ることが分かります。
 
これだけ見ると「自分の退職金は少ないのではないか」と思われるかもしれません。確かに今回の退職金1000万円は、平均相場に比べると低い水準です。ただし、そもそも退職金は必ず支給しなければならないものではなく、金額の計算方法も企業によって異なります。
 
労働基準法には退職金に関する明確な規定がなく、仮に学歴や賃金水準、勤続年数が全く同じだったとしても、A社は1000万円程度支給される一方でB社は全く出ないようなケースもあり得ます。
 

退職金は手取りでいくらもらえる?

退職金は税法上「退職所得」と呼ばれ、支給額によっては税金が発生します。退職所得の金額は基本的に以下の計算式で求められます。
 
・(収入金額(源泉徴収される前の金額)−退職所得控除額)×1/2=退職所得の金額
 
退職所得控除が使えるのが大きな特徴で、勤続年数によって計算方法が異なり、一定の年数を超えると有利になる仕組みになっています。
 

・勤続20年以下:40万円✕勤続年数(80万円に満たない場合には、80万円)
・勤続20年超:800万円+70万円 ✕(勤続年数−20年)

 
大学を卒業して22歳から65歳まで43年間働くケースを想定すると、勤続20年超の計算式に当てはめた場合、退職所得控除額は2410万円です。今回は源泉徴収される前の収入金額1000万円を上回るため、退職所得金額はゼロとなり課税されません。つまり退職金の手取り金額は変わりません。
 
仮に、退職金3000万円をもらえる場合は、「(3000万円−2410万円)✕1/2=295万円」が課税所得となり、それに対して約20%の所得税が課されます。
 
退職所得は分離課税のため、給与所得や事業所得などとは分けて計算されます。これらを総合的に考えると、現時点において退職金に関する税制度は「労働者に有利となる」設計になっているといえるでしょう。
 

退職金の税制度が今後変わる可能性がある?

退職金を一時金として受け取る際に適用される「退職所得控除」はメリットが大きいですが、今後の動向次第では税負担が増える可能性もあります。
 
内閣府が公表している「経済財政運営と改革の基本方針2023」において「退職所得課税制度の見直し」が検討されており、極論ですが将来的に退職所得制度がなくなってしまう可能性もゼロではありません。
 
今後制度や状況が大きく変わるケースも想定したうえで、退職金に依存しない形をとることが重要になってくるのではないでしょうか。
 

まとめ

本記事では、退職金の平均相場や税制度について解説しました。退職金の有無や規模は企業によって異なるため、多すぎる(少なすぎる)といったことはありません。
 
退職金をいくらもらえるのかも気になりますが、不測の事態を防止するためにも「退職金に依存しない」形をとることが重要といえるかもしれません。
 

出典

厚生労働省 令和5年就労条件総合調査の概況
厚生労働省 就業規則に定められた退職金は賃金
国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
内閣府 経済財政運営と改革の基本方針2023 について
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー