土師淳君と父・守さん

神戸市で起きた連続児童殺傷事件で、土師淳君が殺害されてから24日で27年になります。

この事件は1997年5月、当時小学6年の土師淳君が殺害され、当時14歳の少年が逮捕されたものです。

24日、淳君の父・守さんが、手記を公表しました。


【コメント】
 私たちの次男の淳が亡くなってから今年で27年という年月が経過しました。子供への思いは、どれほどの時間が経過しても変わるものではないと思います。
 加害男性からの接触は、現時点では手紙を含めてありません。私たちは、次男が何故、加害男性に命を奪われなければいけなかったのかという問いについて、私たちが納得するような解答を求め続けています。手紙を書くことも含め、私たち遺族の思いに答える努力をして欲しいと思います。
 兵庫県で犯罪被害者等支援条例が施行されてから1年が経ちました。昨年は犯罪被害者等総合相談窓口が開設され、本年度からは見舞金の支給制度が開始されました。見舞金支給制度を制定している都道府県はわずかで、兵庫県が見舞金制度を制定したことで、被害者支援がさらに進展するものと思います。しかしながら、対応すべき問題はまだ多く残っています。例えば、私が以前から話していますように被害に遭った少年に対する支援は、教育含め全く不十分な状況です。また兵庫県では、県に条例が制定される前に県内の全ての市町に犯罪被害者支援条例が制定されましたが、制定された時期も様々で、内容についてもかなり差があります。そのため、県内のどの市町で犯罪被害者・遺族になったかにより受けることができる支援に差があるのが実情です。県が中心となって、どの地域においても同じレベルの支援を受けることができるようすること、そして支援内容のさらなる改善を継続的に行って欲しいと思います。


 国における犯罪被害者支援については、昨年6月に犯罪被害者等施策推進会議が開かれ、被害者や遺族に国が支給する給付金額を大幅に引き上げる方針を政府が決定しました。この決定に基づいて警察庁に有識者検討委員会が設置され議論されてきました。そして犯罪の被害者や遺族に支払われる国の給付金の見直し案がまとまり、給付金の最低額が引き上げられると4月25日に報道されました。しかしながら、「新全国犯罪被害者の会(新あすの会)」が求めていた損害賠償金の国による立て替えなどの支援策は残されたままになりました。「新あすの会」としては、国が一元的に犯罪被害者支援を担うためにも、北欧で設立されているような「犯罪被害者庁」設立の必要性を訴えており、実現を望んでいます。
 犯罪被害は誰でも遭う可能性があります。一般の方々の理解がすすみ、犯罪被害者を取り巻く環境がさらに改善するように願っています。

          令和6年5月24日  土師 守


土師守さん

また、土師守さんは、取材陣からの質問に対し、以下のように書面で答えました。

(質問)事件から27年となります。土師様の近況や淳さんへの思いについてお聞かせください。

私たちの次男の淳が亡くなってから今年で27年という年月が経過しました。子供への思いは、どれほどの時間が経過しても変わるものではないと思います。
5年ほど前に体調を崩したこともあり、犯罪被害者問題については、私が出来る範囲で地元中心に活動を続けていければと思っています。

(質問)今年度から犯罪被害者やご遺族への見舞金の支給制度が始まりました。一方で、市町村単位では制度の創設にばらつきもあり、住む場所によって不足がある状況についてどのようにお考えでしょうか。また、兵庫県で犯罪被害者の条例が制定されて1年となりますが、ご遺族として今後どのような制度が必要だとお考えでしょうか。

兵庫県で犯罪被害者等支援条例が施行されてから1年が経ちました。昨年は犯罪被害者等総合相談窓口が開設され、本年度からは見舞金の支給制度が開始されました。見舞金支給制度を制定している都道府県はわずかで、兵庫県が見舞金制度を制定したことで、被害者支援がさらに進展するものと思います。
しかしながら、対応すべき問題はまだ多く残っています。例えば、私が以前から話していますように被害に遭った少年に対する支援は、教育含め全く不十分な状況です。また兵庫県では、県に条例が制定される前に県内の全ての市町に犯罪被害者支援条例が制定されましたが、制定された時期も様々で、内容についてもかなり差があります。そのため、県内のどの市町で犯罪被害者・遺族になったかにより受けることができる支援に差があるのが実情です。県が中心となって、どの地域においても同じレベルの支援を受けることができるようすること、そして支援内容のさらなる改善を継続的に行って欲しいと思います。


(質問)今年は手紙など、加害男性からの接触はありましたでしょうか。有無を問わず、土師様がそのことをどのように受け止めていらっしゃるのかについても、併せてお聞かせください。また、加害男性に対して、今どのようなお気持ちでいらっしゃるのかをお聞かせください。

加害男性からの接触は、現時点では手紙を含めてありません。私たちは、次男が何故、加害男性に命を奪われなければいけなかったのかという問いについて、私たちが納得するような解答を求め続けています。私達の問いに対して、彼が答えようと努力する義務があると考えています。手紙を書くことも含め、私たち遺族の思いに答える努力をして欲しいと思います。

(質問)土師さんが考える加害者の「償い」とはどのようなものでしょうか。

例えば、物を壊しても弁償出来るような場合や、事件で障害を負わされたにしても、傷害の程度が軽度で後遺症も残らないような場合であれば、「償い」と言う言葉を使うことは可能ではないかと思います。
しかしながら、殺人等の重大な犯罪においては、被害者にとって、本当の意味での「償い」は極めて難しいことではないかと思っています。抽象的ですが、被害者、被害者遺族が、「償い」であると感じて初めて償いと言えるのではないでしょうか。加害者が、被害者、被害者遺族にその様に思って貰えるように努力し続けることが重要だと思います。