老後の生活に2000万円以上の資金が必要といわれるなか、毎月の生活費をやりくりするのがやっとで、思うように貯蓄できていない家庭もあるでしょう。 貯蓄がないまま、定年退職を迎えるケースもあるかもしれません。   そこで今回は、定年退職する60代における「貯蓄ゼロ」の割合を解説します。 さらに、平均貯蓄額と貯蓄がないまま老後を迎えることによるリスクもご紹介します。

60代における「貯蓄ゼロ」の割合と平均貯蓄額

金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査[総世帯](令和4年)」によると、世帯主が60代の世帯における貯蓄ゼロの割合は23.1%とのことです。
 
対して貯蓄している世帯(金融資産保有額)では、平均して1689万円(中央値は552万円)を貯めているようです。
さらに貯蓄額の割合を見てみると、最も多い貯蓄額は「3000万円以上(19.2%)」であり、次いで「2000〜3000万円(8.2%)」「1000〜1500万円(8.0%)」と続きます。
およそ3割以上の世帯(世帯主が60代)が1000万円以上の貯蓄があることが分かりました。
 
このことから、将来のことを考えて計画的にお金を貯めている世帯と、思うように貯蓄できていない世帯は二極化しているといえるでしょう。
 

老後に必要なお金

定年退職後は、原則65歳から年金が受け取れますが、現役時代に比べて収入は減ってしまう可能性があります。
子育てが一段落していたり住宅ローンが払い終わったりしていても、毎日の生活に加えてさまざまなお金がかかるでしょう。
 
平均寿命が延びているなか、老後の生活には多くのお金が必要になることが予想されます。
老後にかかるお金で考えられるものは、以下の通りです。

●生活費(住居費や光熱費などを含む)
●医療費
●介護費
●子どもや孫にかかる費用
●娯楽や趣味費
●住宅のリフォーム費
●葬儀やお墓にかかる費用

総務省統計局の「家計調査年報[家計収支編]2022年(令和4年)家計の概要」によると、65歳以上の平均支出は、単身無職世帯で15万5495円、夫婦のみの無職世帯で26万8508円とのことです。
 
家庭によって必要なお金は異なりますが、老後もさまざまな項目で支出が考えられるため、余裕ある資金を準備しておくことが大切です。
 

貯蓄ゼロのまま老後を迎えることで考えられるリスク

老後にもあらゆる場面でお金が必要になることが分かったところで、貯蓄がないまま定年退職を迎えた場合、どのようなリスクがあるのかを見てみましょう。
貯蓄が必要になるのは、年金では足りない生活費や急にまとまったお金が必要になったときです。
十分な貯蓄がないと、以下のリスクが考えられます。

●生活水準が今よりも低下する
●仕事を辞めたくても働き続けなければならない
●必要な医療サービスや介護サービスが受けられなくなる
●趣味や娯楽を思う存分楽しめない
●家族に金銭的援助をしてもらわなければならない

特に経済的な支援を家族などから受けられない場合には、お金が足りなくなったときに深刻な状況になりかねません。
このようなリスクを回避するためにも、早いうちから老後資金を準備しておくことが大切です。
 

定年退職時(60代)に「貯蓄ゼロ」の世帯は23%ほど

今回の結果より、定年退職を迎える60代の総世帯において、貯蓄がない家庭は23%ほどいることが分かりました。
 
物価高騰や年金不足が問題視されるなか、貯蓄がないと生活水準を下げざるを得なくなったり、病気のときに治療が受けられなかったりするなどの問題につながりかねません。
今回ご紹介したリスクを回避するためにも、早いうちから資金準備を始め、余裕ある老後資金を用意しておくことが大切です。
 
まずは自分たちが将来いくら必要になるのか、年金はいくらもらえるのかなどを明確にしておくといいでしょう。
 

出典

金融広報中央委員会 知るぽると 家計の金融行動に関する世論調査[総世帯](令和4年)表番号4
総務省統計局 家計調査年報[家計収支編)2022年(令和4年)家計の概要(18ページ)
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー