東京電力福島第1原発事故に伴う避難区域が設定された福島県内12市町村の2023(令和5)年度末の営農再開面積(概算値含む)は計8602ヘクタールとなり、再開率が約50%まで増加したことが10日、福島民報社の調べで分かった。農地の復旧や農業関連施設の整備が進み、誘致した農業法人による大規模営農が実現して再開の動きが加速した。ただ、担い手不足が続くなどの課題は多く、県は農地集積などを進めて2030年度末までの再開率75%の目標達成を目指す。

 12市町村の営農再開の面積は【図】の通り。3月末現在で再開した面積は前年度より計587ヘクタール増加した。2011(平成23)年12月末時点の営農休止面積の合計1万7298ヘクタールに対し、再開率は49・7%となった。対象には帰還困難区域などの農地が含まれているため、県の目標の75%が実質的に大半の農地で再開したとの指標になる。

 近年、避難指示解除の動きが相次いでいる自治体を中心に再び作付けする面積が拡大した。浪江町は前年度比で約130ヘクタール増加した。町によると、福島相双復興推進機構(福島相双復興官民合同チーム)と連携し、農業法人の新規参入などが進んだのも一因という。富岡町は48ヘクタール拡大した。町は地権者と新規就農者らを結び付ける事業が奏功していると分析している。

 川内村は生産者1人が離農したため前年度から1ヘクタール減少した。村によると、水田の作付けはほとんど再開している一方、牧草を作る草地は畜産農家の減少により活用が進んでいない。ある自治体は「高齢化が進み、以前から地元にいた農家による営農再開の動きは鈍るのではないか」としており、担い手の確保や作業を省力化する技術の普及なども課題となる。再開後、点在する農地をどう集積するかも再生の鍵になる。

 県は目標達成に向け、地域単位での農地の作付け管理への支援や大型機器の導入費補助に力を入れる。2025年度で終了する第2期復興・創生期間の後も継続した支援が不可欠として引き続き復興財源の確保を国に求めていく構えだ。