定年退職をするに当たって、退職金にかかる税金がどのくらいになるのか気になる人も多いのではないでしょうか。退職金は老後資金をまかなう役割があるため、事前に税額を確認したり、節税方法を検討したりしておけば、手元に残せるお金がどのくらいになるのか把握しやすくなるでしょう。   本記事では、退職金にかかる税金や節税方法を解説しますので、具体的な老後資金の計画を立てるために役立ててみてください。

退職金にかかる税金とは?

退職金(退職所得)にかかる税金は以下の3つで、税率や控除額はそれぞれ異なります。

●所得税
●復興特別所得税
●住民税

以下で、税金別に内容を解説します。
 

所得税

所得税はその名のとおり、所得に対してかかる税金です。退職金にかかる所得税額は、「課税退職所得金額×所得税率−控除額」で計算します。
 
【図表1】

課税退職所得金額 税率 控除額
1000円から194万9000円まで 5% 0円
195万円から329万9000円まで 10% 9万7500円
330万円から694万9000円まで 20% 42万7500円
695万円から899万9000円まで 23% 63万6000円
900万円から1799万9000円まで 33% 153万6000円
1800万円から3999万9000円まで 40% 279万6000円
4000万円以上 45% 479万6000円

※国税庁「退職金と税」より筆者作成
 
課税退職所得金額とは、退職金から退職所得控除額を差し引いた金額に2分の1を掛けた金額です。退職金は「退職所得」に該当し、他の所得と切り離して計算を行う分離課税になります。
 
なお、退職所得控除の金額は、図表2のように勤続年数が長いほど控除額が大きいです。
 
【図表2】

勤続年数 退職所得控除額
20年以下 40万円×勤続年数
20年超 800万円+70万円×(勤続年数−20年)

※国税庁「退職金と税」より筆者作成
     

復興特別所得税

復興特別所得税は、その年度分の基準所得税額に2.1%を掛けて計算します。2013年1月1日から2037年12月31日までに生じた所得に対して発生し、東日本大震災からの復興を目的とした施策実施のための税金です。
      

住民税

住民税は、毎年1月1日時点に居住する都道府県や市区町村に支払う税金です。前年度所得に応じて税率が変わる「所得割」に加えて、均等の額を負担する「均等割」の2つから成り立っています。
 

退職金を節税する方法

退職金を節税するために効果的な方法は、以下のとおりです。

●退職金を一括で受け取る
●退職所得との損益通算

以下で、方法別に内容を解説します。
 

退職金を一括で受け取る

退職金は、一括または年金としても受け取ることが可能です。その際に、年金ではなく一括で受け取れば節税できる可能性が高いです。なぜなら、退職金を一括で受け取る場合、退職所得に区分されることによって退職所得控除額の適用対象になるからです。
 
退職金を年金で受け取る際は、退職所得控除の適用対象になりません。最大195万5000円の公的年金等控除はありますが、退職所得控除と比べて控除額が低くなると考えてよいでしょう。
 
ただし、必ずしも退職金を一括で受け取ったほうが、年金で受け取るより節税効果が大きいとはかぎりません。事前に試算を行ったうえで、節税効果を正しく確認することが重要です。
 

退職所得との損益通算

退職所得以外に、以下の所得がある人は損益通算によって節税できる可能性が高いです。

●不動産所得
●事業所得
●山林所得
●譲渡所得

上記の所得のいずれかで赤字が発生した場合、退職所得から赤字分の差し引きが可能です。例えば、事業を行っている人で当年度の事業所得が100万円の赤字だったとすると、退職所得から100万円を差し引くことで課税所得額が減少する効果があります。
 

退職金にかかる税金を理解して節税の方法を検討しよう

退職金(退職所得)にかかる税金は、「所得税」「復興特別所得税」「住民税」の3つです。退職金をどのくらいもらえるのか予測できたら、所得税、復興特別所得税、住民税がどのくらいになるのか計算し、適切な節税方法も検討してみてください。
 
そうすることで、老後資金計画をより具体的なものにできたり、退職金をどのように使ったりするべきなのかを検討しやすくなるでしょう。
 

出典

国税庁 退職金にかかる税金
国税庁 退職金と税
国税庁 個人の方に係る復興特別所得税のあらまし
国税庁 退職金を受け取ったとき(退職所得)
国税庁 No.2260 所得税の税率
国税庁 No.1600 公的年金等の課税関係
国税庁 No.2250 損益通算
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー