日本百名山の一つ、福島県の安達太良山(1700メートル)の自然環境をボランティアの力で守る活動が11日、始まった。安達太良・吾妻自然センターの呼びかけに応じた登山愛好者ら有志が、中腹にあり休業中の「くろがね小屋」付近に、人目を気にせず携帯トイレを使える簡易小屋を設けた。19日の山開きに合わせて開放する。

 県内外から集まった有志、登山愛好者らでつくる「あだたら山の会」の会員、環境省職員ら約20人が11日、現地で設置作業を進めた。奥岳登山口から約1時間半かけて登り、前日までに小屋近くに運んでおいた木材などを組み合わせた。

 簡易小屋は高さ2・5メートル、幅1・3メートル、奥行き2メートルの大きさで景観や安全に配慮し、酸性の土壌や強風などに耐えられる構造になっている。中には携帯トイレをセットするプラスチック製の便座を設けてあり、利用後は各自、ごみの入った袋を持ち帰るか、奥岳登山口の回収箱に捨ててもらう。携帯トイレの使用の際200円から500円の協力金を募る。

 二本松市が借りた国有地に設置し、資材や設計・製作費を合わせ約40万円。センターが中心となり岳温泉観光協会と協力して運営や保守点検を担い、休業中のくろがね小屋の営業再開まで使用する見込みだ。

 昨春のくろがね小屋の休業以降、登山口以外にトイレがないため、昨年5月から今年1月にかけてセンターと岳温泉観光協会などが小屋近くにテント型の簡易式携帯トイレブースを置いて実証を行った。

 期間中、センターや登山口、岳温泉の5つの旅館、観光協会などで販売した携帯トイレは約400個で、利用者からは「初めてなので少し抵抗があったが、実際使ってみたら簡単」「トイレはいつから常設になるのか」などの意見が寄せられたという。センターの一瀬圭介代表(45)は「登山客にとどまらず地元の人たちが一体となり、磐梯朝日国立公園について考えるきっかけになれば」と話している。