年金は基本的には65歳以降に受け取れますが、受け取る時期を遅らせることで毎月の年金額を増やせます。   そのため、貯蓄をできるだけ崩したくない場合には、定年後も働きながら年金受給開始時期を遅らせ、生活費をまかなえるくらいの年金受給額になった時点で仕事を辞め、その後は年金生活といったことも可能です。   本記事では、現役時代に年収450万円だった1人暮らしの人が、何歳まで働けば年金だけで暮らしていけるか解説します。

老後の1人暮らしで必要な生活費は毎月約16万円

老後に必要な生活費は家族構成や生活の仕方によって異なります。今回は65歳以上で1人暮らしをしている人の平均的な支出を前提とします。
 
総務省の「家計調査報告〔家計収支編〕2023年(令和5年)平均結果の概要」によると、65歳以上の単身無職世帯の平均的な支出は15万7673円ですので、年間では189万2076円です。
 
この金額を年金として受け取れるのが何歳からなのか見ていきましょう。
 

自営業で年収450万円の人は何歳まで働けば良いか

自営業者は国民年金に加入し、老後は老齢基礎年金を受け取れます。老齢基礎年金の受給額は国民年金の保険料納付期間などによって決まりますが、今回は納付すべき期間は全て納付し、老齢基礎年金は満額受給できるとします。
 
なお、国民年金は通常の保険料にプラスし、月額400円の付加保険料を上乗せして支払うことで、将来の年金受給額を増やすことも可能です。ただ、今回の計算では付加保険料は考慮しないこととします。
 
国民年金保険料を納付すべき全ての期間納めた場合、65歳以降、老齢基礎年金は2024年度の年額は満額の81万6000円受け取れます。
 
老後に必要な生活費は189万2076円ですので、老齢基礎年金で受け取れる81万6000円の2倍以上です。
 
冒頭で説明した通り、年金は65歳よりも受給開始年齢を遅らせると、年金額が増額されます。具体的には、1ヶ月遅らせる度に、65歳で受け取るはずだった年金額に0.7%加算される仕組みです。そして、年金の繰下げは最大で75歳まで遅らせられますが、その場合の増額率は84.0%です。
 
65歳時の老齢基礎年金の81万6000円に84.0%を加算した場合でも、金額は150万1440円ですので、必要な生活費には約40万円届きません。
 

会社員で年収450万円の人は何歳まで働けば良いか

会社員は国民年金と厚生年金に加入し、老後は老齢基礎年金と老齢厚生年金を受け取れます。今回のケースでは、20〜60歳まで会社員として働き、その間の平均年収が450万円だった場合で計算します。
 
老齢厚生年金は「報酬比例部分」、「経過的加算」、「加給年金額」がありますが、今回はメインの「報酬比例部分」について見ていきます。
 
「報酬比例部分」は現役時代の収入と厚生年金の加入月数によりますが、今回のケースで65歳から受け取れる「報酬比例部分」の金額(年額)は次のとおりです。
 
38万円×5.481÷1000×480ヶ月=99万9734円
 
この場合、老齢基礎年金も満額受け取れますので、報酬比例部分と合わせると181万5734円を65歳から受け取れます。必要な生活費である189万2076円はこの年金額より4.2%多いです。計算上は65歳よりも6ヶ月繰り下げれば、年金額は生活費に届きますが、年金の繰下げは66歳0ヶ月からしか受給できません。
 
そのため、今回の場合では、65歳11ヶ月まで働く必要があります。
 

まとめ

現役時代の平均年収が450万円だった場合、自営業者では年金をいくら繰り下げても生活費分には不足してしまいます。
 
一方、会社員は66歳から受け取れば、年金のみで生活ができます。とはいえ、今回は条件を簡略化して計算しています。気になる人は本記事を参考に、自分の場合どうなるかシミュレーションしてみましょう。
 

出典

総務省 家計調査報告〔家計収支編〕 2023年(令和5年)平均結果の概要
日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額
日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和6年度版)
日本年金機構 は行 報酬比例部分
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー