定年退職後も、再雇用や再就職などで働きたいと考える人も多いでしょう。安定した継続収入を得ることで老後資金を増やせる、定年退職前と同等の生活水準を維持できるなどのメリットがあります。しかし、働き方によっては年金の一部または全額支給停止となることを理解していない人もいることでしょう。   本記事では、毎月どのくらいの収入があると年金の一部または全額支給停止になるのか、年金額を減らさずに働く方法などを解説します。

基本月額と総報酬月額相当額の合計が50万円を超えると年金の一部または全額支給停止

60歳以降も働きながら老齢厚生年金を受け取る場合、在職老齢年金によって「老齢厚生年金の基本月額」「総報酬月額相当額」の合計が50万円を超えると、年金の一部または全額支給停止となる仕組みを設けています。
 
老齢厚生年金の基本月額とは、加給年金額を含まない老齢厚生年金の月額のことです。総報酬月額相当額とは、その月の標準報酬月額+その月以前の標準賞与額の合計を12で割った額です。
 
老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額の合計が50万円を超える場合、超過した金額分の2分の1が支給停止になります。
 
・支給停止額=(老齢厚生年金の基本月額+総報酬月額相当額−50万円)÷2
 
例えば、老齢厚生年金の基本月額が25万円、総報酬月額相当額35万円の場合、支給停止額は(25万円+35万円−50万円)÷2で5万円です。受け取れる老齢厚生年金が25万円の場合、20万円に減額されるということです。
 
老後資金の計画を事前に立てていたにも関わらず、月の収入によって年金が減額するのは大きな打撃になるでしょう。定年退職後に働くことを考えている人は、在職老齢年金の仕組みを十分に理解して年金が減額されない働き方を認識しておいてください。

 

65歳以上の受給権者のうち支給停止対象は2割弱

厚生労働省の「年金制度の仕組みと考え方」によると、65歳以上の在職している年金受給権者のうち支給停止の対象になっているのは、248万人中41万人で2割弱となる17%とのことです。なお、賃金と年金の合計額を階級別にまとめたものでは、20万円以上〜24万円未満の人が最も多いことが分かっています。

 

年金額を減らさずに働く方法

年金額を減らさずに働きたい場合は、以下の方法を検討したうえで働いてみてください。
 

・基本月額と総報酬月額相当額の合計が50万円を超えないように働く
・厚生年金に加入しないで働く
・年金の繰下げ受給をする

 
以下で、方法別に解説します。

 

基本月額と総報酬月額相当額の合計が50万円を超えないように働く

老齢厚生年金の基本月額の調整はできないため、総報酬月額相当額が50万円を超えないように働いてみてください。老齢厚生年金の基本月額が25万円であれば、総報酬月額相当額が25万円を超えないようにすることです。自分自身で調整が難しい場合は、勤務先へ相談したうえで働き方を検討してみてもよいかもしれません。

 

厚生年金に加入しないで働く

厚生年金に加入しないで働けば、年金額の調整の影響を受けません。厚生年金適用事業者で働かない、週の所定労働時間が20時間を超えない、賃金の月額が8万8000円以上にならないといった働き方をしてみてください。また、個人事業主(フリーランスや業務委託など)で働く場合も厚生年金の加入義務がありません。

 

年金の繰下げ受給をする

就労収入だけで生活費をまかなえるのであれば、年金の繰下げ受給を選んで年金額を増やすことを検討してみてください。
 
年金の繰下げ受給とは、通常65歳から受け取れる公的年金を66歳以後75歳までに遅らせて受け取る制度です。1ヶ月繰下げるごとに0.7%の増額率が適用し、生涯にわたって継続します。0.7×65歳に達した月から繰下げ申出月の前月までの月数で計算し、75歳まで繰下げた場合の増額率は84%です。
 
なお公的年金のうち、老齢基礎年金または老齢厚生年金のどちらかのみを繰下げることも可能です。

 

年金額を減らさない働き方をしよう

定年退職後も働いて厚生年金を受け取る場合、老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額を合算して50万円を超えないように調整する必要があります。どのように働きたいのかは人それぞれですが、年金の一部または全額停止となることを考えたら、働き方を調整するのがよいかもしれません。
 
老齢厚生年金の基本月額に対し、どのくらいの収入があると年金が減額されるか確認しておきましょう。

 

出典

日本年金機構 在職中の年金(在職老齢年金制度)
日本年金機構 在職老齢年金の計算方法
厚生労働省 年金制度の仕組みと考え方
日本年金機構 年金の繰下げ受給
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー